東京・池袋駅の東口にあるジュンク堂書店の隣に2017年8月10日、都内最大級の文具店「丸善 池袋店」がオープンした。地上2階、地下1階の店舗は、地下1階の売り場面積が約150坪あり、一般文具と画材のコーナー、1階はブック&ステーショナリーカフェになっている。2階は高級文具、雑貨のほかにサロンスペースがあり、売り場面積は合計で400坪、文具アイテム数は約6万5000点と大規模な文具専門店だ。
丸善は都内に12店舗あり、その中でカフェを併設する大型店は3店。日本橋丸善は40~50代がメインの重厚な書店、丸の内の丸善は30~40代が中心で、店舗作りもそれに合わせ、文具も高級文具が中心だ。そんななか、若い年齢層が多い街である池袋の丸善では、20~30代が気軽に入れるように店作りをしたのだそうだ。店内のムードも全体的に明るく、POP類は少なめにして「商品を見て選んでもらう」ことを考えたレイアウトになっている。
入り口は池袋への交通アクセスの要とも言える西武線の車両のフロント部分がそのまま展示されているので、待ち合わせ場所として使うのにもってこいだ。1階は広々としたカフェ「ほんのひととき」に、旅文具や旅関係の本、話題の本のほかに、現在コラボ企画が開催されている、全10巻で300万部を超える大ヒットとなった、江戸時代のレシピ集が付いた時代小説「みをつくし料理帖」の関連書籍などが並ぶ。カフェの名物は、何といっても、丸善の創業者である早矢仕有的(はやし ゆうてき)氏が考案したという伝統の「ハヤシライス」(850円)。他店とは盛り方などが多少違うが、肉やソースは同じもの。ここでは客層も考えて、セルフサービスにすることで安価で提供している。
「地下1階と1階の売り場面積が約150坪」は誤りで、正しくは、「地下1階の売り場面積が約150坪」です。「2階は高級文具、雑貨のほかにイベントスペースがあり」は誤りで、正しくは「2階は高級文具、雑貨のほかにサロンスペースがあり」、「「みをつくし料理帖」×「ほんのひととき」の関連書籍」は、正しくは「「みをつくし料理帖」の関連書籍」でした。また、写真の説明で、「ジュンク堂」は正しくは「ジュンク堂書店」、写真の料理は丸善名物「ハヤシライス」は誤りで、正しくは「季節野菜のハヤシライス」でした。お詫びして訂正します。[2017/8/24 16:25]
漫画を描くための道具類から和モノまで、個性的品ぞろえが
地下に下りると、白を基調にした明るい雰囲気の一般文房具売り場がある。まず、目に付くのは、開店記念の限定文具セットだ。コクヨの2冊入るノートカバー「システミック」を中心に、レイメイ藤井の月間ダイアリー、パイロットの「フリクションボールノック」4本などをセットした「スケジュールノートパック」(1400円)、コクヨの立つペンケース「ネオクリッツ」を中心に、オートの「クリアガチャック」、パイロットの「フリクションカラーズ」、コクヨのテープのり「ドットライナースティック」などをセットした「便利なペンケースパック」(1200円)、パイロットの「フリクションボールノック」やリヒトラブの「ツイストノート・メモサイズ」、ブックカバーなどの丸善のロゴ入り文具をパックした「Anniversary カラー文具パック」(500円)の3種類を用意。かなりお得なパックなので売り切れ必至だろう。
一般文具コーナーで最も目立つのは、180cmの高い什器をズラリと並べた筆記具コーナー。また、他の店舗ではあまり扱っていないという画材とマンガを描くための道具類も充実させたそうだ。
もちろん、紙製品も充実。デザインフィルの「トラベラーズノート」のような趣味性が高いものから、フランスのクレールフォンティーヌ社のカジュアルなノートなど、あまり他店では見かけないものまで、幅広く扱われているのはさすがだ。
地下1階で特徴的なのは、和文具や手ぬぐいが充実していることだ。かわいい雑貨も含め、和物に関してはかなり広い売り場を作っている。また、ペーパークラフトを大々的にプッシュしているのも印象に残った。
白い文具、黒い文具、ご当地文具―カテゴリー分けが面白い
2階は従来の丸善の趣に近いアイテムがそろう高級文具コーナーを中心に構成されている。とはいえ、重厚なイメージよりも、明るくて落ち着いた雰囲気の売り場になっている。「白い文具」「黒い文具」とコーナー分けされていたり、全国のご当地文具を扱うコーナーがあったりと、さまざまな発見ができる文具店を演出していて面白い。
特に印象に残ったのが、かなり広いスペースを取ったトランプやかるた、カードゲームのコーナー。これだけ世界のトランプを扱っている店はなかなかないだろう。その充実ぶりに思わず興奮してしまった。
丸善らしく万年筆コーナーも充実している。座って書ける試筆コーナーや、対面販売だけではない、自由に見て回れる広いディスプレイスペース、豊富にそろうインク類など、初心者からマニアまで幅広い層に対応できる売り場に仕上げられていた。
モンブランの扱いはないが、海外メーカーの製品もきちんとラインアップされ、国産メーカーについては限定品もそろえられている。ラミーなどのラインアップの豊富なメーカーの製品も、売れ筋だけでなくマニアックなところまで用意されていて、筆記具好きには楽しい売り場だ。
丸善の人気オリジナル文具の復刻版が勢ぞろい
2階には、丸善でかつて大ベストセラーになった安価で良質なレポート用紙「お茶の水レポート」(280円)の復刻版や、丸善の代表的な製品だった「#3000」「#6000」の便せんを当時の姿のまま復刻、また小型化してメモサイズにした製品(各280円)も発売するなど、懐かしい文房具も扱っている。懐かしい復刻としては、丸善のオリジナルインク「アテナインキ」(各色2000円)とその専用革ケース、鉛筆削り用ケース、といった革小物のシリーズも趣深い。
各フロアとも、文房具を分かりやすく手に取りやすくレイアウトした、“ワクワクできる”構成になっていた。カジュアルなのだけど、どっしりと構えた安定感のある文具店のムードが残っているのがうれしい。
(文・写真/納富廉邦)