2016年4月15日、東京・恵比寿駅西口広場前に新たな駅ビル「アトレ恵比寿西館」がオープンした(従来の「アトレ恵比寿」は本館として継続営業)。延床面積は約9700平米で、本館の40%程度の規模に25店舗が出店している。

 本館利用者は圧倒的に近隣居住者が多いことから、恵比寿の住人が集まる“街の中庭”をイメージし、居住者の要望を重視して店舗を構成したという。例えば「買い物途中で休憩できるカフェを増やしてほしい」という要望に応え、飲食店を数多く導入した。

 また恵比寿は住みたい街として上位に挙がってはくるものの、「住んでみたら意外に不便だった」という声も多いという。そこで、同館では地下1階全面に大型スーパーマーケット「ザ・ガーデン自由が丘」を配するなど、恵比寿居住者の日常使いの店を充実させた。さらに恵比寿は駅を挟んで東西に分断されているイメージがあることから、西館4階には本館3階のコンコースとJR恵比寿駅につながる「西口通路」を新設。恵比寿駅周辺の回遊性をアップさせた。

 恵比寿アトレ本館の入館者数は毎日約3万人。西館はほぼ3分の1の規模なので、約1万人の入館者数を見込んでいる。当面の目標年商は66億円だが、本館の年間売り上げ規模は約215億円、過去最高で225億円を記録しており、それを超えるのが目標だという。

 情報に高感度で、洗練された大人が多いという恵比寿居住者をターゲットにし、利便性を重視したというアトレ恵比寿西館にはいったいどんな店が集まったのだろうか。オープン直前の内覧会に参加した。

恵比寿駅西口広場に面して新設された「アトレ恵比寿西館」。地下1階~地上9階建てで、延床面積は約9700平米。営業時間はショッピングが10~21時半、レストランが11~23時
恵比寿駅西口広場に面して新設された「アトレ恵比寿西館」。地下1階~地上9階建てで、延床面積は約9700平米。営業時間はショッピングが10~21時半、レストランが11~23時
8階屋上には“プラントハンター”として有名な西畠清順氏の監修による「アトレ空中花園」がある。世界中から貴重な植物を集め、非日常を表現。四季おりおりに表情を変えるという。夏季にはビヤガーデンを予定。その期間以外はパブリックスペースとして開放する
8階屋上には“プラントハンター”として有名な西畠清順氏の監修による「アトレ空中花園」がある。世界中から貴重な植物を集め、非日常を表現。四季おりおりに表情を変えるという。夏季にはビヤガーデンを予定。その期間以外はパブリックスペースとして開放する
1階には「猿田彦珈琲」が駅ビル初出店。フードメニューや人気パティシエ・鎧塚俊彦氏とコラボしたスイーツなども提供する
1階には「猿田彦珈琲」が駅ビル初出店。フードメニューや人気パティシエ・鎧塚俊彦氏とコラボしたスイーツなども提供する
4階「成城石井」横に作られた「西口通路」(8~24時)
4階「成城石井」横に作られた「西口通路」(8~24時)

【アトレ恵比寿西館】1、4階は新業態のフードショップ&飲食店が目白押し!

 館内を見てまず目を見張ったのは、飲食店の充実ぶりだ。西口広場に面した路面には2015年11月に初上陸した米国ニューヨークで人気のハンバーガーレストラン「シェイク シャック(SHAKE SHACK)」の国内2号店がオープン(関連記事「【体験レポ】“ハンバーガー界のスタバ”『シェイク シャック』日本初上陸)。人が殺到するのは確実だ。

 地下1階の大型スーパーマーケットのほかに、4階には本館で親しまれてきた「成城石井」が出店。初の対面ベーカリーショップを併設し、自家製サンドイッチなどを販売する。隣接する同社運営のワインバー「ル バー ラ ヴァン サンカンドゥアザブトウキョウ(Le Bar a Vin 52 AZABU TOKYO)」は、購入した商品のイートインスペースとして朝8時から10時半まで使用可能。ディナー向きの本格的な料理もあり、朝昼晩と便利に使えそうだ。

 成城石井のワインバーは4店舗目にして初となる店舗一体型で、キャッシュ・オン・デリバリー形式の「立ち飲みカウンター」を導入し、買い物の合間に気軽に立ち寄れるように200円(税込み)のおつまみセットを用意している。

 そのほか、同じフロアには朝8時から10時半までは本格的な肉加工品で有名なコダマがデリ&レストラン「バル マルシェ コダマ」を初出店。さらに1892 年創業のリカーショップ「恵比寿君嶋屋」が酒のセレクトショップとスタンディングバーを、パリバゲットコンクールで二度優勝した店として知られる麹町の人気ベーカリー「ル・グルニエ・ア・パン」が駅ビル初出店するなど、“初”づくしの注目フロアだ。

米国ニューヨークで人気のグルメバーガー専門店「シェイク シャック」(1階)の「スモークシャック」(880円~)と「フライ」(280円~)、「シャックマイスターエール」(830円~)
米国ニューヨークで人気のグルメバーガー専門店「シェイク シャック」(1階)の「スモークシャック」(880円~)と「フライ」(280円~)、「シャックマイスターエール」(830円~)
フローズンカスタードを高速でミックスする「コンクリート」(480円~)はシェイク シャック アトレ恵比寿店オリジナルメニュー。「Ebisu」と「Beans」を掛け合わせた「エビーンス」(バニラカスタードにアズキキャラメルソース、きな粉などをトッピング)が人気を呼びそう
フローズンカスタードを高速でミックスする「コンクリート」(480円~)はシェイク シャック アトレ恵比寿店オリジナルメニュー。「Ebisu」と「Beans」を掛け合わせた「エビーンス」(バニラカスタードにアズキキャラメルソース、きな粉などをトッピング)が人気を呼びそう
「成城石井」(4階)では同店初となる店内製造の自家製サンドイッチ「デリパン」の対面販売も行う
「成城石井」(4階)では同店初となる店内製造の自家製サンドイッチ「デリパン」の対面販売も行う
成城石井店内には好きなサイズのプラスチックカップを選び、ナッツを好きなようにブレンドして詰められるディスペンサーも
成城石井店内には好きなサイズのプラスチックカップを選び、ナッツを好きなようにブレンドして詰められるディスペンサーも
成城石井の隣には立ち飲みカウンター。ワインやビールが1杯500円、スペイン産ハモンセラーノ、ピクルス、ミックスナッツを盛り合わせた「おつまみセット」が200円(いずれも税込み)
成城石井の隣には立ち飲みカウンター。ワインやビールが1杯500円、スペイン産ハモンセラーノ、ピクルス、ミックスナッツを盛り合わせた「おつまみセット」が200円(いずれも税込み)
リカーショップ「恵比寿君嶋屋」(4階)は高級ワインや入手困難な日本酒をグラスで飲める。近辺の人気飲食店とコラボしたつまみも注目だ
リカーショップ「恵比寿君嶋屋」(4階)は高級ワインや入手困難な日本酒をグラスで飲める。近辺の人気飲食店とコラボしたつまみも注目だ
洋総菜・レストラン「バル マルシェ コダマ」(4階)。自社直輸入の欧州生ハムや自社工房で職人が作り上げる加工肉を販売。併設のレストランでもワインとともに味わえる
洋総菜・レストラン「バル マルシェ コダマ」(4階)。自社直輸入の欧州生ハムや自社工房で職人が作り上げる加工肉を販売。併設のレストランでもワインとともに味わえる
“パリバゲットコンクール優勝の店”として知られる東京・麹町のベーカリー「ル・グルニエ・ア・パン」(4階)が駅ビル初出店。店内にはイートインコーナーも併設。フランス産最高級小麦を100%使用したバゲット、フランス産発酵バターを使用したクロワッサン、伝統的なフランス菓子などを販売
“パリバゲットコンクール優勝の店”として知られる東京・麹町のベーカリー「ル・グルニエ・ア・パン」(4階)が駅ビル初出店。店内にはイートインコーナーも併設。フランス産最高級小麦を100%使用したバゲット、フランス産発酵バターを使用したクロワッサン、伝統的なフランス菓子などを販売

【アトレ恵比寿西館】2・3階は“世界観”でフロアを統一!?

 レディスファッッションの店舗は本館と比べると少ないが、2階は「ミラ オーウェン」「コスメキッチン」などを展開するマッシュホールディングス、3階は「ロペ(ROPE)」「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE)」などを展開するジュンと、ファッション企業がフロア全体をトータルプロデュースしているのが特徴。どちらのフロアにも新業態の飲食店があり、ヘルシーさを売りにしていることも共通だが、フードや提供の仕方にも世界観の違いが見えて興味深かった。

2階にはマッシュグループが展開するアパレル「ミラ オーウェン(Mila Owen)」、新感覚のスポーツセレクトショップ「ダブリューアンドイー(W&E)」が出店
マッシュグループが運営するコスメキッチンの新業態となるオーガニックレストラン「コスメキッチン アダプテーション(Cosme Kitchen Adaptation)」(2階)。「オーガニックサラダ&デリバー」(1680円)は約10種類のデリにスーパーフードを中心にした約30種類のトッピングが選べる
マッシュグループが運営するコスメキッチンの新業態となるオーガニックレストラン「コスメキッチン アダプテーション(Cosme Kitchen Adaptation)」(2階)。「オーガニックサラダ&デリバー」(1680円)は約10種類のデリにスーパーフードを中心にした約30種類のトッピングが選べる
ジュングループがプロデュースしたビストロカフェの新業態「サン トロペ(SAN TOROPEZ)」(3階)。カフェブームの仕掛け人として知られる空間プロデューサー山本宇一氏のプロデュース
ジュングループがプロデュースしたビストロカフェの新業態「サン トロペ(SAN TOROPEZ)」(3階)。カフェブームの仕掛け人として知られる空間プロデューサー山本宇一氏のプロデュース
「サン トロペ」はオープンキッチンの石窯で焼き上げる焼きたてのピッツアが売り。写真はケール、ホウレンソウ、アーティーチョーク、マイタケなどをトッピングした「グリーンベジタブル」(1600円)など
「サン トロペ」はオープンキッチンの石窯で焼き上げる焼きたてのピッツアが売り。写真はケール、ホウレンソウ、アーティーチョーク、マイタケなどをトッピングした「グリーンベジタブル」(1600円)など

【アトレ恵比寿西館】街を見下ろしながら本格ディナーを楽しむなら7・8階!

 本格的な食事を楽しみたい人のためには、7階に小籠包が看板の台湾点心料理「ディンタイフォン(鼎泰豊)」が、8階に恵比寿で人気の魚介レストラン“ビストロ・シロ”の新業態シーフードレストラン&ルーフトップバー「シロノニワ」がある。

 ディンタイフォンは104席、シロノニワは172席と席数が多く、それぞれバーコーナーもあり、使いやすい印象。ディン タイ フォンの窓側の席からは恵比寿の西口付近が一望でき、シロノニワには同館のシンボルともいえる空中花園に面した開放的なテラス席がある。

 そのほかの階も西口側全体に飲食店を配し(5、6階の無印良品を除く)、恵比寿の街並みを楽しめる作りにすると同時に、飲食する人の姿が街を歩く人からも見えるように配慮されている。そのせいか、恵比寿駅西口のイメージが大きく変わった印象。「本館オープンから17年たち、恵比寿の街も、そこに住む人たちも成熟してきた。そんな人たちに、『西館ができたことで恵比寿が住みよくなった』と思ってもらえるような場所にしたい」(アトレ)という。

「ディンタイフォン」 (7階)は世界13カ国110店舗以上(2016年4月現在)を展開。バーコーナーもあり、窓際の席からは恵比寿西口が一望できる
シーフードレストラン&ルーフトップバー「シロノニワ」 (8階)。屋上庭園で光と風を感じながら、タパススタイルのフードとシーフード料理が楽しめる
シーフードレストラン&ルーフトップバー「シロノニワ」 (8階)。屋上庭園で光と風を感じながら、タパススタイルのフードとシーフード料理が楽しめる
「シロノニワ」の「鮮魚のセビーチェ」(1500円)
「シロノニワ」の「鮮魚のセビーチェ」(1500円)
5・6階の「無印良品」は有楽町店と同様、書籍が充実しているのが特徴

(文/桑原恵美子)

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