SIMフリースマートフォン市場の出荷台数で国内トップシェアを獲得し、今年は大手キャリア(通信事業者)向けの端末も提供するなど、日本市場で好調を続けるファーウェイ。キャリア進出を再開した後は、どのようにして販売を拡大しようと考えているのだろうか。ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントとして日本でのデバイス事業を取り仕切る呉波氏に話を聞いた。

au版「nova 2」がSIMフリーの「P10 lite」を上回る

 「HUAWEI P10 lite」などミドルクラスのモデルを中心として、日本での端末販売を拡大しているファーウェイ。昨年はP10 liteが、SIMフリースマートフォンとして唯一、GfK Japan(東京・中野)の「キャリア総合携帯電話販売数ランキング」にランクインした。

 そのファーウェイの日本事業を取り仕切っている呉氏が、スペインのバルセロナで2月26日から3月1日まで開催された「Mobile World Congress(MWC)2018」で同社の国内事業に関するグループ取材に応じた。

携帯電話の世界最大の見本市イベント「Mobile World Congress 2018」にてグループインタビューに応えるファーウェイの呉波氏
携帯電話の世界最大の見本市イベント「Mobile World Congress 2018」にてグループインタビューに応えるファーウェイの呉波氏

 最近のファーウェイの動向として注目すべきは、KDDI(au)に「HUAWEI nova2」を提供したことだろう。ファーウェイはかつて、NTTドコモとソフトバンクに端末を提供したものの信頼を得るに至らず、2013年以降は扱いがなくなっていた。nova 2によって、キャリアへのスマートフォンの提供が再開されたわけである。

 呉氏は「nova2に関してはP10 liteより好調だ」と言う。SIMフリー市場より規模がはるかに大きいキャリアで販売されたことで、大きく販売数を伸ばしたとみていいだろう。

 P10 liteに関しても「通常は発売後6カ月で販売数が落ちてくるのだが、P10 liteは8カ月がたっても勢いを増しており、今年に入ってからも2桁の伸びを示している」と語る。またMVNO(仮想移動体通信事業者)の専売モデル「HUAWEI nova lite 2」についても「最初からヒットを飛ばしている。徐々にではなく一気に、急速に数を伸ばしている」と話し、SIMフリー市場でも引き続き好調なことを明らかにした。

auから発売された「HUAWEI nova2」の初期販売状況は、SIMフリー市場で大ヒットしている「HUAWEI P10 lite」を上回るという。写真は1月9日の「au 2018 春モデル」に関する説明会より
auから発売された「HUAWEI nova2」の初期販売状況は、SIMフリー市場で大ヒットしている「HUAWEI P10 lite」を上回るという。写真は1月9日の「au 2018 春モデル」に関する説明会より

日本市場のニーズを取り入れた「MateBook X Pro」

 スマートフォンの販売が好調なファーウェイだが、同社が今回のMWC 2018で発表したのはスマーフォンではなく、ノートパソコンの「MateBook X Pro」であった。MateBook X Proは、画面占有率91%という狭額縁の13.9型ディスプレーを搭載したタッチ操作対応ノートパソコン。キーボード上にポップアップ式のウェブカメラを搭載するなど、ユニークな機構を備えているのが特徴だ。

近年のファーウェイはパソコンにも力を入れており、MWC 2018では13.9型のノートパソコン「MateBook X Pro」を発表した。写真は「Mobile World Congress 2018」のファーウェイブースより
近年のファーウェイはパソコンにも力を入れており、MWC 2018では13.9型のノートパソコン「MateBook X Pro」を発表した。写真は「Mobile World Congress 2018」のファーウェイブースより

 ファーウェイは2016年からスマートフォンだけでなくパソコンも手掛けており、日本でもこれまで、2in1スタイルの「HUAWEI MateBook」や、薄型軽量の「HUAWEI MateBook X」などいくつかの機種が投入されてきた。だがパソコン市場における同社はまだ新参であり、スマートフォンのように大きなシェアを持っているわけではない。

 ノートパソコンに限定すると、日本の市場は6割以上が法人向けとなっており、売れ筋は15型以上のモデルだ。従来のファーウェイのモデルでは、その市場に入り込むのが難しかったと呉氏は言う。「われわれの商品は日本市場の主流から外れているものが中心だ。しかし今回のMateBook X Proは主流に入り込めるのではないか」

 呉氏によれば、日本上陸後の2年間はパソコン販売業者との関係を強化し、販路開拓に努めてきたとのこと。また一方で、呉氏はファーウェイ本社にも日本市場の独自性について説明し、要望を聞き入れてもらった。その結果、約14型という法人市場に適したサイズ感のMateBook X Proが開発されるに至ったわけだ。

 ファーウェイは、このMateBook X Proを2018年の第2四半期に発売すると発表した。日本市場にも早い段階から投入されるとのことで、MateBook X Proの販売を機として日本におけるパソコン市場の開拓を積極化する考えのようだ。

フラッグシップの「P20」はSIMフリーで

 またファーウェイは、スマートフォン端末のフラッグシップモデル「P」シリーズの新機種「P20」を、3月27日にフランスのパリで発表するという。Pシリーズは日本でも人気の高い機種だが、呉氏によれば「P20は、P10の後継機種として引き続きSIMフリー市場向けに出していく」とのことだ。

 では、キャリア向けは今後もnova 2のようなミドルクラスのモデルを展開していくのかと呉氏に尋ねたところ、「それができればいいと思っている。今はnova 2を販売しているが、それを継続していきたい」と答えが返ってきた。キャリア向けは当面、ミドルクラスで実績を積み上げていく考えのようだ。

 呉氏は今後の日本のスマートフォン市場に関して、「SIMフリー市場には少し変化が生じ、これまで2万円から3万円くらいが売れ筋だったが、それが2万5000円から4万円くらいに上がるだろう」と話している。その理由は、縦横比が18:9と縦長で画面占有率が高いスマートフォンが主流となることで、製造価格が上がるためだ。ファーウェイが昨年末に4万円台の「HUAWEI Mate10 lite」などを投入したのは、そうした状況を見越して、ミドルクラスの価格の幅を広げる戦略に出ているからだといえる。

ファーウェイはPシリーズの新機種「HUAWEI P20」を3月27日、パリで発表する。写真は2月25日のファーウェイ新製品発表会より
ファーウェイはPシリーズの新機種「HUAWEI P20」を3月27日、パリで発表する。写真は2月25日のファーウェイ新製品発表会より

FeliCaの搭載にも光

 もう1つ、今後のファーウェイの動向で注目されているのが、2月24日、日本初の「ファーウェイ・ショップ」を東京・秋葉原にある「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」内にオープンしたことだ。

 「ファーウェイはタブレットやOTTボックス(さまざまなネットサービスが利用できるセットトップボックス)なども手掛けている。さらに今年の下期には、スマートホームも提供する予定だ」と呉氏は言う。その言葉からは、スマートフォンの好調に乗ってファーウェイが提供する商品の幅を広げる上で、独自店舗の必要性が出てきたことが見て取れる。

 呉氏は、ファーウェイがそれらの商品とユーザーIDを関連付けたクラウドサービスを日本でも展開する予定であり、それが独自の決済サービス「HUAWEI Pay」を展開するための下準備であることを明らかにした。ファーウェイは「HUAWEI Pay」の導入によってFeliCa(非接触ICカード技術方式)を推し進めるとみられており、これまで非常に消極的だった決済サービスの導入に大きくかじを切るようだ。

ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba内のファーウェイ・ショップ。写真はファーウェイのプレスリリースより
ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba内のファーウェイ・ショップ。写真はファーウェイのプレスリリースより

 ファーウェイは世界シェア3位のスマートフォンメーカーという自負があるだけに、日本市場においても自社の端末を起点としてより多くの製品やサービスを提供し、販売拡大につなげたいのは確かだろう。だがまだファーウェイは、日本のSIMフリー市場をようやく攻略したにすぎず、そのシェアも大きいとはいえない。

 それだけに同社は、販売する商品や販路を広げながらも、引き続き日本の顧客の声に応え、「日本の消費者のニーズを満たす」(呉氏)ことを重視した取り組みを進めていくとしている。いかに顧客の声に応え適切な商品の提供やサポートを提供できるかが、よりシェアを伸ばすための勝負どころになると言えそうだ。

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