2013年12月4日、東日本大震災の発生から早くも1000日が経った。12月2日には、今年の冬期の節電期間が始まっている。福島第一原子力発電所の事故の発生にともなう節電の意識は、2011年当時と比べて薄れつつあるが、多くの企業は電力不足に備えて地道な努力を重ねている。

 携帯電話事業で知られるソフトバンクは、早くから太陽エネルギーの構築に積極的だった企業の1つだ。2013年、ソフトバンクが長崎市に作ったソーラー発電所の用地は、かつて炭鉱の貯炭場だった。環境汚染の源となった石炭エネルギーの基地から50年を経て、クリーンな太陽エネルギーの基地へと変化。同じ地で巡り巡った不思議なエピソードだ。

長崎市香焼町にできた「ソフトバンク長崎香焼ソーラーパーク」。もともと石炭の貯炭場だった場所に作られている
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海に沈んだかつての炭鉱の島「横島」を望む長崎市香焼町に建設

 長崎といえば、軍艦島が有名だ。海底炭鉱の島として栄え、今では無人の「廃墟の島」として上陸ツアーがあるなど人気になっている。この軍艦島に似た歴史をたどった島がある。いや、“あった”という過去形で言うべきだろう。今は海に沈み、岩礁となっている。

 海に沈んだ炭鉱の島の名前は「横島」。長崎市香焼町の安保地区にある。写真の通り、今は単なる岩礁にすぎない。ソフトバンクが2013年7月にスタートさせた「長崎市香焼ソーラーパーク」は、この海に沈んだ炭鉱の島・横島と深い関係がある。

海に沈み、岩礁だけが顔を出す「横島」(ちび太郎氏のブログ記事「香焼炭鉱・横島炭鉱(長崎市香焼町)」より)
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長崎市香焼町は、長崎市からクルマで30分ほど。五島列島を望む沿岸の町だ(Googleマップより)
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長崎市香焼町の安保地区にソーラーパークができた。この先に「横島」であった岩礁がある(Googleマップより)
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 横島はもともと小さな無人島だったが、明治30年代に地下炭鉱が発見されたことから、炭鉱の島として栄えるようになった。この事情を詳しくまとめたブログ「ちび太郎のさるく日記」内の記事「香焼炭鉱・横島炭鉱(長崎市香焼町)」を紹介しよう。著者のちび太郎氏が、香焼町の郷土史を参考にして書いた記事だ。

海に沈んだ炭鉱の島「横島」の経緯をまとめた、ちび太郎氏のブログ記事
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 それによると、横島は地下炭鉱が発見されたことから炭鉱の島として栄え、最盛期には130戸、約700人が住み、明治33年には小学校も作られたそうだ。海岸を埋め立て、周囲を石垣で張り巡らして作った人工的な炭鉱の島だったのである。いわば「ミニ軍艦島」と言ってもよいだろう。

 しかし、採鉱がうまくいかずに明治35年に閉山。人々は去り、島を守っていた石垣は取り外された。昭和40年ごろから海に侵食されはじめ、町や炭鉱があった島は、そのまま海に沈んでしまったそうだ。いまでは、2つの岩礁が残っているだけ。軍艦島のように再び脚光を浴びることもなく、横島は海に沈んでしまったのである。