米のメジャー映画会社(ハリウッド・メジャー)の一つである20世紀フォックスの傘下にあるアート系映画専門レーベル「FOXサーチライト・ピクチャーズ」と、日本の独立系映画興行会社の一つである武蔵野興業が運営する映画館「新宿シネマカリテ」(2スクリーン)が協力し、13年12月から「FOXサーチライトプロジェクト」と名付けた画期的な取り組みをスタートさせた。新宿シネマカリテをFOXサーチライト・ピクチャーズの常設館と位置づけ、同レーベル配給作品を年間を通して公開していくのだ。

FOXサーチライト
[画像のクリックで拡大表示]

 「アート系映画」とは、いわゆるハリウッド作品のような商業的なビッグタイトルではなく、比較的低予算で監督の意向を重視して作られ、単館上映などを目的とした映画を指す。

 邦画の場合、東映なら東映、松竹なら松竹の作品を常に上映する専門館はまだ存在する。しかし、洋画の場合、アート系映画専門のいわゆるミニシアターはあっても、ハリウッド・メジャーの傘下にあるアート系映画専門レーベルの作品を、年間を通して上映する常設館というものはこれまでなかった。

 なぜなら、ヒットしそうなアート系映画を何作も続けて送り出せるアート系映画専門レーベルが見当たらなかったからだ。映画館側にとって同一レーベルの常設館になることは、上映作品を確実に確保できるメリットがある半面、これは到底ヒットしそうにないと思った作品でも上映しなければならないというデメリットを負う。作品がハズレたときのリスクが大きく、なかなか常設館に踏み切れなかったのだ。

 今回、FOXサーチライトプロジェクトが動き出した背景には、日本の映画興行の実状がこの10年で急激に変化したという事情がある。

 2003年には、日本国内の映画館はスクリーン数にして2635スクリーンあり、そのスクリーン数に占めるシネマコンプレックス(シネコン:複合型映画館)の比率は53%、映画興行収入に占める洋画の割合は73%だった。

 それが2012年には、3290スクリーンまで映画館のスクリーン数が増え、そのスクリーン数に占めるシネコンの比率が90%にまで上昇。しかも興行収入に占める洋画の割合は34%にまで低下したのだ。

 この結果、何が起きたか──。

 日本のテレビ局が製作または配給に参加した邦画の大作が、大量のテレビスポットCMを使った大規模宣伝に支えられてシネコンで興行収入を伸ばす一方、地方だけでなく都市部にも積極的に進出してきたシネコンに押され、東京や大阪などにあったいわゆるミニシアターは、次々に姿を消した。

 アート系映画はミニシアターという上映する場を失い、シネコンで上映されても大作中心の上映スケジュールに押されて、せいぜい1日に1回、それも深夜早朝の時間帯に上映されれば御の字という状況になってしまった。特に都市部の観客にとって、アート系映画を見る機会が激減したのだ。