レスキュー時に感電しないためには

 次に、つくば市消防本部による電気自動車・ハイブリッド車を使ったレスキュー訓練の様子を取材した。こうした電気自動車・ハイブリッド車の事故の場合、レスキュー隊員も感電する恐れがあるため、それに応じた訓練が必要を行っている。しかし実際にハイブリッド車を使ったレスキュー訓練ができる機会はあまりないという。そこで今回、初の試みとして、衝突試験に使われてあとは廃棄するだけになった車両を訓練に有効活用することになった。訓練に使われたのは、トヨタ クラウン ハイブリッド アスリートSだ。

 電気自動車やハイブリッド車には、車種ごとにレスキュー時の取り扱いのマニュアルが用意されていて、これを参考にしてレスキュー作業を行っている。たとえばクラウンハイブリッドの場合、トヨタのWebサイトでマニュアルが公開されている。ハイブリッド車や電気自動車に乗る場合も、万が一に備えてこうした注意事項に目を通しておくほうがよさそうだ。

 このマニュアルによると、ボンネット部分などが“高電圧による感電の恐れがある箇所”となっている。レスキュー作業は、まずこうした部分を電気を通さない耐電シートでおおうことから始まった。

 レスキュー作業に当たる隊員は、耐電服や耐電仕様のグローブ、長靴を着用している。さらに、漏電がないかどうか確認するためのスティックを使って、感電しないようにチェックをしながら作業を進めていく。漏電による感電の危険性がないことを確認するこうした作業が必要なため、電気自動車やハイブリッド車は一般の車に比べてレスキューにかかる時間は若干長くなるという。

訓練開始前の様子。衝突実験に使われたこの車の乗員を救助する
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消防隊が到着すると、まず事故の状況や車種などを確認。手順をチェックをする
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耐電服を着た隊員が漏電がないかどうかなどをチェック。トランクルームを開けて高電圧回路を遮断するサービスプラグを抜くなど防止策を行ってから、車内の乗員の救助にとりかかる
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ドアが開かないという設定だったので、カッターを使ってドアを切断して取り外し、乗員を救助した
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事故車の漏電などをチェックする隊員が着用している耐電服。7000Vに耐えられるという
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グローブ、長靴も同様の耐電仕様のもの。破片などによる傷を防ぐためにさらに皮のグローブをはめる
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漏電がないかどうか確認するスティック。伸縮し、長さによって測定できる電圧を調整する。漏電の危険性がないことを確認してから、本格的にレスキュー作業に取り掛かる
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 現在のところハイブリッド車や電気自動車の数そのものがまだ少なく、当然ながら事故自体も少ないため、こうしたレスキューのノウハウの蓄積はまだまだこれからだという。NASVAによるとまだ台数が少ないこともあり、実際に電気自動車やハイブリッド車の事故で感電により重大な被害が起きたことはほとんどないとのことだが、今後普及が進めば増加する可能性もある。電気自動車・ハイブリッド車の購入を考えている人は、こうした自動車アセスメントの結果に目を通したり、マニュアルに目を通しておくなどして、高電圧バッテリーと搭載した車で事故にあった時の注意をあらかじめ知っておくとよいのではないだろうか。

(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)