総合提案部門の最優秀賞に輝いた「THE MUSEUM OF THE GLOBE」は、重力からの解放に着眼し、箱に入った展示物が球状に群れをなすという仮想空間ならではの構造を持つ作品だ。

1957年生まれの河邑石水氏と71年生まれの寺本勉氏の共同制作。河邑氏は建築、インダストリアル系のグラフィックやアニメーションの制作を手がける事務所を主宰。図は2枚組の作品の1枚(画像クリックで拡大)

 「視覚的なモニュメントとして、突出したデザイン性が感じられた」(水口氏)というように、インパクトの大きい視覚表現に審査委員が注目。さらに「収蔵物が音であったりモノであったりイメージであったりという、何でもありの自由さに魅力を感じた」(西沢氏)、「コンテンツの集合が建築・都市空間そのものになるのは、私自身の仮想空間の建築観・都市観と重なる」(渡邉氏)など、コンセプトの面でも高い評価を得たことが最優秀賞獲得の決め手になった。

 最終選考に残った作品のうちの4点を佳作として選出した。「Third Life ~ANOTHER SECOND LIFE~」は、21世紀の生活は現在そのものというコンセプトに基づき、現在の地球全体を博物館に見立てた。「Google Earthの世界を浮遊できるイメージ。実現する可能性が十分にあり、あらゆるアーカイブは、このような情報アーキテクトの下に統合されていくだろう」(水口氏)というように、シンプルさと壮大さを兼ね備えたコンセプトが共感を集めた。

日本工学院八王子専門学校の学生4人のチームによる。図は2枚組の作品の1枚(画像クリックで拡大)

 佳作のうち2点は、物体の群れが空間を形づくるという点で共通する。「ごみの山か、あるいは、夢の島か」は、あふれかえる情報と情報のすき間に人間が存在する風景をイメージ。「モノしかないというシンプルさに引かれた」(西沢氏)。「discuscape ~discussions change the landscape~」では、人々の議論が空間を形づくる。「話題がオブジェクトとなって場に現れるのは、実空間の物理に束縛されない仮想空間の本質をうまくとらえている」(渡邉氏)というように、ネット上のコミュニケーションを空間表現に取り込む発想が評価の決め手になった。

1982年生まれの関本哲也氏の作品は、審査委員長の高い評価を得た。図は2枚組の作品の1枚(画像クリックで拡大)


1981年生まれの松岡康友氏を代表とする竹中工務店4人のチーム。図は2枚組の作品の1枚(画像クリックで拡大)

 「plusfive,50,217,26」は、ストーリー仕立てで描かれたプレゼンテーションの完成度で注目を集めた。人間の「知」を収集して現在の姿を投影する構築物は、誰もが一度訪れてみたい気持ちになるはずだ。「とらえどころのない風景や体験の提示は、仮想空間の一つの有り様ではないか」(磯氏)と、似たものになりがちな仮想世界に新しい雰囲気を与えている点が、最後の局面まで残る理由になった。

代表の北川巧氏は1977年生まれ。30代の3人からなるチームだ。図は2枚組の作品の1枚(画像クリックで拡大)

 後編では単独施設部門を紹介する。

(乗越 政行=プラスワンデジタル)