あと半年早ければ評価は違っていた?

 なぜ今、3G・4GのDSDSに対応したスマートフォンが急に増えているのか。それは、世界的に新しい通信方式への移行が進んでいることが大きい。デュアルSIMは元々、キャリアのネットワークが充実しておらず、しかもプリペイド方式が主流で、場所や相手によってSIMを使い分ける必要があった、新興国で人気を得て広まったものだ。利用も音声通話が主流だったことから、新興国を中心に、安く利用できるGSM方式に対応することが重要だった。

 だが、近年、新興国でもスマートフォンが普及したことで、モバイルの利用スタイルが音声通話からデータ通信へと大きくシフト。それに伴い、インフラも、方式が古く通信速度が遅いGSMから、より通信速度が速い3G・4Gへと移行しつつある。端末側も、新しいインフラに対応したものが求められるようになってきており、それが3G・4GのDSDS対応機種が急増する要因となっているのだ。

 しかもDSDSは、自社のネットワーク以外を使ってほしくない大手キャリアの端末に搭載される可能性が低い。それゆえ、SIMフリー端末を手掛けるメーカーにとっては大きな武器となるだろうし、DSDSを訴求するSIMフリースマートフォンメーカーは今後増えていくものと考えられる。

 とはいえ、DSDSが幅広い層のユーザーから支持を得てブレイクするかというと、それは難しいと筆者は見ている。理由は、今年に入って大手キャリアとMVNOそれぞれが抱えていた料金面のデメリットが解消されており、手間をかけてまで2枚のSIMに対応する必然性が薄くなっているからだ。

 大手キャリアの場合、これまでデータ定額サービスが高いのがデメリットだった。だが、9月に入り、ソフトバンクが「ギガモンスター」の提供を開始したのを機に、月額6000円で20GBまで高速データ通信が利用できるサービスが登場。従来の標準とされてきた5GBのプランに月額1000円を追加するだけで、4倍もの高速通信容量を追加できるようになった。従って、大容量通信を求めるヘビーユーザーであっても、MVNOのSIMを使ってまでして料金を抑える必然性が少なくなってしまったのだ。

iPhone 7/7 Plusの発表を機に、大手キャリア各社が月額6000円で20GBもの高速データ通信が利用できるサービスを発表。デメリットでもあった高速通信料の高さを解消してきている。写真は9月16日のNTTドコモiPhone 7/7 Plus発売イベントより
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 一方MVNOは、これまで通話料が高いのがデメリットだった。しかし、今年に入り相次いで5分、あるいはそれ以上の通話を定額にするサービスを実現。通話定額サービスを利用するために、必ずしもキャリアのSIMを用意する必要がなくなってしまったのだ。

楽天モバイルが「5分かけ放題」を提供して以降、MVNOも通話定額に力を入れるようになった。写真は1月28日の楽天モバイル発表会より
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 もちろん、DSDSは、これまで日本には存在しなかったものだ。そのため、工夫次第で料金を抑えたりするなどさまざまな活用が期待できることは確かだ。だが、キャリア、MVNO共に従来抱えていた料金面のデメリットを解消したことから、SIMを契約し、設定を工夫するなど手間をかけてまで利用するメリットは薄くなってしまっている。せめてあと半年早く3G・4GのDSDS対応機種が日本に上陸していれば、評価は大きく違っていたかもしれない。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。