『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』という2本柱の人気シリーズ最新作を出荷したスクウェア・エニックスは、世界的な不況が影を落とした2010年3月期であっても、業績は堅調に推移しそうだ。しかし、同社代表取締役社長の和田 洋一氏は「ゲーム産業が産みの苦しみから脱し切れていない」と評する。

 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長でもある同氏に、同社の戦略から日本ゲーム産業が乗り越えるべき課題について聞いた。

(聞き手:渡辺 一正)

和田洋一(わだ・よういち)
「2009年度は、主力タイトルがそろって課題を克服できた総決算の年だった」(画像クリックで拡大)

――2009年度を振り返って、スクウェア・エニックスにとって、どんな年でしたか。

和田氏:スクウェア・エニックスにとって、『ドラゴンクエストIX』(以下:ドラクエIX)、『ファイナルファンタジーXIII』(以下:FFXIII)という主力タイトルをそろって出荷し、それぞれが新しいステージに達した年でした。

 例えば、『ドラクエIX』ではユーザーのコミュニティをどう活性化するかというのがテーマでした。元々、『ドラゴンクエスト』(ドラクエ)はスタンドアローン型のゲームとしてスタートしましたが、当時から学校で友達とドラクエの話題で盛り上がるといった物理的なコミュニティは存在していました。そのコミュニティの効果によってドラクエが売れるといった、原初的なネットワーク型タイトルだったと言えます。

 それを今の時代でどのように表現するかというのが、課題になっていました。その答えが、「すれ違い通信」や、通信相手と一緒に戦いに出たり、追加クエストなどのネット配信などの通信機能でした。本格的なオンラインゲームではないけれども、ユーザーのコミュニティ自体が面白さにつながるという演出ができたと思います。国内出荷は415万本を突破し、シリーズタイトルの国内出荷記録を更新するなど、きちんと結果も残せました。

 『FFXIII』は、欧米での出荷時期を、日本の発売からタイムラグをいかに少なくできるかがテーマでした。これまで日米間で半年、米欧間で半年、合計すると欧州では日本発売から1年間ずれていました。今回は日本が12月、欧米ともに3月に出荷できたのです。これは大進歩でした。

 結果として、シリーズ最速で全世界500万本出荷を突破しました。特に北米では発売後5日間で100万本以上を販売しましたし、欧州でも発売後1週間でFFシリーズ最速の販売を記録しています。

 これまでも地域間のタイムラグを縮める努力をしてきましたが、開発の最終工程に近づくと、徐々にスケジュールが崩れることがありました。FFXIIIは、開発初期こそ思うように進まなかったのですが、最後の1年半はものすごい効率よく開発が進みました。

 ビッグタイトルがきちんと収益を確保し、それぞれの課題を克服できた総決算の年でした。しかし、業界全体のビジネスモデルは変化している過渡期のままです。2009年度はいくつかのネタを仕込みましたが、それが大きく動いた年ではありませんでした。次の時代の芽はあるものの、それが幹になって、花が咲いているわけではないという状態です。

『ドラゴンクエストIX』
「すれ違い通信」とは、ニンテンドーDS同士でデータ通信をすることで、自分のキャラクターやお宝地図などを交換することができる通信機能のこと
(c)2009 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/LEVEL-5/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
機種:ニンテンドーDS
発売日:2009年7月11日
希望小売価格:5980円
※3月に発売した廉価版は2940円

『ファイナルファンタジーXIII』
日本国内では、初の100万本を超えたプレイステーション3タイトルとなった
(c)2009, 2010 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA
機種 : プレイステーション 3/Xbox360(Xbox360は海外のみ)
希望小売価格:9240円
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