「やっぱりラガーはコクがある」「ピルスナーはキレがあっておいしい」――。ビールの良さを表すためによく出てくる言葉だ。しかし世の中で「ラガー」と呼ばれているビールを飲んでみるとスッキリしている気がしたり、「ピルスナーの原点」と呼ばれているビールを飲んでみると深みのある甘味があり、しっかりした飲み口を感じたりする。さらにここに「エール」なんて出てくると、もうよくわからなくなってくる。「クラフトビール」に注目が集まっているいま、ビールの分類についておさらいしておこう。

基本は「ラガー」「エール」「自然発酵」の3つだけ

 「ラガー」「ピルスナー」「エール」のいずれも、ビールの分類を表している言葉だ。ビールは発祥した国・地域や製法によって実にさまざまな特徴を持っている。分類法によっては150を超えるカテゴリーを使っているものもある。しかしそこには、ある程度のルールがある。このルールを押さえておけば、冒頭のような混乱を起こすことはまずなくなる。

 ルールはさほど難しくない。まずは「ラガー」「エール」「自然発酵」の3つに分ける。「発酵」という言葉を使っているように、これは発酵様式・酵母の種類で分類している。つまり、ラガー酵母、エール酵母、自然酵母を使っているのだ(エールにはヴァイツェン酵母を用いてつくるヴァイツェンというビールも含む)。日本だけでなく世界中で、消費量が多いのは圧倒的にラガーである。

 ラガーの発酵様式は下面発酵と呼ばれる。発酵が終わるとラガー酵母がタンクの底に沈降することが、下面の名の由来である。比較的低温(10℃前後)で発酵させるのも特徴で、スッキリとした味わいが特徴と言われている。このラガーという大きなカテゴリーの中で細かく分類(スタイルと言う)が行われ、その一つがピルスナーなのだ。さらにピルスナーも細かく分類され、甘味を特徴とするものや苦味を特徴とするものなどに分かれる。ラガーは酵母の種類や発酵様式のことであると知ることが重要だ。

アサヒ スーパードライ:日本で最も知られている銘柄のひとつ。2014年4月、世界で最も権威があるビール審査会と言われている米国「ワールドビアカップ」にて、「インターナショナルスタイルラガー部門」で金賞に輝いた。2000年には「アメリカンスタイルスペシャルティーラガー部門」で銅賞を獲得しており、世界でも認められている優れた銘柄と言える
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 エールの発酵様式は逆に上面発酵と呼ばれる。発酵中に酵母がビールとなる液体(麦汁)の上の方に浮いてきて、液面に酵母の層ができることが名前の由来である。発酵温度は20℃前後で発酵させ、フルーティーで華やかな香りが特徴だと言われている。

バス ペールエール:その名の通り「ペールエール」というスタイルに属す。18世紀後半にイギリスで生まれた。酒販店や飲食店でよく見かけるエールの一つだが、管理が不十分なことが多く、味や香りが不明瞭な印象を持っている人が少なくないかもしれない。しかしなかには管理を徹底してこのビールの魅力を最大限に伝えている飲食店もわずかだがある
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 自然発酵はベルギー発祥で、空気中に漂う野生酵母を使用し、強い酸味を特徴としている。自然発酵に分類されるスタイルは基本的に「ランビック」のみであるが、ここからさらに細かく分類される。日本でも、オンラインショッピング、デパートの酒販コーナー、ベルギービールを専門に出す飲食店などで入手できる。

カンティヨン グース:ベルギーの首都ブリュッセルの南西部を流れるゼナ川周辺のみに生息する野生酵母を取り入れてつくる自然発酵ビール。強烈な酸味とフルーティな香りを特徴としている。「ビールは苦手」と言い張る友達に「変わったシャンパンだ」と言って勧めよう。疲れたときに飲むと背筋が伸びる
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