ISP大手、かつMVNO市場で大きな存在感を示すインターネットイニシアティブ(IIJ)。同社は2016年8月30日、NTTドコモに加入者管理機能の連携を申し入れ、承諾されたと発表した。これによりIIJは国内で初めて、自社でSIMを発行できるなど自由度の高い通信サービスが提供できる「フルMVNO」となる。IIJがフルMVNOになることで、同社のサービスはどう変わるのだろうか。

IIJが日本初のフルMVNOに

 端末代金実質0円の事実上の禁止措置を受け、一層活況を呈しているMVNO市場。料金競争の激化やサービスの均質化が進み、生き残り競争が厳しさを増している。

 そうした中、新たなMVNOの差異化要素として、昨年頃から注目されているのが「HLR/HSS」の開放によるMVNOの「フルMVNO」化だ。

 HLR/HSSとは「Home Location Register/Home Subscriber Server」の略で、要するにスマートフォンなどに挿入して利用するSIMの情報を一元管理するデータベースのこと。HLR/HSSには電話番号などSIMに書き込まれたID情報が登録されており、SIMを挿入した携帯電話が、ネットワークにアクセスするときに、正しい契約のSIMかどうか認証したり、どの基地局に接続しているかをチェックしたりするのに用いられる重要な設備だ。

HLR/HSSは電話番号などSIMに記録された情報を管理するデータベースであり、ネットワークに接続する際の認証や、端末の位置情報確認などに用いられている重要な設備。写真は8月30日のIIJ「次期MVNO事業に関する記者発表会」より
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 従来キャリアはこの設備をMVNOに開放していなかった。だがサービスの差異化を図りたいMVNOと、携帯電話市場競争の促進を図りたい総務省の後押しにより、HLR/HSSのMVNOへの開放を求める声が高まっていった。実際、昨年話題となった総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」でも、HLR/HSSを「開放を促進すべき機能」とし、キャリアとMVNOとの協議の促進が提言された。

 しかし、いざHLR/HSSをMVNO自身が直接運用するとなると、それなりに大きな設備投資がかかってしまう。通信料が非常に安いことを売りとしたサービスで人気を獲得したMVNOにとって、HLR/HSSの運用は“格安”なサービスが提供できなくなることにつながりかねない。

 そのため、開放の間口は広まったものの、多くのMVNOは資金面の問題を理由に、HLR/HSSの自社運用に二の足を踏んでしまったのだ。最近まで積極的に取り組む姿勢を見せるMVNOは、コンシューマー市場から事実上撤退を表明した日本通信くらいであった。

 ところが、8月30日、IIJが突如発表会を開催。前日の8月29日にNTTドコモにHLR/HSSの連携を申し入れ、承諾されたことを発表したのだ。同社は2014年夏頃より、HLR/HSSの開放に向けた協議をNTTドコモと進めていたとのことで、今回の承諾によりIIJは、現時点では日本初のHLR/HSSを持つフルMVNOになると見られる。

IIJはNTTドコモに加入者管理機能、つまりHLR/HSSの連携を申し込み、承諾されたことを発表。2017年度下期にフルMVNOとしてのサービス提供を予定している。写真は8月30日のIIJ「次期MVNO事業に関する記者発表会」より
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