この記事は「日経トレンディ」2016年11月号(2016年10月4日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 安さと必要十分な機能が特徴の「ジェネリック家電」で知られるアイリスオーヤマが、IH炊飯器「銘柄量り炊き RC-IA30」(実勢価格2万9800円・税別)を発売した。この市場では、大手が安価で高性能な製品を多数販売しているが、今回の新製品は、味と使い勝手のそれぞれで類を見ない機能を備えている。

 アイリスオーヤマがまず着目したのが、水の量だ。水が炊き上がりの味に及ぼす影響は大きく、特に「最適な水量よりも少ない場合は、僅か10%の違いでも多くの人が『おいしくない』と感じる」(アイリスオーヤマ)。半面、最適な水の量で炊けている人は少なく、同社が主婦を集めて炊飯の様子をモニタリングしたところ、ほとんどの人が水を多め、もしくは少なめに入れていたという。

 そこでRC-IA30は、米の銘柄と量に応じて、最適な水の量を5cc刻みで表示する機能を搭載。水の重さを基に、残りの水量がカウントダウン表示されるので、「OK」の表示に変わるまで水を注げばいい。1.7合、2.2合といった中途半端な米の量でも、最適な水の量を瞬時に表示。少しだけ炊く機会が多い人でも使いやすいというメリットもある。

アイリスオーヤマ「銘柄量り炊き RC-IA30」
実勢価格/2万9800円(税別)
サイズ・重さ/幅225×高さ212×奥行き280mm・4.2kg
炊飯容量/0.5~3合
消費電力/炊飯時800W(IH調理時は1000W)

本体が上下に分離する構造が目を引く

 使い勝手の面では、本体が上下に分離する構造が目を引く。本体上部はおひつ代わりにそのまま食卓に持っていける。さらに、本体下部はIH調理器として単体でも利用可能。炊飯器サイズのため、直径18cmまでの鍋、フライパンしか使えないが、火力は1000Wと十分だ。単身者なら、これ一台で多くの料理がこなせる。

 本体の下部から上部へは、ケータイの非接触充電と同じ方式で送電するなど、技術的にも見どころの多い製品だ。3万円を切る価格設定は、機能、性能を考えれば魅力的。販売目標は1年で5万台前後というが、それ以上のヒット商品に育つ可能性もありそうだ。

本体上部はおひつ代わりに持ち運べる
本体上部はおひつ代わりに持ち運べる
本体下部はIH調理器として動作する
本体下部はIH調理器として動作する
銘柄別の炊き分けに対応。もちろん保温もできる
銘柄別の炊き分けに対応。もちろん保温もできる
本体上部と下部の間に配線はなく、各種信号は赤外線で送受信
本体上部と下部の間に配線はなく、各種信号は赤外線で送受信
米を入れ、計量ボタンを押すと最適な水の量が表示されるので、「OK」の表示に変わるまで水を入れる。5cc刻みなので、最後の微調整がやや難しい
米を入れ、計量ボタンを押すと最適な水の量が表示されるので、「OK」の表示に変わるまで水を入れる。5cc刻みなので、最後の微調整がやや難しい
同社は2合・3合パックで各種ブランド米を販売。この炊飯器は3合炊きなので、封を切ってそのまま炊ける
同社は2合・3合パックで各種ブランド米を販売。この炊飯器は3合炊きなので、封を切ってそのまま炊ける
記者の目
新規性 ⇒ 5cc単位の水計量、単体で動くIH調理器…。斬新なギミックが満載

実用性 ⇒ 少ない量の炊飯でも使いやすく、一人暮らしや小世帯に向いている

価 格 ⇒ 銘柄別の炊き分けに対応しながら、3万円を切る価格は十分に魅力的

担当者の
アイリスオーヤマ 家電事業部 統括事業部長 石垣達也氏
アイリスオーヤマ 家電事業部 統括事業部長 石垣達也氏
 「年々減っている米の消費量を、もう一度増やしたい」という大山健太郎社長の問題意識から、13年に精米事業に参入。昨年11月には、より米をおいしく食べる手段を提供するべく炊飯器市場に参入した。1号機は安価なマイコン式だったが、今回の新製品はより本格的なIH式だ。独自の炊飯試験を通じて、全国の31銘柄のブランド米を大きく6種類に分類。ボタン操作で適切な銘柄を選べば、水の量だけでなく、火加減も調節して最適な状態に炊き分けられる。

(文/日経トレンディ編集部)

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