カラオケの「JOYSOUND」直営店を展開するスタンダードは2017年7月20日、JOYSOUND品川港南口店でカラオケ業界で初となる京急電鉄とのコラボレーション企画「京急電鉄カラオケルーム」を6カ月間の期間限定でオープンした。鉄道ファンを中心に静かなブームを起こしつつある「鉄道カラオケ」とは?
多くの人は鉄道カラオケと聞いてもピンと来ないだろう。「鉄道唱歌」など鉄道を題材とした楽曲を歌うわけではない。「進行!」「まもなく 品川 品川です」「降り口は左側です」など、鉄道の運転士や車掌が普段から行うアナウンスをカラオケでやってみようというものだ。
鉄道マンは実は声をよく使う職業だ。運転士は信号機や速度メーターなどを視覚だけではなく声に出したり指を差したりして確認する。見間違えや思い込みを防ぐためだ。よく聞く「出発進行」などの掛け声も「出発信号機が進行可能な状態(青)になっているのを確認した」という意味だ。車掌に関しては最近は自動アナウンスが増えてきたが、到着駅や乗り換え列車などのアナウンスはなじみ深いものだろう。鉄道に興味があれば、こうしたアナウンスを1度はマネした経験があるのではないだろうか。
JOYSOUNDでは2016年4月から京急電鉄など私鉄各社の協力を得て、全国の店舗でこの鉄道カラオケのコンテンツを30曲近く展開している。歌われる頻度はメジャーな曲目と比べると低いものの、JOYSOUNDが配信している全27.7万曲のなかで1万位以内に入った曲目があるとのこと。メインユーザーはやはり鉄道ファンだが、子供にも人気のコンテンツとなっており、家族連れが利用するケースが多いという。
運転席をイメージした運転士・車掌体感ルーム
京急電鉄カラオケルームはその鉄道カラオケの1周年を記念し、京急電鉄とのコラボレーションで生まれた鉄道カラオケ専用ルームだ。504号室「リアル運転士・車掌体感ルーム」と506号室「KEIKYU 車内体感ルーム」の2つがある。
リアル運転士・車掌体感ルームは電車の運転席をイメージした部屋となっており、定員は12人。部屋の中央には運転席を模した席があり、本物の京急2000形車両で使われていた運転席の椅子や車掌用のドア開閉スイッチ、車内放送マイクなどがある。さらにそれ以外の椅子も同じく実物の車両で使われていたシートを活用しており、壁面には駅名看板があるなど、部屋中に京急で使われていた本物の部品が26種類も飾られている。そんな運転席からの展望と壁面スクリーンに投影される車窓風景により、本当の列車に乗っている雰囲気を楽しめるのだ。
そして注目したいのは、カラオケに使うマイクとスピーカーだ。こちらも本物の車両から外した部品を使用しており、JOYSOUNDのカラオケのシステムからは独立している。そのため、録音機能などは使えないが、リアルな車内放送の音質が楽しめる。実際に京急電鉄で車掌を務めていた広報担当の女性は「本物そのままの音質です」と太鼓判を押した。もちろん、鉄道カラオケのコンテンツ自体も京急電鉄が監修しており、リアルな台詞でアナウンスができる。
車内体感ルームにはレアな部品がずらり
KEIKYU 車内体感ルームはやや小ぶりで定員4人となっているが、こちらも実物の車両のシートや506号室よりも多い28種類の実物の部品が使われている。密度からいえば、504号室よりもより鉄道の部品に囲まれている感じがする。
室内にはショーケースが設置されており、車両の銘板や速度計、行き先表示器といったレアな部品が展示されている。さらに、2代目の京急800形の運転席で使用されていた扇風機など普通ではあまり見ることができない部品も設置されている。
カラオケの新たな楽しみ方を提案
カラオケルームの滑り出しは好調で、7月19日の段階で10件以上の予約が入っているという。さらに京急電鉄カラオケルームのオープンに合わせ、京急で運用されている車両の車体色をイメージした「KEIKYUトレインドリンク」(税別680円)や、駅弁をイメージした「JOYSOUNDオリジナル駅弁」(880円、要予約)なども販売する。
鉄道カラオケ自体は京急本線と東武東上線、東京メトロ丸ノ内線、南海電鉄高野線という4路線しか対応していないため、利用が対応路線の沿線にある店舗中心になっているのが現状。今後は対応する路線を増やし、全国の店舗で利用されるようにしていきたいという。
カラオケといえば歌うのが当たり前だったが、鉄道カラオケはアナウンスをまねるという新たな楽しみ方を提案しているのが斬新。鉄道以外のジャンルにも広がっていきそうだ。
(文・写真/シバタススム)
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