2018年5月30日、創作和食レストラン「権八」が海苔手巻き専門店を東京・原宿駅前にオープンした。同店は権八ブランドの12号店目にあたる。メニューは10種類の海苔手巻きずしのみ(赤だしを除く)で、ネタによっては通常のすし飯の代わりに同店が開発したオリジナルの「カリフラワーライス」も選べるのが特徴だ。

「権八 NORI-TEMAKI 原宿」(東京渋谷区神宮前6丁目35-3 コープオリンピア1階)。JR原宿駅より徒歩2分。営業時間は11~22時。平均客単価は昼と夜と平均で2000円前後。「カフェ ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」など国内・米国に55店舗のレストランを展開しているグローバルダイニングが手がけている
「権八 NORI-TEMAKI 原宿」(東京渋谷区神宮前6丁目35-3 コープオリンピア1階)。JR原宿駅より徒歩2分。営業時間は11~22時。平均客単価は昼と夜と平均で2000円前後。「カフェ ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」など国内・米国に55店舗のレストランを展開しているグローバルダイニングが手がけている

 権八は、映画「キル・ビル」の舞台のモデルになったことでも知られている。2001年のオープン以来、古民家を模した和食レストランとして訪日客にも人気が高く、2002年にはジョージ・W・ブッシュ元大統領とともに小泉純一郎元首相も西麻布店を訪れている。その権八が手がける手巻きずし専門店とは、一体どんな店なのだろうか。

ビールも日本酒も1種類ずつで、アルコールは少なめ

 「権八 NORI-TEMAKI 原宿」があるのは、原宿駅前のマンション「コープオリンピア」の1階。既存の権八のような高級感のある内装とは違い、席はカウンターのみで簡素な丸椅子を置いている。ベルトコンベアで寿司が流れてきてもおかしくないほど、カジュアルな雰囲気だ。

店舗面積は約100平方メートル、席数30
店舗面積は約100平方メートル、席数30

 フードメニューは手巻きずしのみ。ドリンクはビールがグラス1種類、ワインも赤・白あるが、それぞれ1種類で、日本酒はワンカップのみ。アルコールの種類が豊富な既存店舗とはかなりイメージが異なる。店舗を運営するグローバルダイニングの小林庸麿氏によると、同店は権八ブランドとしては初の「ファストファインカジュアル」業態。これは新鮮な食材をシェフの手で調理し、気軽に食べられる業態のことで、「時間の余裕がない人でも、手軽にきちんとした食事ができるような店舗にした」(小林氏)という。

カリフラワーとネタが意外にも好相性

 肝心の手巻きずしは1本でかなりのボリュームがある。だが、粘り気が少ないカリフォルニア米(カルローズ米)を使っているせいか、口当たりは軽い。「女性なら2~3本、男性なら5本前後でお腹いっぱいになるのではないか」(小林氏)。

写真左から「うに」(1000円)、「カニアボカド」(480円)、「サーモンアボカド」(480円)
写真左から「うに」(1000円)、「カニアボカド」(480円)、「サーモンアボカド」(480円)

 同店オリジナルのカリフラワーライスは、カリフラワーをフードプロセッサーで米粒程度にカットして軽く炒め、アボカドペーストを混ぜて粘りをプラスしたものだという。口に入れると確かに米のような粘りやうまみがあり、淡白な味わいなのですしネタの邪魔をしない。また、野菜特有のカリカリした食感があり、さっぱりしていて胃もたれもしにくいので、すし飯よりもこちらを好む人も多いかもしれない。

 小林氏によると、近年は糖質を気にする人たちの間でカリフラワーが注目されているという。カリフラワーに100gあたりに含まれる糖質は1.9g。同じ量の白米の糖質が35.8gなので、約20分の1だ(文科省「 日本食品標準成分表2015年版(七訂)」を基に算出)。「糖質を気にする人にもすしを楽しんでもらいたいと考え、ヴィーガン(酪農製品を含む動物性食品を食べないベジタリアン)向けのレストランのメニューをヒントにカリフラワーライスを開発した」と小林氏は説明する。

店内のキッチンで製造する「カリフラワーライス」は、米粒大にカットしたカリフラワーを炒め、アボカドペーストで粘りをプラスしている。カットする際に大きさにばらつきを出すのが独特の食感のポイントだという。食べてみると思っていたほどすしネタと違和感がなかった。全てのメニューがカリフラワーライスに変更できるわけではなく、変更する場合は追加料金がかかる
店内のキッチンで製造する「カリフラワーライス」は、米粒大にカットしたカリフラワーを炒め、アボカドペーストで粘りをプラスしている。カットする際に大きさにばらつきを出すのが独特の食感のポイントだという。食べてみると思っていたほどすしネタと違和感がなかった。全てのメニューがカリフラワーライスに変更できるわけではなく、変更する場合は追加料金がかかる

「スーパーフード」として海苔に注目

 海苔手巻きずし専門店を開業したきっかけについて、小林氏は「海外で海苔に対する注目が高まってきたこと」を挙げる。すしは日本食として海外でも定着しているが、特に欧米では海藻に対してなじみがなく、海苔を使ったすしは敬遠されがちだったという。そのため、海苔を使わないカリフォルニアロールなどが人気だったが、ここ数年で海苔が「スーパーフード」として注目されるようになり、状況が一変。海苔巻きが「カットロール」、手巻きずしが「ハンドロール」と呼ばれるようになり、専門店もできているという。

海苔は丸山海苔店の「こんとび」を使用。青さが混じった野趣あふれる香りが特徴だ
海苔は丸山海苔店の「こんとび」を使用。青さが混じった野趣あふれる香りが特徴だ

 同店を運営するグローバルダイニングの中尾慎太郎最高財務責任者(CFO)は、「海苔をはじめとした日本のスーパーフードをカジュアルにおいしく食べられる業態として店舗をひろげていきたい」と意欲を見せる。今後について、「早ければ2018年内にさらに2店舗をオープンしたい」と話した。

(文/桑原恵美子)

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