『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』という小説が話題になっているのをご存じだろうか。映画版キャストをめぐる騒動も相まって人気が高まり、類似の小説も多数登場。それらは主婦層にファンが多かったため、海外では「マミー・ポルノ」という総称で呼ばれている。この分野が生まれた独特の背景と、日本での評判、そして今後の展開について、「マミー・ポルノ」小説の翻訳本を多く出版している早川書房と集英社クリエイティブに話を聞いた。

映画化騒動を巻き起こした官能小説とは?

 昨年から、ある1冊の本の映画化をめぐり、騒動が巻き起こっている。その本の名は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。英米で「主婦が書いた官能小説」として話題になり、たった5カ月で、全世界で6300万部を売り上げた作品だ。日本でも情報番組などでずいぶん取り上げられたので、タイトルを聞いたことがある人は多いかもしれない。

たった5カ月の間に、3部作あわせて全世界で約6300万部を売り上げた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。これはハリー・ポッターシリーズを超える史上最速の売り上げ記録。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(上下巻)著:E・L・ジェイムズ 訳:池田真紀子 各1400円+税(早川書房)
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 ベストセラーになって以来、主人公のふたりを誰が演じるかが注目の的だった。ファンの間でも頻繁に投票や署名活動が行われ、キャスト決定の噂も飛び交い、2013年9月にようやくチャーリー・ハナムとダコタ・ジョンソンに決定したのだが、このキャスティングにするアンケートで約60%ものファンが猛反発。約1カ月後にはチャーリー・ハナムが降板し、直後にほぼ無名の俳優ジェイミー・ドーソンが抜擢された。このまま騒ぎが起きなければ、2015年2月に全米公開される予定だ。

 これほど熱心なファンに愛されているとは、本当に幸せなことだ。しかし、伝え聞くストーリーは「うぶな女子大生×ハンサムな若き大富豪が、倒錯した性の世界に身を投じる」という他愛もないもの。どんなに大胆な性描写が書かれているにせよ、映画版キャストをめぐって騒動が繰り広げられるほどの物語なのだろうか? そもそも、この小説をキッカケに、海外で「女性向け官能小説」が次々とヒットしたとも聞く。そんなに斬新なのだろうか?

 読まずに勘繰っていても仕方ないので、まず『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』と、アメリカでドラマ化が決定した話題の『ベアード・トゥ・ユー』の2作品を読んでみることにした。