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 いま、もっとも“遊べる自転車” といえば、このファットバイクをおいてほかにないだろう。もうルックスからして遊び心のカタマリ。「アフロヘアーが似合う唯一のスポーツサイクル」というのは、筆者が勝手に考えた称号である。

 もちろん伊達や酔狂でこんなタイヤを履いているわけではない。

 太いタイヤは細いタイヤに比べ、広い面積で自重を支えることになるため、接地面積あたりの荷重が少なくなる。そのため、一般的な自転車では前に進むことすらままならない軟らかい路面、つまり砂浜や雪道でもスタックせずに走ることができるのだ。雪上車や戦車などに使われる履帯(りたい。ちなみに「キャタピラー」は米国キャタピラー社の商標)や、スノーシューなどと同じ理屈である。

 太いタイヤが原理的に空気圧を低く設定できるのも、自転車離れした走破性を実現するのにひと役買っている。車体が跳ねやすいガタガタの岩場もタイヤが潰れて常に路面を捉えるのでしっかりグリップする。

 また、タイヤというのは内部の空気で路面からの衝撃を吸収する働きもある。タイヤを太くして空気の容量を増やすと……そう、悪路でもタイヤが衝撃を和らげ快適に走れるようになるのだ。ファットバイクでよく使われるタイヤの幅は4インチ。一般的なマウンテンバイクと比べて約2倍となる太さだが、空気の内容量は約4倍にもなる。

ロードやMTBは競技を意識、ファットバイクは遊ぶための自転車

 ここまで話を聞いて、ではなんでロードバイクはあんなにタイヤを細くするのか? と疑問に思う方もいるかもしれない。結論から言うとロードバイクはそもそもロードレース競技のために発展した自転車で、悪路走破性よりも、舗装路での高速性能を重視したから、ということになる。接地面積が小さいタイヤというのは転がり抵抗が少なく、重量も軽いため、加速や高速巡航性に優れているのである。

 つまり現在のロードバイクやMTBが競技(レース)での使用も念頭に置きつつ進化しているのに対し、ファットバイクはとにかく楽しく走るために生まれた純“遊び”自転車といえるだろう。