タミフルは2800万人分備蓄。しかし新型には効きにくい可能性も

 では、新型インフルエンザの脅威から身を守る術はあるのだろうか。まずは治療薬だ。通常のインフルエンザにも使われる治療薬「タミフル」を、国や都道府県は合計2800万人分を備蓄している。だが、「現状ではH5N1型鳥インフルエンザの人の発症例に、タミフル投与はあまり効果をあげていない。もちろん、新型インフルエンザになった段階でも効果があるという保証はない」(国立感染症研究所・感染情報センター、谷口清州第一室長)。

抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」。個人が直接薬局などに行って購入することはできず、医療機関で医師の診察を受け、処方箋を交付してもらう必要がある(画像クリックで拡大)

 タミフルが効かない耐性ウイルスにも効果のある治療薬「リレンザ」もあるが、こちらの備蓄は今のところ135万人分であり、国が行動計画で想定する国内の患者数3200万人には遠く及ばない。朗報もなくはない。H5N1型鳥インフルエンザに対する効果が動物実験で確認された新薬「T-705」が、臨床試験の最中で2009年中には発売されそうだ。

抗インフルエンザウイルス剤「リレンザ」。経口投与ではなく、吸入式の薬。タミフルと同様に医師の処方箋が必要(画像クリックで拡大)

 新型発生に備えるという点ではワクチンも忘れてならない存在。H5N1型鳥インフルエンザ感染者のウイルスから作られた「プレパンデミックワクチン」1000万人分を国で備蓄しており、さらに異なるウイルス株のワクチンを追加して備蓄する予定だ。しかし、医療従事者などに優先的に投与する予定のため、誰でもが医療機関でこのワクチンを投与してもらえるわけではない。一方で、スイスでは政府が700万人を超える全国民分のプレパンデミックワクチンの備蓄を完了した。国によって対応には大きな差があるようだ。

実は「うがい」はほとんど効果なし

 新型インフルエンザに対応したワクチン(パンデミックワクチン)が完成するのは、新型が発生してから最短でも6カ月程度かかるといわれている。だが、そのワクチンも全国民分がすぐに用意できるわけではなく、現状では、全員に行き届くのにかなりの時間がかかる恐れがある。今は、感染しないための方法を知ることが防御策なのだ。

 一般的にインフルエンザから身を守る身近な対策としてよく言われるのが、うがい、マスクの着用、手洗いだ。ところが、従来型も新型も含めてインフルエンザにうがいはほとんど効果がないという。「欧米でインフルエンザ予防にうがいを奨励している国はない。飛沫感染で喉の粘膜に付着したインフルエンザウイルスは、10分ほどで粘膜細胞の中に侵入する。外出して戻ってからうがいをしても遅過ぎる」(外岡所長)という。

 ただし、マスクと手洗いには一定の効果がある。使い捨ての風邪用マスクでも、きちんと顔に密着させて着けていれば、感染者の咳などで飛んで来るウイルスを遮断することができる。また、服や髪の毛、肌などに感染者の咳でウイルスが付いたとしても、極端に恐れる必要はない。個人が検疫用の防護服を着て出歩くようなことにもならないだろう。「新型も含めインフルエンザのウイルスは、衣服や肌に付いても1時間程度しか生きていられない。ウイルスが付着した手を舐めたりしない限りはまず感染しない」(国立感染症研究所・谷口室長)。とはいえ、ドアの取っ手などにウイルスが付着していて知らずにつかみ、その手を無意識に口元に、というケースはありうる。そこで頻繁な手洗いが新型の予防にも効果ありというわけだ。