バストサイズから発想するアパレルブランド「HEART CLOSET」の黒澤美寿希社長(31歳)。西武池袋本店(東京都豊島区)に2017年10月末までの期間限定で開いたショップで話を聞いた
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 そのブランドの服は、選ばれし者しか着られない。なぜなら、バストが豊満な女性だけを対象にしているから。ブラジャーのように胸の大きさから選ぶサイズ展開は「最低でもDカップ」なのだ――。

 「胸のサイズから発想する新感覚アパレル」をうたうのは、ネット通販を中心に展開するブランド「HEART CLOSET」。これまでの婦人衣料は、バストが人一倍大きな女性をセクシー路線ではなく、すっきりキレイに見せるような“きちんと感”のある既製服が乏しかった。そのなかで打ち出した「バストサイズからアプローチする服」は、これまでになかったコンセプトではないだろうか。職場や冠婚葬祭の席などセクシーNGの場所で、大きなバストをふんわりと美しく包む工夫を施した服の提案が好評だ。自身もIカップという黒澤美寿希社長に、代表的な商品の特徴を聞いた。

※本記事は、日本人女性の胸サイズ事情に関するアンケート統計も紹介する「豊満な胸の悩みを解消、バストサイズで選べる服が好評」の続きです。ぜひあわせてご覧ください。

一般的な体形バランスと大きく隔たる凸凹があると、既製服との不調和を生む

 「この子は私の実寸でできているんです」。商品のシャツを着せたトルソーを指して、黒澤社長がこう紹介した。実寸とは、バストサイズが「Iカップ」であることを意味する。シャツの下はこんな感じ。

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このトルソー、黒澤社長の胸と同じ寸法でできているそうです

 働く女性の「オフィス・カジュアル」をコンセプトに掲げる同ブランド、その代表的商品と位置づけるのが「シャツ」。一年中、上着のあるなしにかかわらず出番の多いアイテムだ。シャツ地は伸縮性のあるニットとは違って胸のカタチがあらわになりにくく、豊満な胸元をなんとなく隠せる……と思いがちだが、胸が人一倍大きな人の場合には、決してそんなことはない。

 例えば「体はMサイズ、胸だけXLサイズ」という人が肩幅やそで丈に合わせて服を選ぶと、胸回りの布の量は絶対的に足りなくなる。

■婦人服のサイズ表記に関する豆知識

 工業製品に関して国が定めるJIS規格(日本工業規格)の成人女子用衣料のサイズは、全国規模で1万人以上を対象に実施した人体計測値をもとに、日本人女性で最も多く見られる標準的な体形を「9AR」(※1)と表示している。いわゆる9号サイズだ。9ARで示される現行の基本身体寸法(※2)は、身長158cm、バスト83cm、ヒップ91cmである。


(※1) 細かくいうと、「9AR」の「9」は成人女子のバスト寸法が標準(9号サイズ)であることを表す。「9AR」の「A」は体型区分表示のA体型、「9AR」の「R」は身長で普通(レギュラー)を表す。

(※2)1992~1994年にかけて北海道から沖縄にいたる全国規模で実施した、16~79歳の成人女性1万1066人の人体計測の結果をもとに、1998年に改正した数値(日本アパレル工業技術研究会に取材)

 いわゆるMサイズに相当する9号サイズの服というのは、標準体形(9AR)の女性が着用して「美しい」または「着心地が良い」とされる寸法で作られる。仮に、ある女性のアンダーバスト(=バスト直下の周径)が70cmならば胴まわリは9号サイズが適当だろうが、バストだけ大きくてGカップ(トップとアンダーの差25cm)だとするとトップの周径は95cm。実際、この人が9号サイズの服を着ると、ご覧のような見苦しい状態になってしまう。

市販のMサイズの服を着ると胸だけが収まらない、という状態(画像提供:HEART CLOSET)
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 7号、9号、11号……といったJIS規格に基づく婦人服サイズは、日本人女性の身体計測データから算出した統計値をもとに作られている。そのため、着用者のボディー寸法に一般的な体形バランスと大きく異なる凸凹があると、その差異が服との不調和を生むことになる。