『ドラゴンクエストVIII』をはじめ、デベロッパーとしての数々の開発実績をてこに、2007年に『レイトン教授と不思議な町』でパブリッシャーとなったレベルファイブ。わずか3年余りで、ゲーム業界で大きな存在感を示すところまで急成長してきた。そんな同社の日野晃博社長に、大きく変化しつつあるゲームマーケットの状況と、そこでの戦略について話を聞いた。

(聞き手:中村 均)

日野晃博(ひの・あきひろ)
「過去の成功体験にとらわれずに、時代に合ったゲームづくりと販売方法を真剣に考えるべき」と語る(画像クリックで拡大)

――業界全体の話ですが、ここ最近は売れるタイトルと売れないものの差が大きく出ているように見受けられます。また、不況の影響についてはどう見ていますか。

日野氏:デベロッパー業については厳しいですね。今は大手のパブリッシャーが社内の開発チームを活用するようになり、社外に発注する割合を減らす傾向が強まっています。となるとデベロッパー専業のところは特にきついですね。我々が所属する九州・福岡のゲーム関連企業の団体GFF(GAME FACTORY'S FRIENDSHIP)のメンバーも、僕らのようにパブリッシャーになったところのほか、一部を除くと皆つらいですよ。日本の平均的なゲーム会社が抱える苦労を持っているんじゃないでしょうか。仕事を見つけるのに苦労して、売り上げを伸ばすのに苦労して、という感じです。

――5年ほど前に日野社長に取材させてもらったときは、「デベロッパーは堅いビジネスだ」というお話でした。

日野氏:そうですね。確かに当時はデベロッパーにはリスクが少ないと思っていました。でも、環境が大きく変わってしまったわけです。今はリスクがないどころか、仕事がない。急になくなってしまった感じですよね。ですから、僕らはいいときにパブリッシャーになったと思っています。

――激変という状況なのですか。

日野氏:ええ。1年前は、そんなに感じていなかったんですよ。でも、最近はゲーム業界も淘汰の時代が始まったと如実にわかります。僕も危機感を持っています。

――全体的にデベロッパー向けの外注案件が減っているんでしょうか。

日野氏:僕らの会社でも、優秀な開発会社でなければ、もはや発注できなくなってきましたからね。昔のデベロッパーは恵まれていたと思います。開発が遅れたとしても「面白いものができたのだから仕方ないね」と追加の予算も出ました。今は、そんなことは通用しなくなっています。もし遅れるようなことになれば、「自分たちでお金を工面して作ってください」という話ですし、資金的な余裕がなければ、その開発会社はつぶれるしかない。

――これは米国を発端とする一連の景気後退が要因なのでしょうか。

日野氏:うーん、原因は何なのでしょうね・・・・・・。この状況が世間の景気が悪化した時期と同時に起きているので、多かれ少なかれ景気の影響を受けているのは間違いないと思います。けれども、ゲーム業界全体が厳しくなっている理由は、景気後退が本質的な原因ではなく、ほかにあるんじゃないかなと思っています。

――その「ほかにある理由」というは?

日野氏:僕らも言える立場ではないかもしれませんが、まずはどこの会社も続編頼みのプロジェクトに傾倒しているということです。新しいものができない――もっと言えば、出そうとしない。その結果、多くの会社が続編あるいは、かつて売れたタイトルのリメイクに頼る消極的なラインアップになっている。でもそれが売れるかというと、ほんの数タイトルを除いて、それも売れないですよね。

――なるほど。

日野氏:ヒットした続編で堅いビジネスを狙ったつもりが、逆に裏目に出ているんじゃないでしょうか。ビッグネームのタイトルであっても、さすがにファンは食傷気味。もはや、数年前の成功の図式は通用しなくなっているんです。なので、いくら作り手側が続編で面白いタイトルをつくったと自己満足していても、数字は伸びていかない。

――まさに今、ゲーム産業は構造変化が求められているわけですね。

日野氏:そうですね。構造変化というよりも、端的に言えば「真剣にゲームを作って、真剣に売ること」を改めて考えなくてはいけない。「過去にこういうプロモーションをしたから、こうすれば今度も売れるはずだ」なんて甘い考え方は通用しないと思いますよ。ここは、根本的に考え直さないと。