人々は“横だけのつながり”に飽き始めている?

 それにしても、いまなぜ“本のイベント”なのだろう。日本印刷新聞(2月3日付)によれば、出版物の推定販売金額は9年連続で減少し、2005年に約2兆2000億円だったものが2013年には1兆7000億円を割るまでになっているという(出版科学研究所調べ)。

 電子書籍市場は729億円(13年3月期、インターネットメディア総合研究所調べ)とされ、これは前年度比15.9%増となっている。今後も成長が見込める分野だが、現状では出版市場全体に占めるボリュームはそれほど大きいといえない。

 つまり、本という「モノ」は過去に比べて売れていないのだが、そこにイベント(人が集う)という「コト」を足すことで新しい本の楽しみ方を探そうとする動きが始まっているということだ。

 売り上げはそれほど大きくはないかもしれないが、活力を欠く業界にとって(他業界にとっても)、こういった動きはひとつのヒントになりうるだろう。

 読書会が盛んになる理由は、ほかにもいくつか挙げられそうだ。

(1)会社や所属組織の枠を超えた仲間ができる(参加者側の理由)

 好き嫌いはあるとはいえ、本はほとんどの人にとって接触経験のあるメディア。読む機会は減ったが、他人と一緒なら読めるし、リアルな交流も楽しめる。

(2)企画の自由度が高く、大規模なセットも不要(運営側の理由)

 本がカバーするフィールドは幅広い。さまざまなテーマのイベントとして展開することができるし、各企画の参加者層、反響の規模も予測しやすい。大規模なものでない限り、セッティングもそれほど大変ではない。

(3)確固たる知見や教養を求める人が増えている(時代の理由)

 昨今では巷に情報が溢れているうえにクオリティも玉石混交のため、日々追い続けると疲れてしまう。そういった情報環境にフラストレーションを感じ、しっかりした知見や教養を求める人が増え始めている。

 この中で筆者は(3)に特に着目している。ソーシャルメディアの普及によって“横のつながり”は築きやすくなったが、多くの識者が指摘するようにそれは狭く閉じやすい。接触する情報が限定される傾向があり、今後は“縦軸とのつながり”、例えば歴史などの教養を望む動きも広がるだろうと予測される。そのためのツール、トリガーとして本は最適といえるだろう。

 ソーシャルメディアの発達と普及で「この指とまれ」の人集めのハードルが下がってコミュニティが作りやすくなっているのは事実だが、ただつながるだけの関係に人々は飽き始めているのかもしれない。