真鯛のエスカベーチェ。鯛1尾を丸ごと揚げ、赤玉ネギを赤ワインビネガーとアヒ・パンクという辛くない唐辛子でマリネしたソースをからめたもの。ボリュームたっぷりのメインディッシュ。3500円
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 各国料理のブームも出尽くした感があったが、ここへきて、にわかにペルー料理が注目を集めている。それが「ペルービアン(モダンなペルー料理)」だ。ペルー料理は、古代アンデス料理、統治時代のスペイン料理、移住した日系人の日本料理、華僑の中国料理など、各国の食文化が融合してできたものだが、それを改めて見直し、洗練されたスタイルで供されるもの。

 このジャンルを確立したのが、ペルーを代表するシェフ、ガストン・アクリオ氏。彼のレストラン「アストリッド・イ・ガストン」は、イギリスのグルメ誌が発表する「世界のベストレストラン50」で、数年来、上位にランクイン。瞬く間にブラジル、サンフランシスコ、ニューヨークと支店を増やしていった。これにモダンスペイン料理の旗手として名を馳せた「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏も心酔し、今年、ペルー×日本レストラン「PAKTA」をバルセロナにオープンさせるなど、各国でペルービアン(モダンなペルー料理)がブレイクしているのだ。そして、世界中の料理が食べられる街、東京にも、本格的なペルービアンが味わえる店が出てきている。

予約の取りにくい店「べポカ」に行ってみる

左上/セビチェ・トラディショナル。白身魚と赤玉ネギをライム、唐辛子、コリアンダーでマリネした、正統派のセビチェ。爽やかな酸味と辛みが美味。1800円 右上/4種のお楽しみカウサ。ライムと唐辛子で風味をつけたマッシュポテトに魚介やチキンのトッピングが楽しい盛り合わせ.1800円 左下/牛肉、赤玉ねぎ、トマト、フライドポテトの炒め物、ロモサルタード。どこか懐かしい、くせになるおいしさ。1800円 右下/たこの鉄板焼き。プランチャと呼ばれる鉄板で焼く、前菜の一皿。1600円
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 今年3月、東京・神宮前にオープンしたペルービアンレストラン「ベポカ」は、一躍、予約の取りにくい人気店になっている。スペイン統治時代の建築をイメージした黄色の壁が印象的な、洒落た店だ。オーナーの一人は、ペルーの首都リマで生まれ育った、日系3世の仲村渠(なかんだかり)ブルーノ氏。IT企業のビジネスマンから180度の転身だ。料理上手の母親の影響もあって、いつかペルー料理のレストランを開きたいという夢を持っていたが、20年ぶりに帰国した祖国のレストランシーンの進化が、開業の決意を促した。

 メニューを開くと、前菜の項目には、ペルー料理には欠かせない、セビチェ、ティラディート、カウサのさまざまなメニューが並ぶ。セビチェとは、ペルーの代表的な料理で生の魚をライム、唐辛子、コリアンダーなどでマリネしたもの。魚介が豊富なペルー海域の漁師料理が起源だ。ティラディートは、生魚を薄切りにして並べ、ソースをかけた前菜だが、薄切りにして並べるところが日本の刺身に近く、日系料理の影響を受けているとか。カウサは、ジャガイモをマッシュしたものに魚や肉などの具を巻いたり重ねて食べる料理。ジャガイモを米に置き替えると、日本の握り寿司や巻き寿司を彷彿とさせる。ほかに、屋台料理から定番化したハツの串焼きなど、鉄板で焼くプランチャ料理も人気がある。主菜はボリュームのある炒めものや煮込み料理が多い。牛肉、玉ねぎ、じゃがいもの炒めものロモサルタードは、中国系移民の置き土産。肉の煮込み料理は、スペイン人の子孫が残したクリオージョ料理の典型だ。このようにベポカでは、昔ながらの味を大切にしながら、器や盛り付けなどのプレゼンテーションに配慮した美味なるペルービアン料理を供し、グルメの心を捉えている。