アメリカの9.15リーマンショック、日本の3.11東日本大震災、今現在も進行中の欧州危機──こうした世界経済を揺るがす事象“以降”の不安定な時代に、明確になってきたのが、価値観の変化だ。資本主義は経済の一段階で、これからは資本主義以降の新たな経済を構築し、生活様式を考え直すべき時代になってきたという声も多く聞かれる。

 そんな“以降”の社会で、我々はどのように生きていくべきか。これを分かりやすく説く本が、現在数多く出されている。テーマはお金との付き合い方や使い方。

 こうした書籍の中から、ビジネスパーソンにとって有益な作品を、三省堂書店東京駅一番街店店長の後藤俊介さんに厳選してもらった。

この時代を生き抜くための術をやや大局的に語る『帝国の時代をどう生きるべきか』

佐藤 優[著]・角川書店[刊]・760円

 著者は、ご存じの方も多いと思うが、元外務省主任分析官にして作家。2002年に背任容疑で逮捕、起訴され2009年に有罪判決を受けたことでも世間を驚かせたが、次々と上梓される著書に衝撃を受けた人も少なくないだろう。

 「知識を教養へ、教養を叡智へ」というサブタイトルを持つこの『帝国の時代をどう生きるべきか』の裏表紙の帯には、「現下、世界は新・帝国主義体制である!」「米露中はじめ、経済では保護主義的傾向が増し、権益のブロック化が志向される。」「では、国家機能を強化するにはどうすれば良いのか?」「我々は、厳しいこの世界をどう生きればよいのか?」という言葉が綴られている。「第I部 理論編」で新自由主義や帝国主義について言及し、「第II部 実践編」で今世界で何が起きているのかの分析をしている体裁だ。“現場で腕をふるえる知識人”となる道を示しているようだ。

 後藤さん:「元外交官でロシア情勢に精通している著者は、現代を『新・帝国主義』と位置づけ、この時代を生き抜くための術をやや大局的に語っている」。

 宇野経済学の知識があると、理解はさらに深まりそうだ。

日本国家の強化に必要な新・帝国主義を説く『人間の叡智』

佐藤 優[著]・文藝春秋[刊]・819円

 日本の置かれた状況は、個人で解決できるレベルのものではない。そんな時代に、どうすれば、日本と自分たちが生き延びられるのか。それを、近い未来を担っていくべき大学生や若いビジネスパーソンにも分かりやすいように、語り下ろしでまとめたのが新書の『人間の叡智』だ。

 「なぜあなたの仕事はつらく、給料は上がらないのか?」「 TPP加盟はほんとうに悪なのか? 」「橋下徹氏にこの国をゆだねるべきか?」 こうした問題を解くキーワードが「新・帝国主義」。いまや米露中、EUと中東は、「新・帝国主義」によって世界を再編し、国家のエゴ剥き出しで戦っている。食うか食われるかの帝国主義的外交ゲームの中で、少なくとも食われないようにすること。その武器になるのが、「人間の叡智」だというのだ。

 具体的で興味深いエピソードを盛り込みながら、「日本国家の強化」が訴えられているところは、著者の佐藤 優氏らしい。

 後藤さん:「今、働いてもなかなか稼ぐことができないのはどうしてなのか?その仕組みをかみ砕いている。7月に刊行されたばかりの新刊。今後売れ行きが伸びていく可能性が高い話題の作品」。

迫り来る大転換に向けて日本の進むべき道を示す『資本主義以降の世界』

中谷巌[著]・徳間書店[刊]・1680円

 中谷巌氏と言えば、米国型資本主義や市場原理主義の急先鋒で、新自由主義を推進してきた人物というイメージが強かった。しかし2008年末に上梓した『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル)でこれを覆すように、新自由主義の思想と、そのマーケット第一主義の結果として現出したグローバル資本主義(米国型金融資本主義)を批判。賛否両論を受けながらも、さらに深く掘り下げ、新自由主義のみならず、資本主義自体の否定にまでいたっているのが『資本主義以降の世界』だ。

 崩壊に向かう世界経済、500年に一度の大変動に我々は何をなすべきか? ユーロ危機、財政破綻、貧困の蔓延、原発事故など、「西洋からアジアへ」──迫り来る大転換に向けて日本の進むべき道を示していると言える。

 後藤さん:「資本主義、新自由主義にどっぷりのっかり仕事をしてきた著者がざんげをしているようにもとれるかもしれない。賛否両論を引き起こした3年前の『資本主義はなぜ自壊したのか』の続編と位置づけられる」。