SIMフリースマホ市場で首位の座を確固たるものにし、キャリアにも本格進出を果たすなど、圧倒的な強さを見せるファーウェイ。一方、他のスマートフォンメーカーは、どのような新機種で同社に対抗しようとしているのか。
幅広く新機種を投入するファーウェイ
大手キャリア(通信事業者)の夏モデルの発表が相次ぐ中、SIMフリースマホの新機種も続々と登場している。そんな中で注目したいのが、現在同市場でトップの座に就いている中国メーカー、ファーウェイの動向だ。
同社は今年、SIMフリースマホ市場での実績が評価されて大手キャリアへの端末供給の再開を果たした。夏商戦に向けた新製品として、NTTドコモが最新フラッグシップモデル「HUAWEI P20 Pro」を独占販売するほか、au、ソフトバンクもファーウェイ製の端末を投入する。
さらにファーウェイは、SIMフリースマホ市場に向けても新製品をリリース。6月11日の新製品発表会では「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」を披露した。P20は5.8型液晶と2つのメインカメラを搭載したモデルで、AI(人工知能)技術によって手ブレを抑える機能や、被写体に最適な設定を自動的に適用する仕組みなどを採用しており、基本性能は高い。また、既にauやUQ mobile、ワイモバイルなどのブランドで発売されているP20 liteは、昨年SIMフリースマホ市場で大ヒットした「HUAWEI P10 lite」の後継機だ。
キャリア向けの端末とは別に、SIMフリースマホ市場に向けた独自のモデルを用意できるのは、豊富なラインアップを誇るファーウェイならではだ。しかし、P20 Proがドコモの独占販売となったことで、ハイエンドのSIMフリー端末を求める層から不満が出ているのも事実。より大きな市場へと進出したことで、SIMフリースマホ市場への対応がやや手薄になった感がある。
ファーウェイのキャリア市場進出は、SIMフリースマホ市場向けに端末を提供するメーカーにとっては好機だ。では他のメーカーは、どのような端末でSIMフリースマホ市場を攻略しようとしているのだろうか。
DSDVでau系ユーザーを狙うエイスース
「ZenFone」シリーズが人気の台湾メーカー、エイスースは5月15日の新製品発表会で、リニューアルした「ZenFone 5」シリーズ3機種の国内投入を表明した。中でも注目は「ZenFone 5」と「ZenFone 5Z」の2機種だ。
画面上部にノッチ(切り欠き)のある縦横比19:9の6.2型液晶を採用している両機種は、処理性能と価格以外はほぼ共通。最近のスマートフォンのトレンドを徹底的に押さえており、写真撮影時には被写体に応じた最適な設定を選択するなど、AIを活用した機能を数多く搭載しているのが特徴だ。
エイスースのSIMフリー端末ならではと言えるのが「DSDV」(デュアルSIM・デュアルVoLTE)、つまり2枚のSIMカードを挿入して同時にVoLTE(ボルテ)での待ち受けができる機能を実装していること。DSDV対応機種としては、ファーウェイの「HUAWEI Mate10 Pro」などがあったが、対応キャリアが限られていた。ZenFone 5/5Zは3キャリア全てのVoLTEに対応しながらDSDVを実現した、国内初の端末となる。
このメリットが大きいのがauあるいはUQ mobileなどのau系MVNO(仮想移動体通信事業者)を利用しているユーザーである。と言うのもauは3Gのネットワークを急速に縮小しているため、音声通話にはVoLTEが必須となりつつあるからだ。音声通話用にauのSIMカードを挿し、データ通信にはMVNOのSIMカードを利用するという節約テクニックは、au VoLTEに対応したDSDV対応の端末でしか使えなかったのである。ZenFone 5/5Zは、au回線をメインに使いながらもデータ通信料を節約したい人たちにとって待望の端末とも言える。
モトローラは低価格路線で勝負
そしてもう1社、新しいSIMフリースマホをリリースしたのがレノボ傘下となったモトローラ・モビリティである。モトローラは6月7日に開催した新製品発表会で「moto g6」「moto g6 plus」「moto e5」の3機種を披露した。
このうちmoto g6/g6 plusは、モトローラが昨年投入した「moto g5」シリーズの後継モデル。性能的にはミドルクラス、ミドルハイクラスにとどまるものの、デュアルカメラや縦長の液晶を採用するなど、最新のトレンドを積極的に取り入れている。しかし、モトローラの戦略を見る上で注目すべきは、「e」シリーズの最新モデルであるmoto e5のほうだ。
moto e5で驚かされるのは、税別1万8500円という価格である。moto g6は2万8800円、moto g6 plusは3万8800円と、同クラスのスマートフォンとしては安い部類に入るのだが、エントリー向けとはいえ、moto e5は2万円を切る低価格を実現しているのだ。moto e5のメインカメラはシングルだが、縦長の液晶や指紋認証センサーを搭載し、DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)にも対応。さらに、moto g6シリーズより大きい4000mAhのバッテリーを搭載している。
実は最近、SIMフリースマホ市場では高品質、高性能な端末を求める傾向が強まっており、端末価格が上昇傾向にあった。1万円台の端末はごく一部のローエンドモデルに限られていたのだが、モトローラはあえて価格訴求で勝負に出たわけだ。
ファーウェイ製SIMフリースマホのラインアップが手薄になったこの夏商戦、他のメーカーがシェア拡大の好機と捉えているのは間違いない。