最近、肩の周りがだるい、腕が上がりにくいという症状に心当たりのある人は要注意だ。昔は野球やバレーボールなどのスポーツをやっている人に多く見られたり、ガングリオン(ゼリー状の物質が詰まった腫瘤)や骨棘(こっきょく)の形成により神経が圧迫されることにより発症すると言われていた症状が、最近はビジネスパーソンに増えているという。

 「姿勢が悪くなっているために起こる。特に“巻き肩”になっている人が多い」と話すのは、KIZUカイロプラクティック代表院長の木津直昭氏だ。

 巻き肩とは、肩が前に出てさらに内側にねじれた状態のこと。巻き肩が変に固定されると肩甲上神経絞扼性障害(けんこうじょうしんけいこうやくせいしょうがい)という障害が起きやすいのだそうだ。

 「肩甲上神経とは、首から出て肩の筋肉(腱板=けんばん)へつながる末梢神経。腕を上げる動作や腕を外に広げる動作などに必要な棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)を支配している。この末梢神経は肩と腕をつなぐトンネル(=上肩甲横じん帯)を通るが、巻き肩になっていると肩甲骨が前方に巻き込んでしまうため、トンネル部分がねじれ、神経が圧迫されて引き伸ばされたり、変形してしまう」(木津院長)。これによって筋肉が弱化したり麻痺して肩が上がらなくなることもあるという。「放っておくと寝返りできないほど強く痛み、肩周りがしびれたり、頭痛などを併発することもある」(木津院長)

 四十肩、五十肩に症状が似ているが、これらは「凍結肩」とも呼ばれ、肩を挙げるときに必要な筋肉群の腱が固まって起こるもの。肩を動かす機会が少なかったり、老化によって生じるが、ほとんどが1年ほどで良くなっていく。それに対して巻き肩から起きる神経症状は、筋肉を支配する末梢神経が圧迫、引き伸ばされるなどで生じる症状のため、原因である巻き肩を治さないと症状は改善されない。四十肩、五十肩だと思っていたが、強い痛みが長期間続いている場合は、巻き肩が原因による障害の可能性もあるので専門医に診てもらうほうがいいだろう。

 ところで、なぜ最近になってビジネスパーソンにこの症状が増えているのだろうか。

 「巻き肩になる原因はスマホやタブレット、パソコンの影響があると考えられる。特に長時間座った状態で、うつ向き気味で作業しているとなりやすい」(木津院長)。

 長時間顔を下に向けた状態のままスマホやタブレットに熱中していると、頭の重さを支えるために体は前傾姿勢になり、肩甲骨が開いて胸筋が圧迫される。また首の後ろ側が強張り、コリを感じるようになる。「例えるなら弓矢を張った状態にしてその張りに体を任せているだけの状態。筋肉を使っていないので、インナーマッスルが衰えて姿勢が悪くなる」(木津院長)

スマホに夢中になっている人によくある姿勢。猫背になり、頭が下に向いていることで背中側に負担がかかる
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 肩周辺の筋肉は大きく2種類に分けられる。肩を触った時に触れられる、一番外側にある大きな筋肉、三角筋はアウターマッスルと呼ばれる。これに対して腱板(けんばん)と呼ばれる内側にある細い筋肉をインナーマッスルと呼ぶ。インナーマッスルは何層にも重なっており、肩と腕をつないで円滑に動かせるように安定させる役割があり、深部で関節を支える重要な部分だ。肩関節の動きはこのアウターマッスルとインナーマッスルのバランスで保たれている。しかし、猫背になると大きく動かしやすいアウターマッスルだけに頼ってしまい、インナーマッスルを使わなくなってしまう。(図参照)

肩の構造。小さなインナーマッスルと大きなアウターマッスルのバランスで姿勢が保たれている
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 「現代人は大きな筋肉に頼りがちで、インナーマッスルを動かしていない人が多い。なぜかというとその方がラクだからだ。これが姿勢を悪くしている原因のひとつ。インナーマッスルを使えるようになると姿勢も良くなり、症状も緩和され、巻き肩の改善にもつながる」(木津先生)