ThinkPad X31シリーズは、IBMのPCラインアップの中では最も軽量なシリーズだ。パッと見は、前モデルのX30とほとんど変わらない。しかし、CPUにPentium Mの採用にともなって、中身は一新されている。剛性感の高いボディと、キーボードの打ちやすさには定評がある。一方で、重量は1.64kgあり、光学ドライブ非内蔵ノートとしては軽いほうではない。多少重くてもいいから、操作性がよく丈夫なモバイルノートがほしいという人向けのマシンといえるだろう。

 X31シリーズは、CPUやOS、ワイヤレス機能などが異なる10モデルから構成される。今回は、その中から今話題のCentrinoに対応した上位機「2672-CBJ」をレビューした。Pentium M 1.4GHzとIEEE 802.11bを組み合わせ、OSにWindows XP Professionalを採用したモデルだ。

●バッテリー性能もパフォーマンスも向上

 新CPUの採用で気になるバッテリー持続時間は、5.5時間。OSとワイヤレス機能が同じモデルで比較すると、従来は4.6時間だったので、2割程度伸びたことになる。本体底面に付ける拡張バッテリーを使えば、約10時間駆動できる。これなら、ACアダプターを使えない場所での長時間作業でも安心だ。

 バッテリー充電時でも、必要以上に本体が熱くならないのは特筆できる。恐らく本体の冷却構造がすぐれているのだろう。また、従来モデルより大型のCPUファンを搭載しているが、起動時などをのぞいてファンがほとんど回らないのもすばらしい。

 もちろん、パフォーマンスも向上している。CPU性能だけでも2割近く高速化しているが、グラフィックスがチップセット内蔵ではなく、ATI MOBILITY RADEONに変更されたのが大きい。実際使ってみても、モバイルノートゆえに性能で妥協したと感じることはない。液晶モニターの見やすさは、可もなく不可もなしという標準的なものだ。

右側
ThinkPad X31(上)では、CPUにPentium Mを採用したことでファンを大きくする必要があった。このため、X30(下)ではファン横に用意していたUSBポートのスペースがなくなり、左側に移された

 “やっと”という感じもするが、USBは2.0に対応した。ただ、X30では、USBポートは右側面と背面に1ポートずつ配置されていたが、CPUファンの大型化の影響で、X31では左側面と背面に変更されている。右側面のポートはマウスをつなぐのに便利だっただけに残念だ。

 USB以外の主なインタフェースは、LANポート、モデム、パラレル、ディスプレイ出力、PCカードスロット、CFカードスロット、ワイヤレスLANなど。配置を含め基本的にはX30を踏襲している。ディスプレイ出力を含め、すべて標準サイズのコネクターを使っているため、特別なケーブルなどは不要だ。

 ラインアップの上位には、LANポートがギガビットイーサに、無線LANが802.11aと11bのデュアルバンドに、加えてブルートゥースも搭載する「2672-JHJ」もある。

左側
背面
パラレルポートや赤外線ポートまで備えており、インタフェースは豊富。USBは2.0になったが、右側から左側に移されたのは残念。なお、USB2.0は背面にも用意されている

●独自ユーティリティの完成度もアップ

 ThinkPadというと、キーボードやボディ剛性に目がいきがちだが、独自のユーティリティソフトも評価が高い。キーボード左上にある「AccessIBM」キーを押すと、詳細なヘルプを見ながら設定できるように工夫されている。完成度の高いツール群なので、ぜひ使ってみてほしい。

 まず紹介したいのが、ネットワーク環境設定ソフトの「IBM Access Connections」。自宅やオフィス、ホットスポットなど、それぞれのネットワーク環境に合わせたプロファイルを作っておき、簡単に切り替えて使うことができる。X31に搭載されたバージョンでは、無線LANから有線LANへといったように、利用中にネットワークアダプターを自動で切り換える設定も可能だ。

使用するネットワークアダプターや、ブラウザーのプロキシの設定などをワンタッチで切り替えられる

起動時にキーボード左上にある「AccessIBM」ボタンを押すと、工場出荷状態に戻したり、ユーザーがバックアップしたときの状態に戻したりできる。OSが起動しなくなった場合でも、簡単に復旧できるところに、仕事向きのThinkPadらしさが出ている

 もう一つは、システムのバックアップと復旧を行う「Rapid Restore」。ハードディスクの予約領域に、複数のシステムイメージをバックアップしておける。最大の魅力は、OSが起動しなくなった状態でも、復旧作業ができること。X31は光学ドライブを内蔵しない。そのため、もしこのツールがなければ、別にシステムのバックアップや復旧のためのストレージを用意しなければならず、非常に面倒な作業になるところだ。

●上位モデルとの比較が悩ましい

 2672-CBJの実売価格は24万4000円。モバイルノートとしては高速なPentium M 1.4GHzを搭載し、ビジネス向けのWindows XP Professionalを採用するとはいえ、スペックが同じようなライバル製品と比べると、少々高く感じるのは否めない。だが、X30の発売時よりは安価になっている。2672-CBJと同等の位置付けのモデルと比べると約3万円安価だ。ThinkPadならではの魅力を評価するなら、決して高い買い物ではない。

 他社製品ではなく、同じX31シリーズの上位モデルとの選択も難しい。たった1万円高いだけの最上位モデルには、ギガビットイーサと、802.11aと11bのデュアルバンド無線LAN、そしてBluetoothが搭載される。ただし、どの技術もまだ発展途上の技術で、普及しているとは言いがたい。将来の機能のために1万円出すかどうかは、微妙なところだろう。

ポインティングデバイスのTrackPointは、熟成の域に達しているが、新型のキャップを開発するなど、使い勝手向上に余念がない。左側のものが従来と同じもので、右側と中央のものが新作。いずれも製品に同こんされている。標準で装着されているのは右側のもの

ThinkPad独特の7段配列キーボード。キーピッチは18.5mmでストロークもあり、打ちやすい。PgUpやHomeなどの特殊キーも独立している。Windowsキーがないのは賛否両論だが、キーカスタマイズユーティリティで、右AltなどをWindowsキーとして使うことも可能だ

(大谷周作)

シリーズ名 ThinkPad X31
型番 2672-BBJ 2672-CBJ 2672-JHJ
実売価格 20万9000円 24万4000円 25万4000円
CPU Pentium M 1.30GHz Pentium M 1.40GHz
メモリー(最大) 256MB(1024MB)
ディスプレイ 12.1型TFT液晶(1024×768ドット、最大約1677万色)
HDD 約20GB 約30GB
無線機能 内蔵無線LAN
(IEEE802.11b)
内蔵無線LAN
(IEEE802.11a/b)、
Bluetooth
有線LAN 10/100BASE-T 10/100/1000BASE-T
インタフェース USB2.0×2、IEEE1394、外部ディスプレイ出力、PCカードスロット(TypeII)、CFカードスロット(TypeII)ヘッドホン出力、マイク入力、ライン入力、パラレル、赤外線ポート
バッテリー駆動時間 最大約5.5時間
外形寸法 273(W)×223(D)×30.2(H)mm
重さ 1.64kg 1.65kg
発売日 3月18日
詳細情報 http://www.ibm.com/jp/pc/
(注)無線LAN、Windows XPを搭載した主にコンシューマ向けモデルのみ