新型インフルエンザが日本に入ってきた場合、どんな対応がなされるのだろうか。日本も検疫態勢は備えつつある。

患者の隔離や就業制限などの強制的処置が取られる

 例えば、旅客機内に新型インフルエンザ感染を疑われる客がいた場合、機内で発熱などを確認し、機長が空港の検疫所に無線で通報。空港に到着すると防護服で身を固めた検疫官が機内を調べ、発症した恐れのある客は感染症指定医療機関に隔離される。また、同乗者のなかで席が近かった者、同じツアーの客などは最大10日間の潜伏期間の間、病院などの停留施設で感染していないか健康状態を観察する、といった具合だ。

検疫所は、発生地域からの入国者に対して、質問票および診察などにより新型インフルエンザ疑い患者のふるい分けを行い、停留や治療などの措置をとる(画像クリックで拡大)

 しかし、現実には潜伏期間中の感染者が入国した場合は防ぎようがない。「潜伏期間であれば感染者本人も自覚症状がなく、血液や粘膜を調べてもインフルエンザとはわからない。体温も平熱なので、空港に設置されたサーモグラフィーも通過してしまう」と新型インフルエンザに詳しい外岡立人小樽市保健所長は言う。仮に成田空港での検疫をすり抜けた感染者が、地方の自宅に戻ってから発症したとしよう。「新型インフルエンザの情報を正しく把握しているのは感染症指定病院など大病院だけだ。地方のクリニックなどが、新型の感染者を通常のインフルエンザと間違えて処置しているうちに、感染がどんどん広まることも充分に考えられる」(外岡所長)。

 政府はすでに、「新型インフルエンザ対策行動計画」を昨年10月に改定強化している。この行動計画によれば国内で感染が広まった場合、国民に外出や集会の自粛を呼びかけ、必要に応じて発生地域の学校や大規模施設の一時的閉鎖を求めることになる。感染を拡大しないためには、人と人の接触を極力減らし感染リスクを下げる必要があるからだ。

 米国では、国内の感染の拡大(パンデミック)が確認されたなら、大学を含むすべての教育機関を3カ月間、閉鎖することが決まっている。しかし、日本では感染が拡大した場合、どれほどの期間、学校を休校にするかも決まっていない。また、外出自粛なども強制力がない。

 そこで、政府は感染症法と検疫法を法改正し今国会で成立させる予定だ。法改正がなされると新型インフルエンザは、ペストやエボラ出血熱などと同程度の、危険度の高い感染症と位置付けられ、患者の隔離や立ち入り制限、就業制限などの強制的処置も可能になる。国もようやく最悪の場合に備えた対応に本腰を入れ始めたといえよう。