『工場萌え』『団地の見究』などの著者・大山顕さん
「アートな写真集ではなく、ポップなガイドブックが作りたい」

大山顕(おおやま けん)
1972年埼玉県生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒。松下電器産業のシンクタンク部門に勤務の後、フリーライターとして独立。@niftyの「デイリーポータルZ」などに、独自の視点と知識を生かした記事と写真を発表している。著書に『ジャンクション』『工場萌え』(石井哲氏との共著)など。長野修司と組んだ団地の魅力啓蒙ユニット「住宅都市整理公団」では「総裁」と名乗って活動している。
公式サイト:http://danchidanchi.com/
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――団地や工場の写真を撮り始めたのはいつごろですか?

大山:工場の写真は、学生のときの研究が工場のコンバージョンだったので、そのころからですね。団地も、大学卒業する前の年ぐらいから撮っていました。きっかけは別にないんですけど、あるとき急に、「団地をこういうふうに撮って見せたら面白いんじゃないかな」って思いついてやってみたんです。

――そのころから人に見せるのが前提だったんでしょうか?

大山:初めは「自分がちょっと気になるものを、ほかの人にとっても気になるように見せるにはどういう撮り方をしたらいいだろう?」と考えながら撮って、ひとりでニヤニヤしてただけでした。

――最初に写真を発表なさったのはホームページ上ですよね?

大山:今から6年ぐらい前に、「住宅都市整理公団」という団地のホームページを始めました。建築にも写真にもデザインにも興味がない人にこそ見てもらいたいと思ったんですが、そういう人たちに見てもらうには、「エロ」か「お金が儲かる」か「笑える」といった要素が必要。でも、「エロ」と「お金が儲かる」は無理だったので、エンタテインメントを目指しました(笑)。ホームページも本も、基本的にはふざけた作りにしていています。

――「写真本」にかかわられたのは2007年の『工場萌え』が最初ですが、どういう経緯で?

大山:僕と写真を担当した石井哲さん(ブログ「工場萌えな日々」の管理人)に「工場のガイドブックを作りたいのでやってみないか」というお誘いがあったんです。石井さんとはそれより前に、ネットの掲示板を通じて知り合いました。連絡をくれた編集の方は、僕のサイトを見て、「ライターとして文章が書けるし、工場経験が豊富だ」と思ったようです。

――大山さんの写真が使われなかった理由は?

大山:僕が撮っていた工場の写真は発表できないものが多かったんですよ。

――工場の写真集というのはこれまでにもあったんでしょうか、それとも『工場萌え』が初?

大山:写真家がアートとして、世界中の工場や溶鉱炉を撮った写真集はありました。有名なのはドイツのベッヒャー夫妻とかですね。ただ、『工場萌え』は写真集ではなく、ガイドブックなんですよ。工場を見るためのガイドブックはほかにはないです。

――『工場萌え』は写真集という位置付けではないんですね?

大山:その時点で「写真集ではないものを作る」という明確なビジョンがあったわけではありません。ただ、写真集だと安くても3000~4000円しますが、そんな値段で工場や団地の本を買わないでしょう(笑)? 自分の親戚や妹、母親が買ってみようと思わないような値段設定と雰囲気のものを作りたくない、ポップであることが重要だという思いがありましたし、それは今も変わらないですね。

――実際、ガイドブックとして使っている人は多いんでしょうか?

大山:mixiとかWebサイトで見ると、「本を見て行ってきました」っていう人もいますけど、一部でしょうね。写真集的に、見て楽しんでいる人が多いと思いますよ。

『工場萌え』

工場・コンビナートのぐっとくる写真が満載

 キャッチコピーは「工場好きによる工場好きのための、『工業地帯の歩き方』」。ブログ「工場萌えな日々」の管理人・石井哲撮影の工場グラビアは、美しくも迫力満点。大山顕による全国の工場鑑賞スポット案内は読んで楽しく、実用度も高い。巻末には、デートにも使える「工場鑑賞モデルコース」、工場鑑賞の心得や必需品を紹介する「工場鑑賞の基礎知識」も収録。初心者に優しく、上級者にも新しい発見が用意されている一冊だ。

『工場萌え』(写真:石井哲、文:大山顕/東京書籍/価格:1995円)(画像クリックで拡大)

首都圏における工場見学の定番スポット、川崎臨海工業地帯の浮島町エリア(画像クリックで拡大)

『ジャンクション』

ジャンクションを下から見上げ、魅力を再認識

『ジャンクション』(大山顕/メディアファクトリー/価格:1680円)(画像クリックで拡大)

 ジャンクションとは、高速道路の別の路線同士を結んでいる箇所のこと。日本の大動脈である高速道路を連結する交通の要衝「ジャンクション」の写真を集めた「写真本」。巨大建造物としての魅力が伝わる「下から見上げるアングル」で撮影された写真は、これまでジャンクションを意識していなかった人の目にも魅力的に映るはず。ジャンクションを味わうためのポイント、形式などに関する解説、ジャンクションのめぐり方や見学1日モデルコース、全国ジャンクション一覧表など、充実した内容になっている。

北港ジャンクション(大阪市此花区)。阪神高速道路2号淀川左岸線と5号湾岸線の分岐(画像クリックで拡大)

東大阪ジャンクション(東大阪市)。阪神高速と近畿自動車道が交差(画像クリックで拡大)