6月30日のApple Musicに続いて、9月3日にはGoogle Play Musicもサービスイン。その直後から使い始めた方は、フリートライアル期間も終わり、そろそろ何らかの断を下さなければならないはず。

 オンデマンド型の定額制音楽配信サービスは、気が付けば国内でも6つのサービスが選べるようになった。同じオンデマンド型でもサービス内容には差があり、ユーザーによっては向き不向きもある。

 そこで各サービスの機能面での違い、他にない特徴から、どんなユーザーに向くのかをまとめてみた。まず、オンデマンド型の何が便利で、どんな機能が用意されているのかを確認しておこう。(この記事は「、Googleが激突!定額制音楽配信サービス、新曲を早く聴くならどれ?」の後編です)

機能の差はレコメンドとクラウド

 オンデマンド型は、曲名やアーティスト名の検索で、聴きたい曲がすぐ聴けるのが利点。ストリーミング再生なので、容量の限られるスマートフォンでも気兼ねなく使える。ただ、好きな曲を探して、気に入ったらプレイリストに登録すればいい。

 その代わり、アーティスト名や曲名など、検索に使えるキーワードを思いつかなければ、宝の持ち腐れ。それにサービス側で数百万曲、数千万曲のライブラリーを用意していても、まだまだ検索にヒットしない曲のほうが多い。気に入った曲が見つけられなければ、気持ちも離れてしまうのも当然だ。そこで各サービスは、ユーザーが気に入りそうなものを、用意しているライブラリーの中から満遍なく聴いてもらえる工夫をしている。

オンデマンド型サービス機能対応一覧
Apple Google KKBOX レコチョク AWA LINE
クラウド機能 ××××
レコメンドラジオ ××
レコメンド
プレイリスト
×
PC対応 アプリWebアプリWeb×(※)Web
Android対応 ×(※)
※対応予定あり

 その一つが「レコメンドプレイリスト」機能だ。これはユーザーの再生傾向などから、嗜好に合ったプレイリストをピックアップするもの。もう一つは、再生中の曲に似たものを再生する「レコメンドラジオ」機能だ。アプリの中では「ステーション」あるいは単に「ラジオ」と呼ばれている。これは時代背景やジャンル、アーティストの関連性から、それに近い曲を抽出して連続再生するものだ。いずれも、今まで聴き逃していた音楽の発見・再発見のきっかけをつかむ機能として、サービスのカラーを決めるものになっている。

 そして使ってみると便利なのは「クラウド」機能だ。CDからリッピングしたり、ダウンロード購入した曲など、パソコンに保存している音楽ファイルをクラウドにアップロードするもの。配信曲とともにストリーミング再生できるので、スマートフォンにファイルを転送しなくてもいい。どこにいても自宅のライブラリーが聴ける。

 気を付けたいのは、再生環境によって使えないサービスがあること。Apple MusicはAndroidでは使えず、AWAはパソコンでの再生に対応していない。いずれも対応予定としているが、今すぐには使えない。

レコメンド機能が強い「AWA」

 次に各サービスの特徴を個別に見ていこう。

 エイベックス・デジタルが楽曲調達、サイバーエージェントがアプリケーションなどの開発をしている。サービスの力点は2つある。1つは、今まで国内のサービスが弱かった、ラジオ機能やプレイリストのレコメンド機能を前面に押し出している点。そしてもう1つは自分のプレイリストを公開したり、似たような趣味のフォローしてプレイリスト更新の通知を受けるなど、アプリ内でプレイリストの共有ができる設計になっている点だ。

 音楽を検索する、面白いと思ったらプレイリストに登録する、再生中の曲からラジオ機能を起動し、似た背景を持つ曲を探すという一連の流れは非常にスムーズ。自分が知らないアーティスト、聴いてこなかったジャンルの曲を片っ端から再生し、気に入った曲をプレイリストに入れながら、次の音楽探索のメモ代わりにするというような、能動的な使い方、リスナーに向いている。

 惜しいのは、現時点でパソコンでの再生には対応していないことだろう。

サービス開始:2015年5月27日
運営企業:エイベックス、サイバーエージェント
月額料金(税込み):スタンダード 960円、ライト360円 (オンデマンド再生のできないラジオ型。登録から90日間は無料でスタンダードの全機能が使える)
AWA
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C-POPも聴ける「KKBOX」

 台湾発のサービスで、本国では「知らない人はいない」と言われるほどの知名度がある。現在はKDDIの子会社で、2011年6月に「LISMO unlimited powered by レコチョク」というサービス名で、レコチョクの提供音源をKKBOXのシステムに載せて配信していた。現在のサービスは、それを本国の名称に戻し、本国のサービスに準じた内容としたものだ。

 配信曲数は1200万曲と、他に比べて桁違いに多く、国内の他サービスが配信するメジャー系の洋楽・邦楽に加え、海外のインディーズや、C-POPのようなアジア圏の音源もラインアップする。日本国内でアジア圏の音源が聴ける、貴重なサービスと言える。

 クラウド機能を持たないだけで、機能的にはAppleやGoogleのサービスと同等。長くサービスしていることから、アプリのデザインもこなれていて使いやすい。

サービス開始:2004年(日本国内では2013年6月に現サービスとしてスタート)
運営企業:KDDI
月額料金(税込み):980円 (auかんたん決済は登録から1カ月間無料)
KKBOX
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  時間制・学割で安い「LINE MUSIC」

 SNSのLINEをプラットフォームとする、LINEのアカウントを持っているユーザー向けのサービス。LINEでつながっている友達やグループ内で、曲やプレイリストをシェアできるのが特徴。そのようにレコメンドは他人から受けるという思想で、一切のレコメンド機能を持たない。そのためメニューはシンプルで使いやすい。

 若年層向けのサービスらしく、実質的な割引プランを設定しているのも他にない特徴。通常月額料金は1080円の他に、500円で1カ月20時間まで聴ける時間制チケットも用意されている。新曲やシェアされた曲をちょいちょい聴く程度なら、これで十分。もし制限時間を超えてしまっても、10時間分の追加チケットが300円で買える。さらに、それぞれの料金には学割の設定があり、学生にはおすすめのサービスだ。

 難点は、洋楽旧譜のバリエーションが若干薄いこと。年齢の高いマニア層にはお勧めしにくいが、LINEユーザー向けのサービスとしては問題ないだろう。

サービス開始日:2015年6月11日
運営企業:LINE、ソニー・ミュージックエンタテインメント、エイベックス、ユニバーサルミュージック
月額料金(税込み):1080円、あるいは20時間まで500円(いずれも学割あり)
LINE MUSIC
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チケットは、LINEの有料コンテンツを販売する「LINE STORE」で購入できる。
学割を適用すると30日間チケットは1080円→600円、時間制チケットは500円→300円、時間制追加チケットは300円→200円
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アーティスト限定で安い「レコチョクBEST」

 携帯機器向けの配信サービスを手掛けるレコチョクのサービス。日本の音楽配信の老舗だけあって、国内のレーベルで配信されている音源は、ほぼ確実に聴ける。

 「音楽は記憶だ」のキャッチコピー通り、10代のころに聴いた名曲など、時代やテーマ別のプレイリストが充実。パソコンで使う場合に限られるが、プレイリストやアルバムの連続再生、シャッフル再生に対応しているので、BGM代わりに使っても音が途切れることがない。ただ、レコメンド機能は週1回で更新される「おすすめBEST」というプレイリストだけで、この点では他のサービスと比べるとやや弱い。

 他にない設定としては「アーティストプラン」もある。月額324円(税込)を払えば、特定のアーティストやレーベルのみ聴き放題になるというもの。試しに松田聖子のアーティストプランを契約してみたところ、コンピレーションやカラオケバージョンも含め、全部で1254曲が再生できる状態に。ヒット曲は当然として、アルバム収録曲も網羅されている。もし、アーティストプランの中に、集中してまとめ聴きしたいアーティストがラインアップされているなら、かなりお得なプランだ。

サービス開始:2013年3月4日
運営企業:レコチョク
月額料金(税込):980円(クレジットカード決済登録で最大1カ月無料)
レコチョクBEST
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アーティストプランで聴けるのは、ゆず、氷室京介、コブクロ、GLAY、JUJU、松田聖子、加藤ミリヤ、中島美嘉、中森明菜、TM NETWORK、レディー・ガガ、ローリング・ストーンズ、クイーン、美空ひばり、そしてunBORDE(アンボルデ)レーベル所属の16組のセット(きゃりーぱみゅぱみゅ、CAPSULE、tofubeats、神聖かまってちゃん、THE PRIVATES、RIP SLYME、ゲスの極み乙女。など)。アーティストプランの登録は3アーティストまで
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膨大なライブラリーと検索性の「Google Play Music」

 Google Play Musicは3500万曲という膨大なライブラリーが魅力。Googleの検索でもおなじみ「もしかして:」という表示で、近いキーワードによる検索結果を表示するなど、多少ラフに入力しても目的の曲にたどり着ける検索性はさすが。レコメンドラジオで関連曲を抽出する精度の高さも、やはり「検索大手」は違うと言うしかない。

 Appleの対抗サービスとして、iTunesユーザーの取り込みにも抜かりはなく、専用のアプリの「ミュージックマネージャー」、あるいはChrome版Google Play Musicを使うことで、iTunesのライブラリーをクラウドへアップロードできる。iTunes Storeのような他のストアでダウンロード購入した曲も再生できるし、音源が追加された場合も、その都度アップロードされる。

サービス開始:2011年11月16日(日本国内では2015年9月3日)
運営企業: Google
月額料金(税込み):980円 (登録から30日間のフリートライアル期間あり)
Google Play Music
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iTunesユーザーにおすすめ「Apple Music」

 Apple Musicの良さは、iTunesを使っているユーザーなら、自分のライブラリーに「数百万曲」を追加する感覚で使えるところ。パソコンの音楽ライブラリーは、自動的に「iCloudミュージック」へアップロードされ、配信曲とともにシームレスに再生できる。そして、もし家族で使うなら、1カ月1480円で6人まで共用できるファミリープランが使える点だ。これを使えば、一人あたりの価格はどのサービスよりも安い。

 サービス開始直後は音源を供給していなかったソニー・ミュージックも、10月に入って供給をスタート。これでメジャーどころの音源で比べる限り、ライブラリーに物足りなさを感じることもなくなった。気になるのは、Apple Music開始前の機能を引き継いだせいか、アプリの構成が複雑になってしまったこと。特にApple Musicから使いはじめるユーザーには分かりにくいぶ部があるかもも知れない。

サービス開始:2015年6月30日
運営企業: アップル
月額料金(税込み):個人: 980円、ファミリー:1480円(登録から3カ月間のフリートライアル期間あり)
Apple Music
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クラウド不要なら国内サービス、音楽の発見にはGoogle

 さて、どれを選ぶべきだろう。聴きたい音楽や、再生環境、サービスの機能面で絞り込んでいくと、いくつか落とし所がある。まず、スマートフォンやタブレットでの再生がメインで、パソコンにライブラリーを持っていないから、クラウド機能はいらない。ならばAppleやGoogleのサービスを外して考えてもいい。

 パソコンで聴くつもりがないなら、AWAがベスト。アプリの使いやすさは、6サービス中一番だと感じた。パソコンでも聴きたいならKKBOX。AppleやGoogleのサービスからクラウド機能を抜いただけのような内容で、ライブラリーの豊富さもGoogleに次ぐ。

 邦楽のメジャーどころを聴きたいのであればレコチョクBESTがいい。配信曲に取りこぼしがないので安心して使える。もしLINEを使っているJ-POPリスナーなら、LINE MUSICだろう。何より安く使えるし、専門家のレコメンドより、友達が紹介してくれた曲のほうがグッと来ることも多い。

 そしてクラウド機能に期待するのであれば、Apple MusicとGoogle Play Musicになる。機能面で大きな差はないが、印象を分けているのがレコメンド機能だ。

 Appleはエキスパートが選曲したと言われるプレイリストを表示するのがウリで、レコメンドとしてハズレもない。ただ、何十年も前から聴いていて、つい最近も再生したアーティストを「はじめての◯◯◯◯」などと度々オススメしてくるのには閉口してしまう。

こんな形でデビュー当時から聴いているバンドをレコメンドされると苦笑いするしかない
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 Google Play Musicは関連するラジオやアルバムをピックアップするのだが、まずこの精度が侮れない。単にユーザーがまだリーチしていないアーティストを選んでいるだけとしても、音楽の発見、再発見には役に立つ。そもそもライブラリーに収録曲の桁が違うこともあり、未聴音源が出現する確率も高い。残念ながらこの点で、AppleとGoogleは大きく差がついてしまっている。

 ただ、すでにiTunesに慣れているなら、Apple Musicを選んだほうが楽に使える。それにiOS機器なら再生操作にSiriが使えるのも楽しい。しかし、よりディープな音楽探索を望むのなら、Google Play Musicのほうが得るものはあるかもしれない。

(文/四本淑三)