11月25日に噴火した阿蘇山の噴煙の影響で、旅客機の欠航や行き先変更などが発生している。最近の旅客機は、揺れは覚悟しなくてはならないものの、かなりの悪天候でも飛ばなくなることはまれなのに、火山の噴火だと、なぜ大きな影響が出るのだろう。これは、火山から噴出する火山灰が機体や計器、さらにはジェットエンジンにも悪い影響を与え、最悪の場合、エンジンが停止してしまうケースが考えられるからだ。

大量の空気を吸い込むジェットエンジンにとって、火山灰は大敵

 現代の旅客機はそのほとんどがジェット機と考えていいだろう。プロペラ機も、ターボプロップと呼ばれるジェットエンジンと同様の構造を持つガスタービンエンジンを使っている。タービンの回転を取り出し、ギアで減速してプロペラを回しているのだ。自動車のエンジンのようなレシプロエンジンなら、空気を吸い込む部分にフィルターをつければ、火山灰を吸い込みにくくできるのだが、ジェットエンジンの場合は無理。

 有名な航空事故の例がある。1982年、インドネシア上空を飛行していたボーイング747ジャンボジェットのエンジンが4発とも停止してしまったのだ。また、1989年には、アンカレッジ上空を飛行中の同じくボーイング747が火山灰の雲の中を飛行し、全4発のエンジンが停止した。幸いなことに両方のケースとも、機体を降下させてエンジンの再始動に成功し、無事に着陸することができたのだが、この原因を作り出したのが火山灰だった。

 火山が噴火すると、大量の火山灰が噴き上げられる。この火山灰が漂っている中に機体が突っ込むと、機体にぶつかり測定器の穴をふさいだり、ジェットエンジンに吸い込まれて問題をおこす。火山灰は、鉱物やガラス状の細かい粒で、例えば操縦席の前のガラスにたくさんぶつかるとすりガラスのようになって視界が悪くなる。同様に機体の表面やジェットエンジンのファンにぶつかって表面を傷める。大気速度を測定するピトー管という測定器の穴がつまると、飛行速度がきちんと測定できなくなる。

 そうした問題だけでなく、ジェットエンジンに吸い込まれた火山灰は、千数百度にもなる燃焼室の熱で溶けてしまい燃焼室やその先にあるタービンに付着する。付着するだけでも効率は悪くなるのだが、タービンを冷却するために開けられている細かい穴を塞ぐ。結果的にタービンの温度が上がりすぎて、エンジンが止まってしまうような事態も発生するわけだ。

 実際にエンジン停止などの事故に至らなくても、火山灰の中を飛ぶと機体やジェットエンジンの点検と補修にとてもお金がかかってしまう。こうしたこともあって、飛行ルートに火山灰が浮遊している可能性がある場合、欠航や行き先変更といった対応になることが多いのだ。

 ところで、火山灰による事故を防ぐために、「航空路火山灰情報センター(Volcanic Ash Advisory Center)」という機関が世界のあちこちに設置されている。日本では、気象庁が担当しており東京にある。旅客機の運行に影響する可能性がある火山灰の情報を航空会社などに提供している。

(文/中井法之=日経トレンディネット)

■変更履歴
阿蘇山が噴火を始めた日を「11月26日」と記載していたのは誤りです。正しくは「11月25日」でした。お詫びして訂正します。