オムロン独自の顔画像センシング技術「OKAO(R) Vision」。人の視線や表情などを認識するというもので、これまで世界各国のメーカー向けに5億ライセンス以上を提供しており(第1回 「世界で5億ライセンスの実力とは?)、開発者向けの情報も「SENSING EGG PROJECT」から積極的に発信している。2015年9月に、一般家庭向け製品となる「ヒューマンビジョンコンポ 家族目線(HVC-C2W)」を発売(第2回 一般ユーザー向けにしたワケ)。ここでは、OKAO(R) Vison が今後、どのような分野に広がる可能性があるのか聞いた。

一般ユーザー向けの開発で、画像センシング技術の普及へ

――新たに一般ユーザー向けに製品を開発するということで、社内ではどのような反応がありましたか

太田 昴志氏(以下、太田):やはりトライすることはそれ相応にリスクも背負うことになるので、少しずつ前に進めざるを得なかったのは確かです。ただ画像センサーをコンポーネントとするメリットやそのための販売戦略だとかがきっちり固まって、社内の方向性が整っているので、今は階段をどんどん登っている感じだと思います。

オムロン エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー アプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部 HS企画課 主査 太田 昴志氏
[画像のクリックで拡大表示]

寺川:以前は事業部内で開発と企画が離れていることもありましたが、今は同じフロアのすぐそばに机を並べて働いていて、いい関係を築けています。ユーザーのフィードバックにきちんと反応できる環境と言えます。些細なことのようにも思えますが、こういった社内の連携は大事なことだと思っています。

――今後はさらにどういった展開を考えていますか

方城:画像センサーは人間の目の代わりになります。あとは鼻や口、つまり五感ですね。やはり目指すところは、できるだけ人間に近づけること。1つの情報だけでなく、さまざまな情報を組み合わせることでより良い答えが出ると思っているので、画像センサーだけにこだわらず、どんな情報を加えればより付加価値を出せるか、どんどんチャレンジしていきたいと考えています。

 家族目線については事例を増やしたいですね。今まではプロトタイプで仮説を立てながらずっとやってきましたが、これからは家族目線を実際にどんどん使っていただいて、特徴が分かりにくい製品ではあると思うので、丁寧にその魅力を伝えて実績を積み上げていきたいです。

寺川:開発者中心のコミュニティーを、将来はもっとユーザーを含めたものに育てていければと思っています。例えばユーザーが困ってることが分かれば、それを実現する術を持っている人をつなぎ合わせてそのままソリューションができるような。そういった思いも込めてSENSING EGG PROJECTという名前を付けて展開しています。ユーザーの声にメーカーも開発者も一緒になって応えていければと。

 家族目線はまず、日本で先行して発売しましたが、今後は海外にも展開します。今年後半から来年にかけて、米国、欧州、中国で販売開始する予定です。世界中にもユーザーのネットワークが広がっていくといいですね。

SENSING EGG PROJECTのWebサイト。既に1000人以上のメンバーが会員登録しているという
[画像のクリックで拡大表示]
SENSING EGG PROJECTのWebサイトでは、オムロンが開発したアプリ以外にも、様々なユーザー、企業が開発した画像センサー対応アプリをダウンロードできる
[画像のクリックで拡大表示]

太田:私はメーカーやサービス業者さんと企画を作り、一緒に新しいイノベーションを起こしながら、エンドユーザーに広げられればと思っています。具体的にはまだご紹介できないのですが、既に新しいサービスについて、たくさんのお話をいただいています。それら一つひとつについて、仮説を立て、実際に検証をしながら実現に向けて取り組んでいるところです。ぜひ期待していただきたいと思います。

 少しでも多くのユーザーにオムロンの顔画像センシング技術OKAO(R) Visionを使ってもらいたい、それが私たちの希望です。OKAO(R) Visionの用途が広がれば、当然、部品メーカーとしての需要も増える。あとはフィードバックを集めて次の製品に活かしていければと考えています。

――画像センサで取得したデータの活用は考えていますか?

太田:どちらかというとパーソナライズ化だと思っています。特定のお店や家庭に最適化するためのインプットデバイスという位置付けです。もちろん、インプットデバイスである以上、ビックデータの活用という流れにはなると思いますが、まずはインプットデバイスとしてどういった情報を取得していくか、デファクトスタンダートにしていくという方向性だと思います。

寺川:今はすべての情報がクラウドに集められるような時代です。でも、画像センサーで取得するデータは、家の中やオフィスの中だけなど、閉じたネットワークの方が活用しやすいのではないでしょうか。例えば、寝ている子どもが首を3回振って瞬きをすると起きる、こういったデータを家の中に蓄積することで、次の行動を予測してアラートが出る機能を実現する。このような進化の方向性もあると思います。介護や福祉の現場でもさまざまな活用の可能性があると思っています。

(構成/舟橋亮人=スプール、持田智也 撮影/宮田昌彦=エムツーフォト)