「2011年7月。米カリフォルニア州サンタクルーズ市で不思議な現象が起こった。犯罪が発生する前に、犯罪現場に警察官が現れるようになったのである」――。筆者はこのような出だしで始まる「ビッグデータ革命」という記事を「日経コンピュータ」の2011年9月15日号に執筆した。それから3年。同市では実際に犯罪発生件数が17%も減少したという。サンタクルーズ市警の挑戦を追った。

写真1●「プレディクティブ・ポリシング」を導入したサンタクルーズ市警
[画像のクリックで拡大表示]

 サンタクルーズ市警は2011年7月から、過去の犯罪発生データに基づいてその日に犯罪が発生しそうな場所や時間帯を予測し、あらかじめ警察官をそれらの場所に派遣することで犯罪を未然に防いだり、犯人を迅速に逮捕したりするという取り組みを始めている(写真1)。筆者は2014年6月、実際にサンタクルーズ市警を取材し、「プレディクティブ・ポリシング(予測警備)」と呼ばれるこれらの取り組みについて詳しく聞く機会を得た。

写真2●サンタクルーズ市警で副署長(Deputy Chief of Police)を務めるスティーブ・クラーク(Steve Clark)氏
[画像のクリックで拡大表示]

 取材に対応してくれたのは、サンタクルーズ市警で副署長(Deputy Chief of Police)を務めるスティーブ・クラーク(Steve Clark)氏(写真2)。クラーク副署長こそが、サンタクルーズ市警にプレディクティブ・ポリシングを導入した立役者だ。

 クラーク副署長がプレディクティブ・ポリシングに興味を持ったのは、2008年のこと。ある雑誌の記事で、サンタクララ大学のジョージ・モラー(George Mohler)博士とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジェフ・ブランティンガム(Jeff Brantingham)博士の二人が、数学的な予測モデルに基づくアルゴリズムによって犯罪を予測する研究をしていることを知ったことがきっかけだった。

 ところがモラー博士らの研究は、「犯罪に関する実際のデータを持っていなかったこと」(クラーク副署長)がネックになっていた。そこでクラーク副署長は、サンタクルーズ市警が保有する犯罪に関するデータをモラー博士らに提供すれば、実際に犯罪発生予測モデルを作り出せるのではないかと考え、彼らと連携することにした。