2018年3月8日、東京・銀座にメキシコ料理チェーン「CHRONIC TACOS(クロニックタコス)」の日本1号店がオープンした。同チェーンは米国とカナダで店舗を展開しており、カナダ以外では同店が海外初出店となる。
クロニックタコスは2002年にカリフォルニア州で開業。注文を受けてから店内で手作りするメキシコ料理とカリフォルニアスタイルのサービスが受け、急成長しているブランドだという。銀座店では米国での人気メニューのほか、日本限定メニューとして黒毛和牛を甘辛くすき焼き味にした「黒毛和牛すき焼きタコス」をディナータイム限定で提供する。またビールやワイン、シャンパン、サワーなどのアルコールメニューもそろえるという。
メキシコ料理は日本人にとってあまりなじみがないジャンルだろう。だが、「タコベルが(2015年に)日本に再進出した今、日本にメキシコ料理を定着させるチャンスと感じている。ファストフードよりも品質の高い料理を提供することで日本人が抱いているイメージを変えたい」と、日本で同チェーンの運営を手がけるK&BROTHERS (東京都港区)の岩谷良平社長は話す。(関連記事「日本再上陸の『タコベル』で“タコスよりうまいメニュー”を発見!? 」)。
日本人好みの味だが、やや食べにくい
クロニックタコス銀座店はみゆき通り沿い、中央区立泰明小学校の向かい側にある。入口を通過すると長いオープンキッチンのカウンターがあり、フードやソースがずらりと並んでいる。
注文はベースとなる料理を選んでからメインの食材とトッピングを選ぶシステムで、タコスであれば小麦、トウモロコシ、トウモロコシを使ったコーントルティーヤを揚げたクリスピータコスの3種類の皮から好きなものを指定できる。メインも豚や鶏、牛、シーフード、野菜から選べるなど選択の幅が広い。黒毛和牛すき焼きタコスだけはカスタマイズができないが、こうした手順を面倒に感じる人にはうってつけのメニューかもしれない。
メキシコ料理独特のスパイシーな味付けが苦手という人も少なくないだろうが、黒毛和牛すき焼きタコスはショウガをきかせた甘辛い味の具が特徴。たっぷりのつゆにからんだ柔らかい肉の下には温泉卵が隠れている。まさに牛丼の具そのものだ。だが、肉が“つゆだく”なうえに温泉卵も入っているので、食べにくいのが難点。食べ終わると手がつゆだらけになった。
ほかに「カルネアサダタコス(牛肉のバーベキュー風味)」も試食したが、柔らかい肉と野菜がたっぷり入っていて軽食としては十分なボリューム。味付けもさほどクセが強くないので、日本でも受け入れられやすいのではないだろうか。
これまで「タコスはファストフード」というイメージがあったが、同チェーンは遺伝子組み替えでない穀類や国産の肉類を採用するなど、食の安全性を重視しているという。また、タコスにつきもののメキシコの調味料・ワカモレ(アボカドやトマトなどをペースト状にしたもの)は店内で手作りし、魚介のタコスは注文が入ってからソテーしているという。「ファストフードから離れていた世代を呼び込みたい」と岩谷社長は話す。
“ファストカジュアル”業態として米国で急成長
ここ数年、米国の飲食市場でメキシコ料理が急成長。「(米国の)メキシコ料理店の数はピザ料理店を追い越している」と岩谷社長は説明する。
数あるタコス店のなかでも特にクロニックタコスが注目される理由として、ミレニアル世代と呼ばれる20〜30代に支持される“ファストカジュアル”という業態であることが挙げられる。ファストカジュアルとはファストフードの手軽さや価格と、カジュアルレストランのクオリティーを兼ね備えた業態のこと。米国ではファストフードの売上高は横ばい状態が続いているが、ファストカジュアルは急激に伸びているという。
ファストカジュアルは日本では“高級ファストフード”と解釈されることが多い。だが、同店を訪れてみて、高級というより“大人向け”だと感じた。ターゲットは感度が高い30代前後のビジネスパーソンとのこと。落ち着いた色調のインテリアやアルコールを提供する点などを見ても、一般的なファストフード店よりも大人が利用しやすい店にしているようだ。
クロニックタコスは現在51店舗(2018年2月時点)。だが、すでに39店舗とフランチャイズ契約済みで今後一気に拡大しそうだ。岩谷社長は「米国本社とは10年以内に最低でも15店舗以上オープンするとして契約した。1号店である銀座店を成功させて、それ以上の拡大を目指したい」と意気込んだ。
(文/桑原恵美子)