ハンバーガーチェーン「ファーストキッチン」と「ウェンディーズ」とのコラボ業態「ファーストキッチン・ウェンディーズ」が好調だ。
ファーストキッチンは1977年サントリーの100%子会社として創業。2016年6月、サントリーホールディングが保有していた全株式をウェンディーズ・ジャパンに譲渡したため、ウェンディーズ・ジャパンの傘下に入った。2015年12月期の売り上げは92億円。現在、全国に約135店舗を展開する。
一方、米国で1969年に創業し、世界第3位のハンバーガーチェーンであるウェンディーズは世界30カ国に約6500店舗を展開し、2016年度の売り上げは約1兆円(約90億ドル、1ドル=111円換算)に上る。ただ日本には1980年に一度進出したものの、2009年末に撤退。2011年にウェンディーズ・ジャパンを設立して再上陸したものの、苦戦を強いられていた。
そのウェンディーズの復活の契機となったのが、ファーストキッチン・ウェンディーズだ。2015年3月に六本木に開業した1号店は計画を大幅に上回る前年比63%増の売り上げを記録した。さらに「六本木店は外国人客が多い独特の立地。そこで、実験的に上野浅草口店もコラボ業態に改装したところ、こちらも前年より31%売り上げが増えた」と、ファーストキッチンのアーネスト・M・比嘉会長は振り返る。
事業拡大の手応えを得た同社は2016年、東京都内のファーストキッチン6店舗をコラボ業態に転換。今年に入ってからも東京・神奈川の8店舗を一気に転換し、全店20~50%増ペースで売り上げを伸ばしているという。
その勢いに乗って、2017年6月6日には関西にも進出。大阪なんばの戎橋筋商店街南口に「難波戎橋店」をオープンしたのを皮切りに、6月13日は京都大丸前店、6月下旬は梅田ヘップナビオ店、7月は天保山マーケットプレース店と立て続けにオープンする。ウェンディーズとしては、2009年の日本撤退以来だ。
世界でも類例のないハンバーガーチェーン同士のコラボ業態。その狙いと好調な要因を経営陣が語った。
来店客はハンバーガーファンだけじゃない
六本木店開業の際に実施した消費者調査によると、ファーストキッチンの強みは「メニューがバラエティー豊富でカフェタイムに強く、女性客が7割を占めること」が判明。一方、ウェンディーズの強みは「男性客が6割を占めていて、ランチ、ディナータイムに強い。ハンバーガーファンが多く、平均客単価も高かった」。
つまり、従来通りの単独店であれば客層に偏りがあったが、コラボ店舗に転換することでハンバーガーファンのみならず、幅広い客層を獲得。1日中どの時間帯でも集客可能になり、改装前に比べて昼と夜の売り上げが増えたという。同時に、家賃の高い日本の都心部での出店に対応し、キッチンスペースは約10坪に抑えて坪効率(売り場1坪あたりの売り上げ)を高めた。
フレッシュネスバーガーをV字回復させた実績を持つファーストキッチンの紫関修社長は「ファストフードでシェア拡大できる最後のチャンス」といい、今期から出店ペースを加速する。年内に26店舗まで拡大し、コラボ店への転換と新規出店、フランチャイズ募集を進め、2018年度は57店舗体制を計画する。西日本エリアを中心に大型SC(ショッピングセンター)や空港などにも出店。近い将来に150店舗、売り上げ100億円を達成し、いずれは国内ハンバーガーチェーン第3位をめざす。
「ここ数年、バーガーチェーンの日本進出が相次いだが、都心に出店する場所がなく、人の育成も追いつかないため、多店舗化できていない。その点、当社はスキルの高い人材がいるので、速いペースで事業拡大できる」と紫関社長は自信を見せる。
【試食】“お好み焼き味バーガー”は関西人好みの味だが……
関西1号店となった「ファーストキッチン・ウェンディーズ」で、早速ハンバーガーを試食してきた。場所は大阪市営地下鉄御堂筋線なんば駅からすぐで、目の前に高島屋大阪店が見える。
最初に食べたのは、関西初上陸を記念して開発された期間・数量限定商品「なんばベーコンエッグバーガー」。ファーストキッチンの創業時から人気のある「ベーコンエッグバーカー」をアレンジしたもので、バンズとパティはウェンディーズ限定のものが使われている。
2015年発売の「ROPPONGIベーコンエッグバーガー」のアレンジ版だが、それよりもパティのサイズが大きいらしい。そして、関西らしい食材ということで「お好み焼き」をモチーフに、紅しょうがとかつおぶし、ソース、マヨネーズが追加されている。
開発担当者によると、特にソースの選定にこだわったという。「20種類のスパイスをブレンドし、デーツで甘みを出して特徴のあるソースを作った」。そのせいか、ひと口目をかぶりつく前からお好み焼きの香りがしっかり漂ってきた。関西人好みの甘口ソースも悪くない。ただ、マヨネーズ好きの筆者としては、もう少しマヨネーズの量を増やしてほしいところ。お好み焼きの味にうるさい大阪人に受けるかどうかは別にして、大阪らしさを満喫したい観光客にはおすすめだ。価格は単品490円。7月10日までの予定で、関東のコラボ店舗でも販売されている。
ふたつめに試食したのは、米国で大ヒットしたウェンディーズのプレミアムバーガー「プレッツェルバーガー」。プレッツェルの製法をもとに焼き上げたバンズは、表面が香ばしく、中はやわらかに仕上げてある。かぶりつくと、中に挟まれたビーフ100%の四角いパティからあふれ出た肉汁がほかの具材と合わさり、口中がうまみでいっぱいになる。
プレッツェルバーガーで使われているバンズは、米国のものよりもちもちで、日本人の口に合うようにアレンジされているそう。たしかに甘みがあり、バンズだけでも十分味わえるおいしさだ。価格は単品550円。
最後に、定番のベーコンエッグバーガーを食べてみた。特製タルタルソースが素材の味を引き立てていて、価格は320円と手ごろ。コスパの高さがロングセラーの秘密であることを再認識させられた。
ハンバーガーは220円から810円(プレッツェルイベリコベーコンバーガー)まで幅広いラインアップ。さらに、テイストを選べるフレーバーポテトや酵素サラダなど、女性好みのメニューがそろっているのも、コラボ店舗が支持される理由といえそうだ。
(文/橋長初代)