ハードディスク(HDD)は超精密機器。構造上、わずかなゆがみが生じただけでも、データを読み出せなくなる。当然、落とすなんてもってのほかだ。

 ところが2005年2月、ロジテックは、「落ちても壊れない」を強調した、胸ポケットサイズのポータブルHDD、「LHD-PBC」シリーズを発表。高さ70cmからの落下試験を実施し、これに合格した構造の製品を「耐衝撃HDD」と銘打って売り出したのだ。

●耐衝撃ポータブルHDD登場
「落ちても壊れない」耐衝撃HDDの先鞭をつけたのはロジテック。ユーザーの心をつかみ、一気にシェアを伸ばした。写真は、その初代製品のパッケージ

 業界の常識からすれば無謀とも思える「耐衝撃HDD」。しかし、これが大ヒットした。ユーザーの圧倒的な支持を集め、ポータブルHDD市場で同社はシェアを一気に伸ばしたのだ。

 そうとなればライバルメーカーであるバッファローやアイ・オー・データ機器も黙ってはいられない。そのシェアを奪還すべく、相次ぎ「耐衝撃HDD」戦線に参入し、以来「何cmの高さから落としても壊れなかったか」を競うし烈な争いが続いている(下の表)。その高さは70cmに始まり、75cm、80cm、90cm、1mと、次第にヒートアップしているのだ。

●ポータブルHDDの落下試験競争
製品発表日 メーカー 落下の高さ
2月18日 ロジテック 70cm
7月6日 バッファロー 75cm
9月28日 アイ・オー・データ機器 80cm
10月25日 ロジテック 90cm
11月16日 バッファロー 1m
各社がポータブルHDDの落下試験競争を始めた。試験の方法は、各社ともロジテックのやり方を踏襲。製品のそれぞれの角や面、辺から落としてみる


ユーザーの不安を払拭せよ

 ポータブルHDD市場は、他のHDD製品同様「1か月に数回、値段が下がることもある」(ロジテック)ほど価格競争が激しく、少しでも差別化を図ろうと各社は、小ささや軽さ、デザインなどを競ってきた。しかし、決め手が見つからずに模索が続く中、ロジテックでは「落として壊してしまう不安を払拭するのが最大のニーズ」(同社営業部営業課課長代理の六波羅恵氏)だと考えたという。

 もっとも、どの「耐衝撃HDD」も、特別、衝撃に強いドライブを内蔵している訳ではない。例えばロジテックでは内蔵ドライブとケースの間に衝撃を吸収する素材を挟むなど、各社とも衝撃が直接伝わらないように工夫をして、耐衝撃性を高めているのだ(下図)。

●各社が発売した「耐衝撃ポータブルHDD」
ロジテックの場合 バッファローの場合 アイ・オー・データ機器の場合
写真は「LHD-PBD40U2SV」。5mm角程度の衝撃吸収素材をHDドライブの角などに取り付けている 写真は「HD-PHG40U2/UC」。ロジテック同様、衝撃吸収素材をHDドライブの角などに取り付けている 写真は「HDP-U80」。シリコンの枠を製品本体に取り付けて、内側の177個の突起で衝撃を吸収する

上図で紹介した耐衝撃HDD。左からロジテック、バッファロー、アイ・オー・データ機器の製品。いずれも衝撃が内蔵ドライブに直接伝わらないように工夫している

 実際、各社は耐衝撃HDDに関して、自社の落下試験をクリアした製品としており、「その高さから落としても絶対に壊れない」と保証している訳ではない。ただ、「わざと落とすユーザーはおらず、この件でクレームが来たことはない」と言う。


広がる「耐衝撃」製品

 「耐衝撃」は製品市場を広げ、「価格競争の若干の歯止めにもなっている」(ロジテックの六波羅氏)。各社「むやみな高さ競争は意味がない」(バッファローストレージ事業部マーケティンググループの白水暁氏)と話すが、「胸ポケットの高さ程度の120cmぐらいまでは可能性がある」(アイ・オー・データ機器ネットワーク&ソリューションユニット企画グループ主任の北村泰紀氏)といった意見もある。

 ロジテックは12月1日、「横転しても壊れない」据え付け型の耐衝撃HDDを発表した。アイ・オー・データ機器も同様の製品や物が当たった衝撃に耐えられる製品を検討中。「耐衝撃」競争は、対象を広げつつ、しばらく続きそうだ。(服部 彩子=日経パソコン)