郊外型カフェ「むさしの森珈琲」、少量多種類のメニューをワンプレートで提供する「和ごはんとカフェ chawan(ちゃわん)」など、2015年から展開している“脱ファミレス”専門店が好調なすかいらーく(関連記事「すかいらーくが「郊外型カフェ」参入! メニューは“流行りもの全部入り”!?」、「すかいらーくが商業施設に本格出店! “ちょっとずつメニュー”には裏テーマがある!?」)。そのすかいらーくが今度は、ハワイ料理に進出。2017年6月17日、「La Ohana(以下、ラ・オハナ)」1号店を、横浜・本牧にオープンした。

 「ハワイは日本人にとって親しみがありながら、憧れの地。上質なハワイを体験できる空間を提供したい」(すかいらーくレストランツの松本純男社長)というが、正直、パンケーキブーム以降、ハワイアンカフェは巷にあふれていて、食傷気味。しかもオープンした横浜市・山手のロードサイドは交通量こそ多いものの、商圏には食に対する感度の高い住民が多く競合店も多いとあって、すかいらーくがいくつか業態転換をしてきた場所だ。

 そんな場所に、なぜ今さら、ハワイ料理店をオープンさせたのか。いったい、これまでのハワイ料理店とどこが違うのか。オープン直前の内覧会に足を運んだ。

「La Ohana(ラ・オハナ)横浜本牧店」(神奈川県横浜市中区本牧原18-22)。営業時間は7~24時。140坪で席数118、駐車場は29台収容可能
「La Ohana(ラ・オハナ)横浜本牧店」(神奈川県横浜市中区本牧原18-22)。営業時間は7~24時。140坪で席数118、駐車場は29台収容可能
エントランスはリゾートホテルのチェックインカウンター風。ハワイ風のユニフォームを着たスタッフが出迎える
エントランスはリゾートホテルのチェックインカウンター風。ハワイ風のユニフォームを着たスタッフが出迎える
約140坪の広々とした店内は5エリアに分かれている。写真は「メインホール」
約140坪の広々とした店内は5エリアに分かれている。写真は「メインホール」
半個室になっている「ガーデンテラス」
半個室になっている「ガーデンテラス」
開放感のある「オープンガーデン」
開放感のある「オープンガーデン」
青と白で統一された「オーシャンカジュアル」
青と白で統一された「オーシャンカジュアル」
より個室感の高い「プライベート」
より個室感の高い「プライベート」
店内には水が流れていて、その音で癒やされる
店内には水が流れていて、その音で癒やされる
提供されるハワイ料理の一部。メニュー担当者がハワイを食べ歩いて本場の味をインプットしたという
提供されるハワイ料理の一部。メニュー担当者がハワイを食べ歩いて本場の味をインプットしたという
同店いち押しメニューは、百花はちみつ、塩麹、スパイスなどを使った特製だれでマリネしたひな鶏をオーブンでジューシーに焼き上げた「まるまる一羽! HULIHULI チキン La Ohana」(オープン特別価格1280円)。炭火風味醤油、BBQ、スイートチリの3種のソースが添えられている
同店いち押しメニューは、百花はちみつ、塩麹、スパイスなどを使った特製だれでマリネしたひな鶏をオーブンでジューシーに焼き上げた「まるまる一羽! HULIHULI チキン La Ohana」(オープン特別価格1280円)。炭火風味醤油、BBQ、スイートチリの3種のソースが添えられている

予想を裏切る“ハワイ感”の濃さと本気度に、驚きの連続!

 ラ・オハナがあるのは、首都高速湾岸線「本牧ふ頭 IC」から3分のところ。クルマなら来やすいが、みなとみらい線「元町・中華街駅」からバスで約15分、JR根岸線「山手駅」からタクシーで約5分という完全なロードサイドだ。

 外観を見て驚いたのは、予想以上にハワイ感が濃いこと。入口付近にはヤシの木が植樹され、松明(たいまつ)風の炎が揺れているようなライトが設置されている。遠くからも目立つ高いポール看板にはパイナップルが掲げられ、外壁もハワイを感じさせる白の塗り壁風。エントランスもすかいらーくの既存業態にない高級感が感じられ、「かなり費用をかけて改装した」印象だ。

 中に入ると、ハワイ風のユニフォームを着たスタッフが、ホテルのフロント風のカウンターで出迎え。メインホール右手にはホテルのカクテルバーのようなカウンターが広がり、リゾートホテルのラウンジ風にソファとテーブルが置かれている。どこからか水音が聞こえると思ったら、メインホールには水が流れる細長い水盤があり、リゾート感がますます高まる。

 さらにテーブルに運ばれてきた看板料理「まるまる一羽! HULIHULI チキン La Ohana」を見て驚がく。昨今、鶏一羽を丸ごとグリルするロテサリーチキンの店は多いが、価格は一羽が2000~3000円。1280円という価格から「それなり」と予想していたが、びっくりするほどのボリュームなのだ。スタッフにテーブルで食べやすくカッティングしてもらって味わったが、皮はパリパリで中は軟らかく、パサつきがちな胸肉も肉汁たっぷり。味付けがスパイシーで肉自体にうまみが強いこともあって、添えられた3種のソースは最後まで出番がなかった。その他の料理も、子供も食べやすいファミレス味ではなく、パンチのきいた本格的な味。雰囲気・料理ともに「既存のハワイアンカフェとはどこか違う!」と感じた。いったいどこが違うのだろうか。

HULIHULI チキンは卓上でスタッフが食べやすくカットする
HULIHULI チキンは卓上でスタッフが食べやすくカットする
ガーリックと特製ソースでマリネした海老をカリッと焼き上げた「ガーリックシュリンプ」(6尾780円)も、ノースショアの名物料理
ガーリックと特製ソースでマリネした海老をカリッと焼き上げた「ガーリックシュリンプ」(6尾780円)も、ノースショアの名物料理
ご飯と組み合わせたライスボウル・メニューはランチに人気を呼びそう。ビーフ100%パテのハンバーグに甘辛い醤油味のソースをからめた「ロコモコ TERIYAKIソース」(1080円)
ご飯と組み合わせたライスボウル・メニューはランチに人気を呼びそう。ビーフ100%パテのハンバーグに甘辛い醤油味のソースをからめた「ロコモコ TERIYAKIソース」(1080円)
「サーモンアヒポキDON」(1180円)は、サーモンとポキ(マグロ)に新鮮な野菜を添えたヘルシーな丼。醤油、ゴマ油、タマネギなどをミックスしたオリエンタルソースで食が進みそう
「サーモンアヒポキDON」(1180円)は、サーモンとポキ(マグロ)に新鮮な野菜を添えたヘルシーな丼。醤油、ゴマ油、タマネギなどをミックスしたオリエンタルソースで食が進みそう
パンケーキにフルーツとホイップクリーム、フルーツソースをたっぷり添えた「La Ohana フルーツスペシャル」(1580円)。タロイモのパウダーを練り込んだオリジナルの生地はもちもちの食感で、甘さと香りが強すぎないのが特徴。スイーツ用の生地とやや塩味を感じる食事用生地の2種類がある
パンケーキにフルーツとホイップクリーム、フルーツソースをたっぷり添えた「La Ohana フルーツスペシャル」(1580円)。タロイモのパウダーを練り込んだオリジナルの生地はもちもちの食感で、甘さと香りが強すぎないのが特徴。スイーツ用の生地とやや塩味を感じる食事用生地の2種類がある

ハワイ料理を食べさせるのではなく、ハワイを体験させる!?

 すかいらーくマーケティング本部マネージングディレクターの崎田晴義氏によると、ラ・オハナのグループ全体におけるポジションはダイニングと専門店の中間。むさしの森珈琲や和ごはんとカフェ chawanとほぼ同じだという。実は同グループの中で、特に伸長著しいのがこのポジション。「今、食事だけでなく、店舗で過ごす楽しい時間や居心地の良い空間を重視する『コト・体験』消費のニーズが高まっている。2015年に1号店をオープンしたむさしの森珈琲は、『高原リゾートのような体験ができる』『軽井沢にいるみたい』という感想を多くいただいている。そのためカフェ市場では後発ながら想定以上の売り上げと顧客数をつかみ、現在、11まで店舗数を伸ばしている(7~8月で4店舗オープン予定)」(崎田氏)。

 つまり、「高原リゾートを体感できるカフェが予想以上に成功」「山の次は海」「海といえばハワイ」ということか。さらに、「日本にあるハワイアンカフェは、ローカルハワイアンをイメージしたカジュアルな雰囲気の店が多い。ハワイには年間約150万人以上の日本人が訪れるが、実はシニアもハワイ好きは多いので、若い人にもシニアにも好まれるような、ハワイの上質なリゾートホテルの空間をイメージした」(崎田氏)という。既存のハワイアンカフェと違う雰囲気を感じた理由は、その上質なリゾート感にあるのだろう。

 「総合ファミレスも安定成長しているが、専門を特化したブランドは成長スピードが速い。同じ場所でも、専門店ブランドだと遠くから食べに来る人が増え、商圏が大きく広がる」(すかいらーくマーケティング本部デピュティーマネージングディレクターの堤雅夫氏)。高級感のある空間づくりだけあって、ラ・オハナの店舗投資額は通常の約2倍。客単価も1人1300円前後と、ガストの2倍弱だ。だが、「他のハワイアン飲食業態と比較すると安め。グループ全体で約2800店舗を展開しているパワーを生かし、『これで1300円?』と驚かれるような料理を提供していきたい」(堤氏)。

 メインターゲットは30~50代の女性で、シニア層にも狙いを定めている。朝7時から営業し、400円のコーヒーにトースト1枚とゆで卵が付く名古屋式モーニングを提供しつつ、24時まで営業して同グループ最多となる約30種類のアルコールメニューをそろえる。オールタイムのニーズに対応し、さまざまな使い方ができる店に育てていきたいという。

4人でシェアできるパーティセット(4980円)などもある
4人でシェアできるパーティセット(4980円)などもある
トロピカルカクテル(780円)をはじめ、アルコールメニューも30種類以上あり、カクテルバーとしても使える
トロピカルカクテル(780円)をはじめ、アルコールメニューも30種類以上あり、カクテルバーとしても使える
「一時的な流行りものを追うのではなく、継続的に伸ばせる業態を開発していきたい。ラ・オハナもそのひとつ」(すかいらーくマーケティング本部デピュティーマネージングディレクターの堤雅夫氏)
「一時的な流行りものを追うのではなく、継続的に伸ばせる業態を開発していきたい。ラ・オハナもそのひとつ」(すかいらーくマーケティング本部デピュティーマネージングディレクターの堤雅夫氏)

(文/桑原恵美子)

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