Thinking Power Projectの現行製品は、この写真の通り。左上から、専用ジョッター(机上でなくてもノートに安定して書き込める画板のようなプレート)に装着されたA5横開きのノート「ネーチャー」、その右がB5サイズのノート「メトロポリタン」、さらにその右が、A6縦開きのノート「フューチャー」。左下は世界最小の大学ノート「ナイト・アンド・デイ ディンブル」と、その5冊ホルダー「メモクリップ」、その右が「ナイト・アンド・デイ ディンブル」の専用ケース「ポケッティア」。右下は、「フューチャー」専用カバーの「バック・トゥー」(画像クリックで拡大)

 「Thinking Power Notebook」は、伝統的な大学ノートの細部を現代のツールとして使いやすくリニューアルしたノート。大きな違いは、既存の縦長の大学ノートと違い横長であることだ。

 この商品を生み出しているのは、Thinking Power Projectという組織。組織というと大げさだが、構成メンバーは、文具やモバイル機器などに詳しい富山大学芸術文化学部非常勤講師・竹村譲氏、アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所所長・遠藤諭氏、イラストレーターのYOUCHAN氏、革製品のブランドCOBUのデザイナーである田口泰子氏、携帯電話関連ソフトウェアの開発を行うリュウド(新潟県十日町市)の長澤久吉社長の5人だ。

 商品開発の発端は、竹村譲氏と遠藤諭氏が、長年温めていた理想の大学ノートを作ろうと考えたことだった。二人が目を付けたのは、高品質の大学ノートメーカーとして知られるツバメノート(東京都台東区)。その製品が海外のコンランショップでも売られているツバメノートが、800冊程度からオリジナルノートの製造を請け負うことを知り、「自分たちのためのノート」を作ろうと考えたのだ。

Thinking Power Projectの一人であり、Thinking Power Notebookの総販売元でもある株式会社リュウド代表取締役長澤久吉氏。「当社なら製品在庫を置けるということで製品開発販売が正式に決まりました」(画像クリックで拡大)

 「Thinking Power Notebook」は、まず竹村氏の提案で横開きにすることが決まった。しかも縦長ではなく横長で、左右のページを見開きで使うとかなりワイドになる設計だ。その利点は、Power Point(パワーポイント)などプレゼンツールの下書きに使いやすくなること。また、広々とした画面はマインドマップの作成にも便利で、ノート上でアイデアを展開しやすい。この商品コンセプトは、前回紹介したマルマンのニーモシネ・イマジネーションと同じだ。このように同じタイミングで、同じようなビジネスノートが誕生したのは、はたして偶然だろうか。どうも今、アイデアや企画を練るのには「横画面ノート」が向いている、というトレンドがあるように思えてしまうのだが。


横長の横開きは、短い辺で綴じるためノートの開きが良いというメリットもある。画面も広く使えるのでアイデアを展開するのに向いている。PowerPointの下書きにも便利だ(画像クリックで拡大)

 続いて決まったのは、罫線は入れずに5mmの方眼にすること。そうすることで、基本は横開きノートだが、縦開きにして紙面を縦長にも使えるフレキシビリティを持たせた。

 また、元々、厚いノートをあらかじめ半分の厚さにして使っていた長澤氏は、「プロジェクトごとにノートを切り離して使っていたため、切り離しが簡単にできるのも理想のノートの条件だった」。そのため「Thinking Power Notebook」は、全ページにミシン目が入っており、1枚ずつ切り離せるようになっている。1冊のノートに複数のプロジェクトの事項を書き込んでも、後から切り離して1枚ずつファイリングしたりスキャンしたりすれば、プロジェクトごとにまとめられる。

 切り離さずに使うにしても、ツバメノートは製本が良いので1冊30枚の全60ページが、開きやすく使いやすい。このページ数は、なるべく薄いノートにしたかったという長澤氏の考えによる。ツバメノートの高品位な大学ノート専用紙「ツバメ中性紙フルース」は、30枚60ページが製本可能な最小単位なのだ。

5mm方眼は印刷ではなく水性インクで描かれている。ノートをきれいに切り離せるミシン目が施されている(画像クリックで拡大)

 遠目には普通の大学ノートに見える「Thinking Power Notebook」は、よく見ると表紙に施された窓状の罫線が、実は線画のイラストになっている。これは、「一見普通の大学ノートだが、よく見ると違うデザインというモノにしたいという遠藤さんのアイデアによります」と長澤氏。イラストレーターYOUCHANさんにイラストを依頼。出されたサンプルはA5サイズ用とB5サイズ用の二つだったが、あまりに出来栄えが良く両サイズの商品化が決まったのだという。

 イラストに描かれているのは、どこか懐かしいような感じがする、不思議な未来の風景。中央に描かれた人物の想像が広がったようなイラストは、Thinking Power Notebookの名前にふさわしい。タイトルを入れるための、表紙中央に描かれた横罫線も、YOUCHANさんのフリーハンドの線で、ノート全体に温かみをもたらしている。何も強制しない、自由な発想を支援するノートだということが伝わる、秀逸なデザインだ。

イラストレーターYOUCHANさんによるイラストは、Thinking Power Notebookの理念を表現している(画像クリックで拡大)

 この「Thinking Power Notebook」、A5横サイズの「ネーチャー」が発売後1カ月で初回ロット3000冊を完売。B5横サイズの「メトロポリタン」も、発売後8カ月で5000冊を売るなど好調な売れ行きを見せている。たった3人のこだわりで生み出された「自分たちが使いたいノート」なのだが、思いのほか多くのビジネスパーソンから支持される結果となっている。

 その後、革製品のブランドCOBUのデザイナーである田口泰子氏をメンバーに加えたThinking Power Projectは、A5横サイズの「ネーチャー」専用のジョッターを発売。さらに、世界最小の大学ノートである「ナイト・アンド・デイ ディンブル」と、「ナイト・アンド・デイ ディンブル」専用の革ケース「ポケッティア」も発売した。この7cm×3cm程の大学ノートに高品質の「ツバメ中性紙フルース」を使い、ミシン目付きで製本して商品化するあたりが、「自分たちが欲しいモノを作る」というスタンスで商品を開発できる強みだろう。しかも、それが売れているというのだから大したものだ。

COBUの田口泰子氏による、ネーチャー用のジョッター(6800円)。立ったままでの筆記に便利(画像クリックで拡大)

長澤氏が最初から作りたかったというA6サイズのメモノート「フューチャー」(5冊セット1000円)と専用カバー「バック・トゥー」(5900円)(画像クリックで拡大)

 さらに、長澤氏が個人的に欲しかったというメモノートも商品化されている。A6、30枚60ページの「フューチャー」だ。「背広の胸ポケットに入り、薄くて切り離せるノートは昔から欲しかったのです。今まではA6のノートを切り離しながら使っていました」と長澤氏。そんな「個人の欲望」で作られた商品は、他人にとっても使いやすい。ノートとは、そんな製品であるようだ。「フューチャー」には専用カバー「バック・トゥー」もある。これは、「フューチャー用のカバーだからバック・トゥー」というシャレで命名したもの。今後もさらに新商品を考えているという。