MVNOもキャリア化の道をたどるのか

 同社がこのように、一見安いが、実質的な縛りがあるサービスを提供するようになった背景には、やはり、低価格サービス競争の激化があるのではないだろうか。

 多くのMVNOは従来、大手キャリアとの差異化を図るため、“縛り”が弱い、あるいは縛りがないことを特徴としてきた。だが、MVNO間ではどうかというと、MVNOは参入障壁が低いために参入する企業が急増する一方、ネットワーク自体はほぼ同じであるため、料金以外の差異化が非常に難しい。

 ここにきてMVNO間の競争が激しくなってくると、一時的にユーザーを獲得しても、他社が新サービスやキャンペーンを打ち出せば、MNPで容易に転出されてしまう。そのため、縛りがないことが裏目に出て、ユーザーの定着に至らないケースが増えてきているのだ。

 実際、LINEモバイルが3月に、同サービスの月間平均解約率が1.2%以下と低い水準にあることを発表していたが、この値は大手キャリアの解約率に比べれば高い。LINEモバイルはブランド力があり、「カウントフリー」などサービスにも特徴があるのに加え、最近まで、ユーザー獲得の経路を絞っていた。だからこそ、解約率をこの水準でとどめておくことができたのだ。他の多くのMVNOの解約率がこれよりもずっと高いということは想像に難くない。

LINEモバイルは月間平均解約率が1.2%以下であることを公表したが、多くのMVNOの解約率はこれよりずっと高いものと考えられる。写真は3月14日のLINEモバイル発表会より
[画像のクリックで拡大表示]

 それだけに、長期間、確実に利用してくれるユーザーを確保したいと考えているMVNOは少なくないはずだ。ユーザーが求める“安さ”を実現しながらも、移り気なユーザーを定着させ、安定かつ確実な収入を得たいという思いが、今回のスマートコミコミ+のように、サービスの複雑化と実質的な縛りの発生につながっているのではないか。

 実は、競争の激化に伴い、安いけれど、縛りのある複雑なプランが生まれるという過程は、かつて大手キャリアがたどってきたものだ。それだけに、今後競争が激しくなればなるほど、消費者の要望に応えるため、サービスが複雑になり、“縛り”が増える可能性は高いといえるだろう。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。