俳優の今井雅之氏が2015年5月、大腸がんで亡くなったことは記憶に新しい。最初に不調を感じたときには「腸の風邪」と診断され、がんと判明したときには末期だったという経過にがん検診の難しさを痛感し、あらためて不安を感じた人も多いのではないだろうか。

 そもそも日本ではがん検診の受診率が低い。欧米の検診受診率が70%以上であるのに対し、日本では(職場や個人で受診する検診を含めても)30%台(グラフ1参照)。国では「がん対策推進基本計画」で受診率50%(胃、肺、大腸は40%)の目標を掲げているが、なかなか達成できない状況だ。理由はさまざまあるが、がんの部位ごとに異なる検査が必要なことや、検査に苦痛、わずらわしさが伴うこと、時間がかかることなどが挙げられる。

 しかし最近、面倒な検査なしに血液や尿などからがんや認知症などの兆候を読み取る技術が次々に開発され、実用化されている(関連記事「1万円でがん遺伝子検査、病気のなりやすさが明らかに」)。なかでも、それをいち早く実用化しているのが味の素だ。 

 同社は採血のみで複数のがんの罹患リスクを評価でき、早期がんの発見にも対応している「アミノインデックス がんリスクスクリーニング」(以下AICS)を開発。2011年から同サービスの発売を開始している。薬事法の規定により広告宣伝は一切できないにもかかわらず、その手軽さから徐々に全国的に浸透しつつあり、2011年4月の事業開始から延べ約10万人が受診。また同検査を導入する施設も毎月10~15施設のペースで増えていて、2015年7月末時点で全国960施設が導入している。多くは人間ドックのコースのオプションに採用されているそうだ。

 なぜ味の素ががん検診サービスに乗り出したのか。どのようにして血液検査だけで複数のがんのリスクが判定できるのだろうか。

【グラフ1】2013年に実施された「国民生活基礎調査」によると、男性の胃がん、肺がん、大腸がん検診の受診率は4割程度、女性は乳がん、子宮頸がん検診を含めた5つのがん検診の受診率が3~4割台。特に子宮頸がん、乳がんについては、検診受診率が低いという(胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんは40歳以上、子宮頸がんは20歳以上を対象。子宮頸がん検診と乳がん検診は2年に1度の受診が勧奨されているため、2012年と2013年の検診受診者数の合計に基づく検診受診率
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AICSがカバーする検査項目。従来は男性が4種、女性が5種のがん(子宮がん・卵巣がんについては区別できない)だったが、8月から膵臓がん検査が新たに加わった
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