MVNOを苦境に陥れたのは総務省?

 ただ、こうした議論にはある種の行き詰まり感があるというのが、筆者の率直な印象である。なぜなら、MVNOの現状には、これまでの総務省の施策が大きく影響しているからだ。

 ことの始まりは、大手3キャリアによる市場寡占と、そのことに端を発し、番号ポータビリティー(MNP)による乗り換え顧客を奪い合う、キャリア同士の過度な端末代の値引き――これらを総務省が問題視したことである。実際、総務省は2015年の有識者会議「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、2016年4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出して、端末の実質0円販売を禁じた。他にもSIMロック解除の義務化や長期利用者の優遇など、キャリアに対していくつもの指導や要請を実施している。

 その結果、端末の過度な値引き販売や、MNPによる乗り換えユーザーを過剰に優遇する施策は大幅に減少。KDDI(au)の「au STAR」など、長期利用者優遇プログラムが増え、最近ではNTTドコモの「docomo with」のように、端末の価格を値引きしない代わりに通信料を安くする仕組みが登場している。MVNOとの競争に備え、キャリアがサブブランドや傘下のMVNOに力を入れたことにより、安価な料金プランの選択肢も大幅に増えた。

「docomo with」「auピタットプラン」など、端末代を値引きしない代わりに通信料を安くするプランは、総務省の指導があったからこそ生まれたものとも言える。写真は2017年5月24日のNTTドコモ新サービス・新商品発表会より
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 2年縛りの問題は別としても、検討会で指摘された問題点の多くは、総務省の指導に従ってキャリアが一連の取り組みを実施した結果といえる。それがキャリアからMVNOへ流出する顧客の減少、つまりMVNOの苦境につながったのである。

 ここまでの経緯と検討会で議論を見た限り、総務省に残された施策は多くないように思える。検討会は3月まで実施されるとのことだが、MVNO再興のための有効な施策を打てるのかどうか。現状では疑問符が付くというのが正直なところだ。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。