2018年1月、会員制の月額定額制コーヒースタンド「coffee mafia(コーヒー マフィア)」が東京・飯田橋にオープンした。手がけたのは、食に関するマーケティング事業や飲食店を運営するfavy(ファビー、東京都新宿区)だ。会員登録をすれば月額税込み2000〜3000円でコーヒーが何杯でも飲めるシステムで、2016年10月にオープンした西新宿店に次ぐ2店舗目となる。飯田橋店は17時以降はバルとして営業し、酒やつまみを提供するという。

「coffee mafia飯田橋店」(千代田区富士見2-12-13)。飯田橋駅から徒歩3分。営業時間は8~22時。定休日は土日祝日
「coffee mafia飯田橋店」(千代田区富士見2-12-13)。飯田橋駅から徒歩3分。営業時間は8~22時。定休日は土日祝日
店舗面積は50平方メートル弱、24席
店舗面積は50平方メートル弱、24席

 なかでも注目は、オリーブオイル100%で揚げる“次世代天ぷら”だ。同社によると、オリーブ油は酸化しやすく、価格もサラダ油の4〜5倍するというが、コーヒー マフィアでは揚げ油の劣化を防ぐ最新のフライヤーを導入。「オリーブ油100%で揚げると、香りが良く、胃もたれしにくい」と同社の高梨巧社長は話す。

「岡山県邑久産牡蠣天ぷら」「国産ほくほくホタテ天」(税込み各200円~。以下、価格は全て税込み)。定額会員には100円で提供
「岡山県邑久産牡蠣天ぷら」「国産ほくほくホタテ天」(税込み各200円~。以下、価格は全て税込み)。定額会員には100円で提供
 「天ぷらソース」(各100円)。左下から時計まわりに「明太子マヨネーズ」「自家製いぶりがっこタルタルソース」「スーパープレミアム極ソース」「カルボナーラソース」「ジェノベーゼソース」
「天ぷらソース」(各100円)。左下から時計まわりに「明太子マヨネーズ」「自家製いぶりがっこタルタルソース」「スーパープレミアム極ソース」「カルボナーラソース」「ジェノベーゼソース」
■変更履歴
西新宿店がオープンした年について、初出では「2017年」としておりましたが、正しくは「2016年」でした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。[2018/02/09 10:28]

「水と油で揚げる」最新フライヤー

 同店では、2種類のフライヤーを使用して天ぷらを調理しているが、そのうちの1つである「ウォーターフライヤー」は水と油をひとつの槽に入れる特殊なフライヤーだ。「そんなことができるのか」と驚いたが、水と油なので上下に分かれて混ざり合うことがないという。

 ウォーターフライヤーを製作するウォーターフライヤー(東京都荒川区)の佐藤義晴社長は「一般的なフライヤーは油全体が熱されるので酸化が早いが、ウォーターフライヤーは上部の油を高温にし、水と油の間にある冷却用の空気筒が水の温度を55度以下に保つため、油の温度が上がり過ぎず、酸化しにくい」と説明する。また、揚げかすも酸化の原因となるが、ウォーターフライヤーは揚げかすが下部の水の中にたまるため、油の中にまったく残らないという。

コーヒー マフィアで使用しているウォーターフライヤー
コーヒー マフィアで使用しているウォーターフライヤー

 酸化を抑えるだけでなく「油煙のもととなる微細な炭化物も水に沈むので揚げ物につきものの油煙も軽減できる」(ウォーターフライヤーの佐藤社長)。そのせいか、店内で油の匂いはほとんど感じなかった。

揚げかすが油の中に残らないため、フライドポテトを長時間揚げ続けても表面がきれいなまま仕上がる
揚げかすが油の中に残らないため、フライドポテトを長時間揚げ続けても表面がきれいなまま仕上がる

冷凍イカを入れても油はねなし!

 もう1つは揚げ物の水分が油中に流出するのを防ぐ「ドクターフライ」というフライヤー。通常のフライヤーの内側の側面に2枚の電極パネルを設置して電波振動を起こすことで、食材の水分が油の中に流出しにくくなり、油はねを防止するという。また「油が食品内部に入りにくくなる」と同機を手がけるエバートロン(東京都港区)広報室の松村美波室長は話す。

 取材時には熱した油の中に霜だらけの冷凍イカをまるごと入れるデモンストレーションが行われたが、油はねはほとんどなかった。完成した揚げイカは水分がほとんど失われず、油も染みていないため、揚げたというより名人が焼き上げたようなふっくらプリプリの仕上がりで、試食した人たちからどよめきが起こった。

霜だらけの冷凍イカを丸ごと揚げても油はねはほとんどなかった
霜だらけの冷凍イカを丸ごと揚げても油はねはほとんどなかった
完成した揚げイカは水分がほとんど失われておらず、油も染みていないため、揚げたというより焼き上げたようなふっくらプリプリの仕上がりに驚いた
完成した揚げイカは水分がほとんど失われておらず、油も染みていないため、揚げたというより焼き上げたようなふっくらプリプリの仕上がりに驚いた

 何を揚げても油はねがほとんどないので、調理経験が少ないスタッフでも安心して揚げ物の調理ができ、油切れのいいサクサクした揚げ物が作れるという。さらに「揚げ時間が約10~30%短縮できるし、異なる食材を同時に調理できるというメリットもある」(エバートロンの松村室長)。

 取材当初、「酸化を抑えるだけで“次世代”というのは大げさではないか」と感じたが、油がはねず臭いもつかないので、狭い店舗でも揚げ物が提供できるという点は飲食店にとっては大きなメリットになるだろう。修業期間不要で誰でも揚げ物調理ができ、掃除の手間も減るので、飲食業界で大きな問題となっている人手不足の解消につながる可能性もある。味や食感以外でも“次世代”といえそうだ。

バルタイムはアルコール類も提供する。「キンミヤコーヒーハイボール」(写真左、380円)はさっぱりした飲み口で食事と相性がよさそう。ハンドドリップのコーヒー(写真右)は240円だが、月額3000円を払うと1来店につきドリング1杯無料になる
バルタイムはアルコール類も提供する。「キンミヤコーヒーハイボール」(写真左、380円)はさっぱりした飲み口で食事と相性がよさそう。ハンドドリップのコーヒー(写真右)は240円だが、月額3000円を払うと1来店につきドリング1杯無料になる
飯田橋店のフードメニュー。会員限定で安くなるメニューもある
飯田橋店のフードメニュー。会員限定で安くなるメニューもある

(文/桑原恵美子)

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