この記事は、「日経デザイン」2013年7月号からの転載です。記事の内容は雑誌掲載時のものです。

 今や生活に欠かせないスマートフォン。写真を撮る道具としてもすっかり定着した。カメラを持ち歩かない人でも、スマホは毎日持ち歩く。そして常にネットにつながっている。SNSやブログにはスマホで撮影された膨大な写真が毎日アップロードされ、閲覧される。撮影手段の主流がスマホに移り行く時代にあって、コンパクトカメラはどうあるべきか。そんな問いに対する答えの1つがキヤノンの「PowerShot N」だ。

 片手に載るほどの小さなカメラだが、正面から見ると左右対称で、従来のカメラのように右手で目の前に構えてシャッターを押そうとしても、右手でグリップする余地が少ない。それどころか、通常なら右人差し指がかかる位置にあるはずのシャッターボタンがない。こうしたデザインに込められた意図は何か。

操作をリングに集約
チルトするモニターとリングでシャッターを切る操作系が、今までにない写真の撮り方を可能にする。エッジは丸みを帯び、手になじむ
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「上手な写真」より「センスがいい写真」

 開発に当たっては、肩書きや役職のない若い社員によるコンセプトチームが結成された。新しく開発するカメラのコンセプトは“ネットワーク”。といってもカメラに通信機能を持たせてネットに接続するといった単純なものではない。

 ネット上のサービスには、写真を共有し合ったり、気に入った写真に投票できたりとさまざまなサービスがある。「ネットワーク社会、SNSの中で、どんな写真が撮られ、どんな写真が高く評価されているのか、それを調べることからスタートした」とICP第三事業部の石井亮儀氏は言う。その結果、ネット上で多くの「いいね!」を集めたりコメントやフィードバックが多かったりする写真は、「必ずしも、コンテストで賞を取るような写真ではない」(石井氏)ということが分かった。

左からICP第三開発センターの佐藤麻美氏、総合デザインセンターの折橋未耶美氏、ICP第三事業部の石井亮儀氏
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 高く評価されるのは斬新な構図であったり、意外なアングルであったり、あるいはフィルターの使い方がうまかったりといった、個性が際立つ写真。「上手な写真」ではなく「センスがいい写真」だった。そうした写真の撮影者に取材し、撮影方法をリサーチした。

 必ずしもスマホで撮っている人ばかりではなく、一眼カメラを使いこなしている人も多い。共通するのは、斬新な構図やアングルの写真を撮るために、他人とは違う写真の撮り方を工夫している点だ。構える位置や持ち方を変えたり、時にはアクロバチックな姿勢で撮影することも辞さない。

本体は白の1色のみだが、着脱式のケースを4種類用意。スマホのケースからの発想だ。左上から「アクアブルーセット」「サクラパールセット」「ステッチブラックセット」。右下は「マルチボーダーセット」。キヤノンオンラインショップ限定販売で、価格はいずれも2万9980円(税込み、以下同)。ケースとベルトのセットを、後から買い足すこともできる。3150円
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