ストッキングメーカー大手のアツギが妊婦用のストッキングを発売した。どんな狙いがあるのか。ストッキング市場の変化と併せて探ってみたい。

アツギの主力ブランドから初めて登場する妊婦用商品「アスティーグ【逢】」のパッケージ。写真左がストッキング、右がタイツ。2016年7月発売(画像提供:アツギ)
[画像のクリックで拡大表示]

安価な中国製が増えたのに、1足あたりの平均購入単価が上がっている

 そもそもストッキング市場はどんな状況にあるのか。日本靴下協会がまとめた統計によると、パンストの国内生産量はバブル絶頂期だった1989年の10億8378万足をピークに減少を始め、2014年には1億1705万足と9分の1以下にまで縮小した。同協会の会員企業数も減少が続き、2015年のデータでは2009年に比べて78%と、この6年間だけで減少率は2割を超えた。

 ストッキングの購入量も大きく減っている。総務省の家計調査によると、1世帯あたり1年間に購入するストッキングは、1993年には平均10.3足だったが、2015年はたったの1.9足。女性は20年前のわずか5分の1の量しかストッキングを買わなくなったのだ。

※日本靴下協会がまとめた統計によると、パンスト&タイツの国内向け供給量(=国内生産+輸入-輸出)は3億1506万足(2015年)で、バブル期に過去最高を記録した11億4439万足(1989年)の3割弱にとどまる。

 パンストとタイツの市場に見られるもう1つの顕著な変化は輸入量の増大だ。2015年は2009年に比べて119.8%と、2割近く増加している。これはアツギなどの靴下メーカーに限らず、日本国内の商社や量販店などの流通業者が、おもに中国の工場で作らせた安価な製品が多く出回っていることを示す。

 ところが不思議なのは、1足あたりの平均購入単価は1993年が264.5円、2015年が314.9円と、50円も高くなっていること。これらのデータを総合すると、なお興味深い変化が読みとれる。すなわち、国内生産量が減る一方で輸入品が増え、安価な中国製品の流通量が増えたにもかかわらず、1足あたりの購入単価はここ数年顕著に上がっているのだ。これはいったい何を意味するのか。より単価の高いストッキングを選別して買う人が増えた、ということだろう。

 興味深いことに、ストッキングも“爆買い”の対象となっていた。アツギも、中国の工場で3足組や5足組といったお買い得品を生産するが、中国からの訪日観光客は中国で作られたアツギ製品は買わず、日本の工場で作られた1足売りのアツギ製品を買うのだという。メイドインチャイナの安価なパンストには興味がないらしい。