2015年11月20日、東京・千代田区のベルサール秋葉原で開催される「TRENDY EXPO TOKYO 2015」では、ウエアラブル機器の市場拡大を目指す3人のキーパーソンがセッションを行う。

 今回はNTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 ヘルスケア事業推進担当部長の村上 伸一郎氏をクローズアップする。

フィットネストラッカー「Runtastic Orbit 01」
フィットネストラッカー「Runtastic Orbit 01」

実は、日本人の健康を全方位でサポート

 NTTドコモといえば言わずと知れた携帯キャリアの最大手だが、近年は通信事業にとどまらない幅広い事業展開を進めている。新規事業領域に位置付けられるヘルスケア事業はそのなかのひとつ。スマートフォンと連携できる新規事業としてドコモとしても特に注力している。

 例えば、食生活の改善をサポートするスマホサービス「からだの時計 WM」は100万契約を突破。また「ビリーズブートキャンプ」や家庭用フィットネス機器「ワンダーコア」で有名なテレビ通販の「ショップジャパン」も、ドコモ傘下の子会社が運営している。後述するサービスと合わせて、日本人の健康に関わるさまざまな事業を展開しているのだ。

 また同社では、健康に関わるさまざまなウエアラブルデバイスやサービスを提供している。例えば、ランナー向けのフィットネストラッカー「Runtastic Orbit 01」は、ランニングアプリ「Runtastic for docomo」と連携する最新のリストバンド型デバイス。ランニング時の距離やペース、消費カロリー、心拍数などを記録・管理することでトレーニングをサポートするほか、日常の歩数やカロリー、睡眠時間の計測にも対応する。

 着て使うウエアラブルデバイスとして商品化され、より専門的にトレーニング時の心拍数や心電波形などを取得できるのが、東レとNTTで共同開発した機能素材「hitoe」とそれを使った衣服だ。現在はランニングやサイクリングなどのスポーツ分野で利用されている。だが将来的には作業員やドライバーの健康管理や、医療分野におけるリハビリなど、幅広い分野で活用したいという要望や引き合いが強いという。

hitoeを採用したGOLDWINのウエア型トレーニングデータ計測用デバイス「C3fit IN-pulse」シリーズ
hitoeを採用したGOLDWINのウエア型トレーニングデータ計測用デバイス「C3fit IN-pulse」シリーズ
「C3fit IN-pulse」シリーズで取得した心拍数をスマートフォンに転送できる「hitoeトランスミッター 01」
「C3fit IN-pulse」シリーズで取得した心拍数をスマートフォンに転送できる「hitoeトランスミッター 01」

 また、子どもの安全をサポートする腕時計型ウエアラブル端末「ドコッチ」も、実は先進的なもの。各種センサーに加えて3G通信機能を搭載しているため、スマホを持っていなくともドコッチ1つで子どもの活動量や位置情報、気温、湿度などを確認できる。そのため、子どもの運動不足解消や身体能力の向上を目指す自治体のプロジェクトにも同機器が採用されている。

子ども向けの腕時計型ウエアラブル端末「ドコッチ 01」
子ども向けの腕時計型ウエアラブル端末「ドコッチ 01」

 さらにドコモは、フィットネスクラブにも入り込んでいる。フィットネスクラブ内の運動と日常の活動を一元的に管理するフィットネス事業者向け顧客管理サービス「Fit-Link」の本格提供を次年度に予定している。

 また同社では、糖尿病患者の治療にスマホやウェアラブルデバイスなどを活用する研究や、電子お薬手帳などの開発なども進めている。「健康は人間が常に考えていること。またスマホやウエアラブル機器はユーザーが常に所持しているもの。そういった意味で両者の親和性は高く、もっといろいろなことができるはずだ」と村上氏は語る。

村上 伸一郎(むらかみ しんいちろう)
村上 伸一郎(むらかみ しんいちろう)
NTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 ヘルスケア事業推進担当部長。1992年NTT入社、同年ドコモへ転籍し、2G/3G/LTEのエリア戦略業務を担当。2009年経営企画部担当部長、2010年山口支店長などを経て、2015年より現職に従事。ウェルネス・メディカル両領域のサービス企画・事業化を推進する

ドコモしかできないこととは?

 ウエアラブルデバイスを今後活用するには「スマホではできない、ウエアラブルデバイスだからできる使い方を考えていくことが重要だ」と村上氏は語る。

 例えばhitoeは、スマホでは計測しづらい筋肉の動きや心拍数など、身体のさまざまなデータを効率的かつ高精度で取得でき、運動中の利便性も高められる点が、ウエアラブルならではのメリットといえる。

 また子どもや年配の人々にとっては、スマホを常に持ち続けてもらうのは難しい。このようなユーザーの問題を解決するには、日常的に身に着けられるウエアラブルのほうが、スマホよりも役立つ。

 スマホがほぼ普及した現状においては、NTTドコモといえども、今ある通信事業だけを考えていてはさらなる成長は見込めない。新しい市場を開拓していくためには、ウエアラブルデバイスの活用が必須となりつつあるのだ。

 その点、ドコモは今後広がるウエアラブル市場でも、有利なポジションにいる。例えば、数千万人の携帯電話契約加入者と長期的な関係を結んでいるため、さまざまなウエアラブルデバイスで収集したデータを一元的に管理、分析し、それを基にしたサービスを提供するのに適している。

 また、ウエアラブル端末の普及を妨げている、ある「大きな問題」についても、ドコモなら解決できる可能性がある。それは何なのか。この続きは村上氏が登壇する「TRENDY EXPO TOKYO 2015」のセッション(無料)で確かめてほしい。

(文/近藤 寿成=スプール、写真/近森千展)

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