カナダ最大の都市トロントに本店を構える人気ラーメン店「金とんらーめん(キントンラーメン)」の日本1号店が、2018年5月18日に東京・三軒茶屋にオープンした。トロントには日本風のラーメン店が多いが、そのなかで最も勢いがあるのがこの金とんらーめんといわれている。近日オープン予定を含めてカナダに12店舗(うち10店舗がトロント、2店がモントリオール)、韓国で2店舗を展開している。
金とんらーめん 三軒茶屋総料理長の浦田信明氏によると、最も繁盛しているのはモントリオールの店舗で、来店者数は平均で1日あたり500~700人ほどだという。特徴は、自分でスープと味付け、麺、トッピングを選んで好みのラーメンを完成させる「カスタマイズ方式」であること。カナダでこれほど人気を集める金とんらーめんとは、いったいどんなラーメンなのだろうか。
人気メニューはニンニクとチャーシューのパンチ力が絶大
店舗は三軒茶屋駅近くの路地裏にあり、土地勘のない人は少々分かりづらいかもしれない。訪れたのはオープンしてわずか1週間後だったが、ランチタイムを過ぎても店内は大勢の客がいて、早くも繁盛の様相だ。
注文の際は、まず基本となるスープを「豚骨」「鶏白湯」の2種類から選ぶ。次に味付けを4種類(味噌、塩、醤油、スパイシー)から選ぶ。麺は「太麺」「細麺」の2種類から選び、最後にトッピングを選ぶ。カナダで一番人気がある組み合わせを聞いたところ、「豚骨のスパイシーガーリック」というので、それを選択。トッピングには豚チャーシューを選んだ。
運ばれてきたラーメンを見て、どんぶりからはみだすほどの巨大な2枚のチャーシュー、どろっとした真っ赤なスープ、そして中央に盛られたピンポン玉大の刻みニンニクに驚く。豚骨や鶏ガラ、魚介、野菜などを煮詰めて抽出し、味噌や唐辛子、豆板醤、シラチャーソースなど、合計24種類もの調味料で味付けしたというスープは、非常に濃厚でパンチの効いた味だ。
食べ進むにしたがって大量のニンニクが溶けだし、かなりのパンチ力がある。そこに追い打ちをかけるのがチャーシューだ。カナダ産の豚肉をスープで煮込み、岩塩と醤油を混ぜ合わせたソースに漬けこんだ後、盛り付け直前にバーナーで炙って仕上げている。これだけで一品料理として通用しそうなほどのボリュームだ。
豚骨スープ・スパイシーガーリック味は「カナダのお客さんからも『辛すぎる』と言われる」(浦田氏)そうだが、それでも一番人気なのだという。ニンニクのパンチの強さと濃厚さ、肉のボリュームに、食べ終わってぐったりしたが、こうした刺激と濃厚さ、ボリュームを求めるラーメン好きは多いだろう。
「日本にも店舗がある」ことが海外展開では重要
浦田氏によると、2012年の1号店オープン当時はトロントにはまだ日本風の本格ラーメン店がなく、ラーメンになじみがない人が多かった。そこで、まずは自分好みの味で日本風ラーメンを知ってもらいたいと考え、スープや麺が指定できるカスタマイズ方式にしたという。「もともと欧米では外食も自分好みにカスタマイズしたがる人が多い。さらに多民族国家で豚肉を食べない宗派の人もいるので、この方式が受けたのではないか」と浦田氏は分析する。
スピーディーに多店舗展開ができたのは、2店目から1カ所で集中調理を行うセントラルキッチン方式を採用したため。「(セントラルキッチン方式は)まだ早いという声もあったが、店舗展開をスピードアップさせて人材を確保することが、さらに多くの人に日本式ラーメンを知ってもらえる近道になると思った」(浦田氏)。
今回、日本で店舗をオープンした理由として、浦田氏は「本国カナダでのブランド認知向上のため」と説明する。さらに、日本人スタッフの育成という目的もある。「カナダ店でのスタッフは8割が現地採用。海外に興味がある日本人の若いスタッフを育てて、カナダに来てもらいたい」(浦田氏)という。
近年、日本食ブームは「スシ」から「ラーメン」に移行しつつある。実際に、「博多一風堂」「山頭火」などの有名チェーンのラーメン店が続々と海外進出し、現地でも人気を集めている。金とんらーめんも「日本にも店舗がある」ということが今後の展開で重要なのだろう。
(文/桑原恵美子)