新露天、ゆとり空間で客数5割増

 民営化の波のなかでも、しっかりファンをつかみ、元気な公共の宿は多い。成功のポイントはどこにあるのか。

 全国140施設ある国民宿舎。実は20年間、稼働率トップの施設は変わっていない。茨城県日立市の「国民宿舎 鵜の岬」だ。2008年度の稼働率も96.3%を誇り、文字通り予約の取れない宿として有名だ。風光明媚な岬の景観や天然温泉はもちろん、靴を磨いてくれたり、客が帰る際の“お見送り”など、ソフト面の充実が人気の秘密だ。

 休暇村の08年度稼働率ナンバーワンは「休暇村富士」(95.2%)。ここの売りは、何といっても雄大な富士山を間近に見られる抜群の立地。強力なセールスポイントといえよう。さらに、地元の旬の食材や郷土料理をふんだんに盛り込んだ夕食バイキングも好評だ。

 こうした“不動の人気宿”以外の稼働率を見ると、やはり、リニューアルをして“進化”した施設の数字が跳ね上がっている。

 休暇村南伊豆は08年7月に旧施設の2棟を取り壊し、その跡地に新館を建設すると同時に、92年築の東館もリニューアルした。リニューアルの総工費は15億円。旧来の休暇村のイメージをくつがえすシンプルモダンなデザインは、「従来からの中高年層に加えて、若い世代にもアピールしていきたい」(休暇村南伊豆)との狙いがある。

 新館は“癒やし”をテーマとし、ゆとりのある空間づくりが特徴。天井が高い広々としたエントランス、ロビーでその特色を真っ先に印象づける。客室数も、94室から76室に減らし、ゆとりのある設計にした。また、つぼ湯などを配した庭園露天風呂、屋上の足湯、マッサージコーナーもある湯上がりラウンジ、エステルームといった、癒やしをもたらす設備・機能も充実。休暇村とは思えない空間になっている。そのほか、休暇村では初めて客室を全室禁煙とし、各フロアに喫煙ルームを設置した。

 リニューアル後の昨年8月~今年3月の宿泊者数は4万4100人と、前年同期より実に54%増に。稼働率も79.6%から92.1%へと大幅にアップしている。

 こうした施設の充実は、今後、激しさを増す競争を生き残るのに必要な条件になるだろう。しかし、鵜の岬の例でも明らかなように、ハード面だけの充実では十分ではない。

 国民宿舎 五箇山荘では、施設のリニューアルに伴って、サービスの見直しも始めた。施設の魅力を生かすには、きめ細かな接客が重要と考え、プロのホテルマンやマナー講師を招いての従業員研修に力を入れ、サービスレベルの向上を図っているという。

 限られた予算のなかでハードとソフト両面をいかに充実させていくか。景観、料理、独自の企画ツアーなど、そこでしか味わえない魅力を明快に打ち出し、「また来たい」と思わせる一手こそが生き残りの条件になる。

すべての客室や大浴場などから富士山を間近に一望できる休暇村富士(画像クリックで拡大)

休暇村能登千里浜は、オリジナルのバスツアーを企画してリピーターをつかんでいる(画像クリックで拡大)