この記事は「日経トレンディ」2017年4月号(2017年3月4日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 オーディオメーカーのオンキヨー&パイオニア イノベーションズから、ハイレゾ対応のSIMフリースマホ「GRANBEAT」が発売された。これまでのハイレゾ対応スマホとは一線を画し、同社のハイレゾオーディオプレーヤー「DP-X1A」をベースに通信機能を搭載。むしろスマホ機能を持ったハイレゾプレーヤーといえる。

オンキヨー&パイオニア イノベーションズ
「GRANBEAT DP-CMX1」
実勢価格/8万4800円(税別)
サイズ・重さ/幅72×高さ142.3×厚さ11.9mm・234g
液晶/5型(1920×1080)
CPU/Qualcomm MSM8956 ヘキサコアプロセッサー
メモリー/RAM3GB、ROM128GB
カメラ有効画素数/1600万(背面)、800万(前面)
バッテリー/3000mAh
連続駆動時間/待ち受け480時間、連続通話22時間、連続再生25時間

 8万4800円で、スマホとしては高額。ただ、DP-X1Aの実勢価格は7万円を超えており、1万円程度の追加でスマホ機能が付くと考えれば割安感もある。

音楽好きハイレゾユーザーが2台持ちせずに済むのが魅力

 同様に、サイズ・重さはスマホとしてはボリュームがあるものの、ハイレゾプレーヤーとの一体型と見れば十分健闘。加えて、ハイレゾプレーヤーの中・上級機で主流となりつつある、左右の音を独立して駆動するフルバランス出力端子や、ブルートゥース接続時のハイレゾ相当の出力にも対応する(aptX HD)。

 つまり位置づけとしては、音楽好きのハイレゾユーザー向けで、スマホと2台持ちせずに済むのが最大の魅力といえる。

 そこで気になるのが音質だ。電波を発するスマホはノイズが多く、音質に影響が出やすい。GRANBEATでは通信とオーディオの基板を分離し、さらにオーディオの基板にはノイズを遮るシールドを施しているという。

 7万円台の価格帯としては自然な音作りに定評があるハイレゾプレーヤーのDP-X1Aと聞き比べてみたところ、音の味付けは多少異なるものの、同レベルといえる高音質だった。通信によるノイズを除去して、この音質に仕上げた点は評価できる。

 通話と併用した際のバッテリー持ちや、スマホとしての携帯性など、使い勝手の面では課題も残す。ただ、オーディオプレーヤー並みの音質を誇るスマホとしては唯一の選択肢。ハイレゾユーザーにとっては検討に値する商品ではある。

スマホとオーディオの基板は完全に分離。シールドも施し、無線によるノイズを最小限に抑える
スマホとオーディオの基板は完全に分離。シールドも施し、無線によるノイズを最小限に抑える
SIM 2枚の同時待ち受けに対応。マイクロSDカードスロットは別にあり、最大で256GBまで対応
SIM 2枚の同時待ち受けに対応。マイクロSDカードスロットは別にあり、最大で256GBまで対応
記者の目
新規性 ⇒ 本格オーディオの性能を詰め込んだ、今までにないスマートフォン

実用性 ⇒ 機能は充実するが、スマホとしては厚さや重さの面で携帯性に課題

価 格 ⇒ 高めの設定だが、スマホやオーディオとしての性能を考慮すると相応

担当者の
オンキヨー&パイオニア イノベーションズ ネットワークサービス事業本部DAP商品企画部 林 佑二氏
オンキヨー&パイオニア イノベーションズ ネットワークサービス事業本部DAP商品企画部 林 佑二氏
 ハイレゾ対応のスマートフォンは他社にもあるが、GRANBEATはデジタルオーディオプレーヤーがベースとなっている点が大きく異なる。スマホとしては世界初となるヘッドホン用のバランス出力端子を搭載し、フルバランス駆動の回路設計で実装。Bluetoothヘッドホンを使う場合も、48kHz/24bitの高音質再生で伝送できるaptX HDに対応している。音楽好きは、外出先でも専用のプレーヤーで音楽を楽しんでいる。これをスマホ1つにまとめられるメリットを訴求していきたい。

注)試聴にはオンキヨー&パイオニア イノベーションズのハイレゾ対応ヘッドホン「SE-MHR5」を使用。楽曲はサンプリング周波数192kHzのハイレゾ音源『My Preciousfeat.Cheryl Lynn』とした

(文/日経トレンディ編集部)

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