トマト、ナス、キュウリ、カリフラワー、枝豆…。

 ベランダで野菜を育てる人が増えている。しかも、いわゆる愛好家ではなく、「今年から家庭菜園を始めました」というビギナーが多いという。

 苗はおおむね1本数十円から数百円程度。鉢や土、肥料などを合わせても数千円で一式が揃う。趣味としては手ごろだが、何かと手がかかるのも事実。食欲を満たすだけならスーパーで買ってきたほうがずっと簡単だ。それでも家庭で育てるのにはワケがある。

 一番の理由は食への不信感だ。中国野菜から規定値を超える農薬が検出されたり、冷凍ギョーザ問題があったり、国内メーカーが産地や賞味期限を改ざんしたり…。手作り野菜なら、そういった心配はまずない。

 健康への意識の高まりもブームを後押ししている。今年4月から始まった特定健診(通称メタボ健診)で減量を決意した人は少なくないだろう。野菜はダイエットの定番食材だ。生鮮品として食べるだけではなく、菓子やアルコール飲料などでも「野菜入りはヘルシー」だとして人気を集めている。

 さらに、フードマイレージ(食料の重さに生産地から消費地までの距離を掛け合わせたもの。数値が大きいほど環境負荷が大きいとされている)に対する意識の高まりもある。種苗メーカー大手、サカタのタネの広報宣伝課長・淡野一郎氏は、「自宅で野菜を作る家庭菜園はフードマイレージの究極。しかも、輸送の過程で熟したトマトより、ベランダで完熟させたトマトの方が断然味が良い」という。家庭菜園は安全・ヘルシー・エコというキーワードが3拍子揃ったオイシイ趣味なのだ。