“赤プリ”の愛称で親しまれ、赤坂のランドマーク的存在だった「グランドプリンスホテル赤坂」が、2011年3月末で営業を終了してから5年あまり。その跡地に新たに建設された「東京ガーデンテラス紀尾井町」が、2016年7月27日にグランドオープンする。それに先立ち、一部商業ゾーンが5月10日にプレオープンした。
同施設は、オフィス・ホテル・商業ゾーンなどを備える「紀尾井タワー」(地下2階~地上36階)と、135戸の賃貸住宅を有する「紀尾井レジデンス」(地下2階~地上21階)、バンケット(宴会場)やレストランを備える「赤坂プリンス クラシックハウス」からなる複合施設。同施設を運営する西武プロパティーズ(埼玉県所沢市)は「PePe」「Emio」など西武鉄道沿線の商業施設を中心に手がけるが、このような複合施設の開発・運営は初の試みだという。同施設を通して新たな不動産活用のノウハウを蓄積し、今後、西武グループが保有している不動産資産に活用していきたいとのこと。
紀尾井町エリアは江戸時代には紀伊徳川家、尾張徳川家、彦根井伊家が屋敷を構え、昭和初期までは宮家の閑静な邸宅地だったという、由緒ある土地柄。オフィスビルが立ち並ぶ現在も、都心でありながら史跡と豊かな景観を残す稀少なエリアだ。「地域と有機的・機能的に連携していくことによってユニークなオンリーワンの施設にし、エリアにとって(再開発の)良き先行事例となりたい」(西武プロパティーズの齊藤朝秀取締役)。
5月10日からプレオープンしているのは、紀尾井タワーのエントランスとなる1~2階の商業ゾーンで、飲食を中心に18店舗が出店している。
使いやすい店が集まり、赤坂の新たな“穴場”に!?
1階と2階の商業ゾーンは、それぞれ異なるコンセプトで構成。赤坂見附方面からの玄関口となる1階は、“華やかなおもてなし”がコンセプトの「弁慶濠(べんけいぼり)テラス」。飲食店は入口を挟んで両側に、110席のレストラン&バー「ガーブ セントラル」、106席のカフェ「ディーン&デルーカ」があり、和菓子、チョコレートのセレクトショップ、フラワーショップなど、合計8店舗が出店している。
一方、東京メトロ「永田町駅」と直結している2階は、“日々の小さなおもてなし”がコンセプトの「小左衛門(こざえもん)テラス」。和・洋・中・エスニックなどの飲食店が8店舗バランスよくそろっているほか、「成城石井」「ファミマ‼」といった生活まわりの店もある。
5階から28階には、ワンフロア1千坪超の広さのオフィスフロアがあり、すでに全フロアが満室稼働とのことなので、どの飲食店もランチタイムの集客に困ることはなさそう。懸念されるのが、飲食店が豊富な赤坂方面に流れそうな夜営業の集客だ。それを見越してか、1・2階どちらの店も価格が手ごろで、オフィスワーカーが気軽に使えそうな店がそろっている。特に2階はさまざまなジャンルの店が集まっているので、食べたいものが決まらないときにもここに来れば何とかなりそう。永田町駅直結なので終電ぎりぎりまで飲める便利さもあり、赤坂の新たな穴場ゾーンといえそうだ。
庭の中に滝!? 巨大オブジェ!?
今回公開されたエリアのなかのもうひとつの見どころは、2つの通り(プリンス通り、紀尾井町通り)に挟まれた独特の地形、約18mの高低差を活用した公共空間のデザイン。敷地内を貫くように設置された回遊庭園を歩けば、眺望スポットや庭園、5つの広場、9カ所に設置されたパブリックアート作品(1カ所は7月公開予定)などが楽しめるという。
せいぜい広めの中庭程度だろうと想像していたが、歩いてみたら本当に都心の商業施設内とは思えない広さで驚いた。一番奥の庭園には、小さな滝さえある。クルマも通らないので、子連れファミリーの散歩にぴったり。赤坂のメインストレートから離れていて知っている人しか訪れないので、ここも穴場的な憩いスペースになりそうだ。
赤坂エリアといえば、2013年8月、永田町エキナカに新たな商業施設「エチカフィット永田町」ができるなどの変化はあったが(関連記事「永田町駅構内に『ガッツリ系フードコート』! ビジネス環境も万全!」)、大きな話題となるような商業施設はこれまで見当たらなかった。今回のエリアに加え、7月28日のグランドオープン時には、3・4階の商業ゾーン(「達磨坂テラス」「御門テラス」)もオープン。1~2階よりも高価格帯で、国際都市・東京を象徴するようなハイクラスの店をそろえるという。東京ガーデンテラス紀尾井町のオープンにより、にぎやかな赤坂の街と閑静な紀尾井町とが融合し、新たな人の流れが生まれるかもしれない。
(文/桑原恵美子)