2016年6月17日、名古屋駅に新たな商業施設「KITTE名古屋」がオープンした。日本郵便が運営する同ブランドの施設は2013年開業の「KITTE丸の内」、2016年4月の「KITTE博多」に次ぐ3施設目となる。2015年11月に竣工したJPタワー内の商業施設で、地下1階~地上3階に物販・飲食合わせて36店舗が出店する(そのうち、6店舗は2017年春オープン)。
まず目を引くのが、1階アトリウムのアート、ゴールドフィッシュ。金鯱をモチーフとした高さ8.88mのメタル彫刻は、名古屋らしさを強烈に印象づけるアイコンだ。
ショップのラインアップは飲食店が中心
地下1階には飲食店が集積する「BIMI yokocho」(11店舗)を中心に13店舗が出店。ここでは地元で長年愛されてきたブランドが存在感を発揮している。
「スパゲッティハウス ヨコイ」はその代表格。名古屋名物・あんかけスパゲティの元祖で、直営3号店にして約50年ぶりの出店となる。「近年、東京の百貨店などで催事出店する機会が多く、“名古屋駅に店があればまた食べに行きやすいのに”という声を数多くいただいていた(既存2店舗はいずれも栄地区)。名古屋駅出店は創業者である父の代からの夢でもあり、ようやく念願がかなった」と横井信夫社長。当面は既存店舗の人気メニューに絞って提供する。
1931年開業という日本最古のビアガーデン「浩養園」(名古屋市千種区)は「CRAFT BEER KOYOEN」として初めての姉妹店を出店。「浩養園のブルワリーで醸造しているクラフトビールをはじめ7種の国産クラフトビールをそろえ、東海3県の地産地消をテーマにした料理を中心に提案する」(広報担当者)と地元発をアピールする。
「宮きしめん 駿」は熱田神宮発祥の老舗で東海地方に8店舗を展開するが、名古屋駅には初進出。「“名古屋めしの店”ではなく、きしめんも食べられる和食の店としてより日常的に利用してもらいたい」(担当者)と、周辺のオフィスワーカーの日常使いを意識したメニューや店づくりを図っている。
3階には会食・接待需要にも対応できる高級店が並ぶ。ここでも愛知県に本社を置くカニ料理メインの「甲羅」、愛知県岡崎市から移転オープンしたイタリアン「ヴィーノ アンド リストランテ コネッサ」、中華料理「東天紅」と地元の人にとって親しみやすいラインアップとなっている。
名古屋駅周辺の“商業施設戦争”が激化
物販は2階の5店舗が中心。東海初出店となる木工デザイン雑貨の「Hacoaダイレクトストア」をはじめ、生活雑貨、時計、眼鏡などのショップが並ぶ。
名古屋駅周辺はJRセントラルタワーズ(1999年)に端を発し、ミッドランド スクエア、ルーセントタワー、モード学園スパイラルタワーズ(2006~2008年)が次々に建設され、“名古屋駅摩天楼”と称される高層ビル街に変貌した。2016年は再び新ビルの開業ラッシュで、3月には大名古屋ビルヂングがオープン。さらに年内から2017年にかけてシンフォニー豊田ビル、JRゲートタワー、グローバルゲートの竣工・開業が控える。
このように名古屋駅周辺に大型商業施設がひしめくなか、日常の買い物に便利な商業施設として利用されそうだ。
(文/大竹敏之)