この記事は「日経トレンディ」2016年12月号(2016年11月4日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 使い勝手の良さがクチコミで広がり、発売から6年を経た現在も7カ月の入荷待ちという国産ホーロー鍋「バーミキュラ」。生産量が少ないこともあるが、密閉性が高く無水調理などに向くことで息の長いヒット商品になっている。

 この鍋を用いた炊飯器「バーミキュラ ライスポット」が12月に発売される。特徴的なのは、鍋と家電が“合体”したような見た目だ。

愛知ドビー「バーミキュラ ライスポット」
予想実売価格/7万9800円(税別)
サイズ・重さ/幅311×高さ208×奥行き296mm(鍋含む)・約6.9kg(鍋約4kg、調理器部約2.9kg)
鍋容量/約3.7L
炊飯容量/白米1~5合、玄米1~4合、おかゆ1~1.5合
調理モード/中火・弱火・極弱火・保温(30~95℃)
消費電力/1350W
主な付属品/専用リッドスタンド、米計量カップ、水計量カップ、レシピブック

 釡として使う鍋はバーミキュラを炊飯用に再設計したもので、底面などの形状を変えて炊飯時に対流が起こりやすくしたという。従来のバーミキュラと同じように、火にかけて使うこともできる。IH機構を備える本体には炊飯と調理の2つのモードがあり、煮込み料理なども作れる。

鍋の内側は、洗いやすくご飯を混ぜやすい水紋状に設計変更したという
鍋の内側は、洗いやすくご飯を混ぜやすい水紋状に設計変更したという
蓋の裏は水滴がご飯に落ちにくい形状
蓋の裏は水滴がご飯に落ちにくい形状

 閉めると機械的にロックされる外蓋がないのも特徴。一般的な炊飯器は、密閉性を高めながら蒸気口も設けるために、外蓋や内蓋、ゴム製パッキンといった複数の部品があり、これらを取り外して洗う手間がかかる。バーミキュラは蓋だけのシンプルなつくりなので洗いやすく、調理に使ってもにおいが残りにくい。鍋の蓋がじかに外気に触れるので、「加熱される底面との温度差が大きくなり、炊飯時に強い対流が起きやすい」(製造・販売元である愛知ドビーの土方智晴副社長)のも利点という。

通常のバーミキュラと異なり蓋につまみがない
通常のバーミキュラと異なり蓋につまみがない
調理部はIH方式で加熱
調理部はIH方式で加熱
操作部はタッチ式。炊飯モードと調理モードを選べる
操作部はタッチ式。炊飯モードと調理モードを選べる

ご飯もおいしく炊ける「多機能調理家電」

 試作器でご飯を炊いてみたところ、10万円以上する高級炊飯器と比べて遜色のない仕上がり。米は粒がしっかりと立ち、甘みや香りが十分に引き出されていた。調理器としても極めて優秀。火力は3段階、時間は1分単位で設定でき、ローストビーフやポトフ、スープなども“ほったらかし”で作れた。保温モードを使えば低温調理も簡単にできる。価格は約8万円(税別)と高めだが、これらの機能を1台で兼ねると考えれば納得感はある。名前こそ炊飯器だが、ご飯もおいしく炊ける「多機能調理家電」として注目していい。

ご飯の炊き上がりは粒が立っていて香りもいい
ご飯の炊き上がりは粒が立っていて香りもいい
温度管理が難しいローストビーフも簡単に作れる
温度管理が難しいローストビーフも簡単に作れる
ミネストローネスープなどの調理も“ほったらかし”で可能
ミネストローネスープなどの調理も“ほったらかし”で可能
記者の目
新規性 ⇒ 炊飯用ホーロー鍋と、それに最適な熱源を組み合わせる発想は新しい

実用性 ⇒ 炊いたご飯は高級炊飯器と遜色なく、調理家電としても実用性が高い

価 格 ⇒ 高めだが、ご飯がおいしく炊ける多機能調理器と考えれば納得できる

担当者の
愛知ドビー 副社長 土方智晴氏
愛知ドビー 副社長 土方智晴氏
 ホーロー鍋「バーミキュラ」で炊いたご飯がおいしいとのユーザーの声を知り、3年前に開発に着手した。試作器を発表したのは昨年4月だったが、そこからIH部の設計を自分たちでやり直すなど、思った以上に開発が難航。最終製品に仕上げるのに1年以上かかった。道具メーカーなので家電を開発したという意識はあまりないが、結果的に理想的な炊飯器ができたと自負している。今後はアジアでの販売に加えて、欧米にも調理器として売り出していきたい。

(文/日経トレンディ編集部)

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